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幻獣戦争 2章 2-3 英雄は灰の中より立ち上がる⑨

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幻獣戦争 英雄は灰の中より立ち上がる⑨

「どうだ?」
 堰口司令は効果観測をおこなっている電測員に目を向け問う。
 直ぐに中央モニターの映像が更新され表示。モニター上に映る戦域図には、砲撃先の幻獣集団の一部にぽっかりと穴が出来ていた。
「那久岬沿岸部の幻獣集団一時的に消滅。効果確認!」
 効果観測をおこなっていた電測員が声をあげると、CIC全体に驚嘆の声が上がる。

「敵前衛幻獣集団、西ノ島防御陣地近郊に到達。比良坂陸将及び第一戦略機大隊迎撃を開始」
「むう。指揮官型の識別はどうだ?」
 それも束の間、CIC通信士官の報告に堰口司令は唸りながら、別の電測員の一人に問う。

「ダメです。敵の数が多すぎてこちらからでは観測不能!」
「――司令。航空爆撃を要請しましょう」
 ダメか……電測員の報告に、俺は中央モニターに目を向けたまま堰口司令に提案する。このままでは、比良坂達がジリ貧に陥るのは目に見ている。あいつは嫌がるだろうが、やむを得ん。

「……蜘蛛型幻獣の攻撃に晒されますが、よろしいか?」
「前線がじり貧にならないうちに手を打つべきかと」
 振り向き問う堰口司令に俺は堰口司令を見返し頷く。躊躇っている時間はない。
「やむを得ませんか……芦屋基地に支援爆撃を要請。爆撃位置は隠岐の島、那久岬沿岸部一帯」
 堰口司令はCIC通信士官の一人にそう指示する。

「了解。こちら、西ノ島隠岐の島攻略支援艦隊群旗艦伊勢、支援爆撃を要請する。場所は隠岐の島那久岬沿岸部一帯。繰り返す。爆撃座標は隠岐の島那久岬沿岸部一帯」
「――各補給艦に連絡。補給を怠るなと伝えろ。それから、九州要塞司令部に補給物資の支援準備を要請」
 CIC通信士官の復唱を片耳で聞きながら、堰口司令は別のCIC通信士官に指示する。指示を受けたCIC通信士官は直ちに連絡を取り始める。その様子に俺は長丁場を予感する。

「精霊鋼弾頭、残弾ゼロ。通常弾に切り替えます」
 砲雷長が堰口司令に報告する。砲雷長の言葉に、俺達は中央モニターに映る戦域図を凝視する。那久岬沿岸部一帯の敵幻獣集団は、一時的に減退しているようだが、隠岐の島全体の幻獣が那久岬沿岸部に殺到し始めていた。ここまでは予定通りか――

「――そろそろ頃合いか。隠岐の島正面に展開中の主力艦隊に連絡。作戦を第二段階へ移行されたし」
 堰口司令は別のCIC通信士官に指示する。
「了解」
「芦屋航空基地より連絡。爆撃部隊は60分後に到着予定」
 指示を受けたCIC通信士官が応じると別のCIC通信士官が報告してきた。

「60分か――砲雷長、各艦に蜘蛛型幻獣の撃破を優先しろと伝えろ」
「了解。敵識別急げ!」
 堰口司令の指示に砲雷長は即座に応じて檄を飛ばす。なるほど長距離砲を持つ奴らが少なくなれば、それだけ航空部隊の損害を減らせるか。もっとも識別できればの話だが……

「さすがですね。航空部隊への負担が減ると良いのですが……」
「ええ。ですが、その分大隊に敵火力が集中してしまう」
「大丈夫でしょう。あそこには比良坂が居ます」
「だと、良いのですが……」
 俺の言葉に堰口司令は中央モニターに目を向け小さく呟く。

 敵幻獣集団は今なお西ノ島防御陣地一点に集中している。防御陣地のマーカーが消えない限り無事であることは確かではある。しかし、戦力比はいまだに10対1。殲滅した幻獣の傍から新たな幻獣が出現する。現地はあまり良い状況ではないだろう。

「……やつらの指揮官タイプは何体いるのだろうか?」
 俺は同じように中央モニターに目を向け聞こえない声で呟いた。

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く

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伊佐田和仁
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