第4期の苦悩-なかなかIPOが実現しない裏話
前回に引き続き「なかなかIPOが実現しない裏話」シリーズをお届けします。
IPOを決意した2期目、IPO準備を始めた3期目を終え、いよいよ本気でIPOスケジュールを進めるべく挑んだ4期目。本質的なところを理解しながらぶち当たった壁とは…
※前回までのシリーズ(IPOを目指す理由・第3期のお話)は以下からお読みください。
2回目の直前々期。第4期の始まり
初めてのIPO準備も準備に明け暮れ、結局進まなかった第3期。
気持ち新たに第4期も、前期と同じ主幹事証券+監査法人でスタートしました。
とにかく稟議や申請類は漏れなくしっかりと出そうね!
予算をモニタリングして実績と乖離したら分析して調整しようね!
もうスケジュール変更は許されない、何が何でもIPO進めるぞ!
この意気込みでスタートしました。
予算がキツイ...
第4期の予算は第3期の10月頃に組んだのですが、その際に主幹事証券に相談したら「まぁ上場時には5億ぐらいの利益を残したいので、直前々期の営業利益は1億ぐらいは残そうね」と言われました。
そこで設定した第4期、直前々期の予算は
・売上高 10.89億円
・粗利益 3.6億円
・営業利益 9,545万円
※今思えば数字有りきのIPOってのが大間違いです
この頃の当社の規模で、売上10億、営業利益で1億残すのは大変。
でもIPOの要件もあるし営業利益最低1億は必要なのかという感じで予算を組みました。
まさにトップダウンで予算落とし込み攻撃です。
それで組んだ予算をもって、第4期スタート。
弊社は11月決算なので、12月~翌11月が会計期間となりますが、第4期1回目の取締役会。
いきいなりの予算修正
主幹事証券から「もし売上で10%のブレが出た場合は予算修正しないとダメよ」と言われていましたので、そこまで大きな変更はないのですが数字が見えている部分は直そうという安易な気持ちで予算修正決議。
当時の取締役会はそこまで議論が活発じゃなかったので難なく可決クリアしましたが、もっと早く数字が読めなかったのか?と思うほど情けない事でした。
もちろん予算修正の際は主幹事証券に確認していたのですが「予算がブレるのが解っているのであれば修正すべき」と言われていたので、素直に予算ブレが見えた時点で予算修正をするように心がけてモニタリングしていました。
そして第4期2回目の取締役会。
またまた予算修正の議題が...
さすがに毎月はアカンのと軽微な修正なのでって事で、見事に否決。
今回は予算修正に至らずでしたが、予算精度...ってなりますよね...
そして、なんか予実が全然合わず、そしてキツイ予算だったので主幹事証券に相談したところ「達成できない予算は意味ないので、現実的な数字に変更してください」と言われました。
IPOあるから営業利益1億って設定したけど、そもそも当社の規模感じゃ難しい...
主幹事証券も現実的な数字にしてくれって言ってるし、修正しようっと♪
で、そして第4期3回目の取締役会。
3度目の予算修正の議題!もう毎月かよ!!
かなり売上等ブレてたので大幅に下方修正。
具体的な数字は出せませんが、大きく下振れでビビった我々は硬すぎるほど硬すぎる数字まで落として、もう営業利益なんか半分とか大丈夫?レベル。
でもまぁ、こちらは可決され予算が修正されました。
この後も毎月のように細かい予算修正が取締役会に出され4回目の取締役会でも軽微な修正、可決。
毎月毎月予算を修正。もうルーティンです。
※この時点で誰か止めてくれれば…
そして半期が終わろうとする取締役会。
ここでも大きな予算修正が行われました。
ちょうど新規事業が立ち上がったことで、新規事業の予算を入れる必要があったので致し方がないのですが、それにしても5ヶ月連続予算修正という、どうしようもない連鎖に陥ってました。
※そもそも突然新規事業が立ち上がる時点でどやさ?
ちなみに毎回の取締役会の資料や議事録は主幹事証券に提出しておりましたが、特に無いんも言われてなかったのです。
そして第4期も半年が過ぎた頃...
主幹事からまさかの...
第4期に入り、当初立てた営業利益目標がキツいって事で大きく下方修正。
そして毎月毎月ルーティンの如くチョコチョコ修正される予算。
ブレにブレてた予算だったのですが、それを見て突然主幹事証券の営業担当が来社。開口一番。今でも覚えています。
こんな予算精度じゃ来期直前期なんて無理ですよ。
え?突然なに!?まぁ確かに予算ブレてるけど...
期首の予算から下方修正して、また上方修正ですか?
キツイ予算だなって落としたんですが、予想以上に伸びたんですもの...
ていうか修正の都度相談してたじゃないですか。
そもそも期首の予算からブレるとか精度悪すぎですね
いやいや、営業利益1億残せって言ったのアナタでしょ!!!
※人のせいにしちゃダメですが
結局、主幹事証券に言われるがまま修正した事を「精度が悪い」と言われ、売上が10%ブレそうなら予算修正しなさいって言われてたので修正したのに「精度が悪い」ってどやさ?
確かに、主幹事証券に言われたからって修正するのはおかしいけど、修正する話と修正予算を事前に確認したらこれでいいんじゃないですか?って普通に言ったの誰?
もう主幹事と喧嘩です。
で、何を考えているのか、その時点で主幹事証券は言いました。
IPOスケジュール組み直ししましょう
2018年夏。突然、主幹事証券に言われました。
まだ第4期も半分過ぎたあたり。まだ直前々期の着地も見えてない。
そもそも、予算がブレてダメなら、下半期で頑張ればいいじゃないですか。
最後ギリギリまで見て、それで準備不足なら「スケジュールを考え直しましょう」と言われても納得できます。予算の組み方が悪いのであればコンサルタントとしてもっと深入りしてKPI設定等をチェックして助言するとか、色々することはあると思うんですが…
そもそも、今思えば確かに弊社の考えも甘く本質理解していなかったのもありますが、主幹事からの指導が悪かったと思います。一言も着地予想という言葉がなく、単月予算がブレたら修正すべき、ブレるの解ってるなら修正すべき、とひたすら言われてました。単月単位で予算は絶対に一致させろ、と。
それで半期でいきなりスケジュール延ばせ。
突然スケジュール延期を言われて納得できなかったので、上場企業の社長や準備中の人など色々な人に相談をしてみました。
そして皆が言う事は同じでした。
優先度、下げられたんじゃないの?
証券会社の公開引受部は、IPOをする会社のコンサルティングが主たる業務。東京は会社も多いし規模が違うのでそれなりに人を確保しているようですが、大阪はどこの証券会社も公開引受部の人は少ないらしい。
なのでIPOの可能性が低い会社にはリソースが割けないというのが本心らしく。
色々な人が口を揃えて言うには
・上場できそうな会社に注力したい
・証券会社は上場時の手数料商売だし
・営業利益が思ったより低いので上場時に株価つけにくいかも
・恐らく準備もまだ弱いから優先度を下げられた
担当に直接聞いたわけじゃないですがこんな感じで、2年後に上場予定の会社も結構あるし、W-ENDLESSはその次の年にストックしておこうみたいな考えで延期を言われたんじゃないか?
また上場時の数字が小さいので証券会社も儲からないし、もう少し大きくなってからIPOするほうがお得って考えたんじゃないか?
みんなこう言いました。
確かに予算精度が低いのは問題です。でも、まだ軌道修正出来ますしむしろ主幹事として積極的に予算精度を上げるためにアドバイスしてくださいよ!って思いました。
予算精度が低いのは私のせいなので、スケジュール延ばせ言われてもキレず、主幹事証券の担当者になんとか期末近くまで見て、それでダメならスケジュール検討する方向で進めましょうよ、とお願いしたわけです。
しかし担当者は何度話をしても聞かない。そして
もう延期しないとダメですよ
担当営業のほぼ会ったことのない上長がいきなり出てきて一点張り。
「延期しないとダメ」って何??何が「ダメ」なの!?
とまぁ頑なに延期しろと言われて思いました。
やっぱ優先度下げられたんだな、と。
そもそも期首からスケジュール通りにIPOできるって思ってなかったんだろうなと思います。
証券会社がダメと言えばどんだけ頑張っても直前々期を終える事はできません。どうしようもないので、延期しかないか...と諦めました。
延期するなら、どうせなら
「延ばせ」「もう少し見てからにしてくれ」の言い合いから、最終的に主幹事営業担当と大喧嘩。
漫才の〆のように「もうええわ」となって、主幹事証券との契約を終了。
どうせ延期するなら、もう証券会社変えようと思いました。
証券会社を変える=そのまま引き継げないので再チャレンジ=第4期の直前々期は無しとして第5期に改めてスケジュール組み直しして頑張る、とう事になりました。
どっちにしてもスケジュール考え直すなら今の主幹事で続ける意味はない。
そこから何社も証券会社の人と会いました。
以前書きましたが証券会社との相性は重要です。
N村證券、SMBC日K証券、大W証券とか有名どころも良さそうですが、結論担当者との相性が重要。どれだけ本気で弊社の力になってくれるか。
そこを見極めるため色々な証券の人に会いましたが、来るのは営業担当。
話をしても「御社なら来期を直前々期とすればIPO出来ますよ」という軽い言葉。
そうじゃなくて中を見て言ってくれと思っていましたので、営業担当が来る時に1つだけお願いしたのは「公開引受の担当も連れてきてくれ」と言い一緒に来てもらいました。
そして主幹事変更
変更した新主幹事証券は、IPO引受する証券会社としてはそこまで大きくないですが一応IPO実績のある会社です。またネットに強いところなので個人投資家を多く持っておりベンチャーとの相性は良さそう。
ただ、実績や会社規模で選んだわけではありません。
公開引受部の人の多くは、事業内容や準備状況をサラっと聞いて「まぁ大丈夫そうですね。一度見てみましょう。」という感じで終わりました。
しかし、新主幹事証券の公開引受の方は少し違いました。
当時初めて会った時に突然「ある程度準備できてそうですが、どういう規程揃ってるんですか?」と言われました。
規程?いきなり?と思いながらも規程を出すと「これ、いらないですね。これもいらないし。なんでこんなの作ったんですか?」と取捨選択が始まり、「こんなのじゃ運用難しいっしょ」とズバリ言われました。
直感でこの人おもろいなと思いました。
本当に本質を言う人で、前の証券担当者のように「必要なので」という事ではなく「こんなのもあるけど、必要だと思えば揃えれば?」というスタンス。なので、準備するにも「これは必要だから作らなきゃ」という感じで私のほうが理解し判断した上で進める、という考えが生まれました。
今思えば、まさにこの考えが必要でした。
※今までのは何だたんだ…
IPO準備なんて初めての事だったので「IPOするから必要」という気持ちで言われるがまま準備していたのが大間違い。だって「なぜ必要なのか?」を理解しないまま進めたので運用できるはずがない。不要なものまで作ってしまう。
でも、会社として必要だからという考えに変えると無駄なものは作らないし、みんなに落とし込む時にも説明しやすく納得されやすい。
まさにこれでした。
仕切り直して第5期へ
新しい証券会社と契約し、第5期を3回目の直前々期にするため、なんとしてもスケジュール通りに進めるため、全て見直しをしました。
規程類、マニュアル類、業務フローを一から整理し、必要なものや不要なもの、実際の業務に合っていないもの、一つずつ整理しました。
そして問題だった予算精度。
第5期予算を組む時は実際にW-ENDLESSとして出せる規模での数字と、ある程度その根拠もしっかり考え組みました。
ちなみに第4期の予実結果ですが、予算比で104.45%という高精度で着地しました。ほんま、前主幹事証券、見てみろコノヤロー!でした。期中はブレてましたが、着地を見ると実はそんな修正いらなかったんですね、結果論ですが。
結論、予算がブレる、予算を変えるのは仕方がなかったのです。
当社がIT企業だという事(=半年後は業界や市場、トレンドがガラっと変わる事)や、新規事業を始めた事で期首に立てた予算通りに行くはずがないんです。しっかり着地予想を見て説明できるようにしておけばよかったのです。
それでも予算精度は重要。
第5期は大きくブレないように、ブレても根拠もって説明できるように準備しました。
そして迎えた第5期。
直前々期に3回目のチャレンジ。
3度目の正直なのか、2度あることは3度ある、なのか。
前者になるように本気で行くぞ!!!という意気込みでスタートしました。
予算はたぶん大丈夫。規程類や業務フローなど内部統制面もたぶんバッチリ。あとは都度調整して運用実績を積み、直前期を迎えれればいける。
新主幹事証券+監査法人で始まった第5期ですが「まだ来るか」と思える大きな問題が...
気合十分でスタートした第5期も波乱の1年に。
長くなるので、続きはまた書きます。
※小出しになってすみません…