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プラクティショナーとして何を描くか

去年だったか、現役ナチュロパシー学生から、「かなえさん、大変です!卒業後の就業ビザに35歳までの年齢制限がかかるようになってしまいました!卒業後すぐに日本に帰らなきゃ!」と連絡が来ました。その後、数人から同じ話を聞きました。

オーストラリアって、移民の受け入れに積極的な国で、高度な技術や専門知識を持つ人を積極的に受け入れて労働市場や経済全体の成長を促進している国です。留学ビジネスも国の大きな収入源の一つなので、毎年細々とビザの条件を変えて、移民や留学生の受け入れの間口を自国の状況に合わせてフレキシブルに広げたり狭めたり、上手にコントロールしています。

実際に、私が勉強を始めた2012年ぐらいに、それまでナチュロパシーを学べば就労ビザが取れていたのが解除になったり、2015年頃にはナチュロパシーの学位を取得したら2年限定の就労ビザの取得が可能になったり、と、細々と変更になっています。

去年ぐらいに、その2年の就労ビザに35歳までの年齢制限の条件がついたようです。

2年の就労ビザのあるなしは、やはり現役の学生には心理的にも経験的にも大きな違い。2年就労できると経験もつき、その間にスポンサーも探しやすくなるし、その先のビザにつながる可能性が高くなる。たとえ日本に帰ってくるとしても、ある程度経験値を高めることもできる。

海外の多くの国で普通にハーブや栄養素を処方できる資格を死ぬ思いでやっと取ったのに、それが使えない日本に帰ってこなくてはいけないのは痛い。

多分、今がっくりと肩を落としている人がいると思います。日本に帰ってくることが不利な状況だと思っている人も多いはず。

そんな人たちに励ましの一言。

与えられた場で最善を尽くしたら、その場でしか学べないことを必ず習得できます。

これは別にこのケースだけで特別なことではなく、年齢問わず、業界問わず、社会経験においてどこででも変わらない真理だと思いますが、人はそうやって成長していくもの。

しかも、チャレンジはアドバンテージに変えることが可能。

ナチュロパスで言えば、資格をとった国で働けば当然客も多く経験値が稼げる。他のナチュロパスとの交流も多く、クリニックをシェアできたら経験もシェアしてもらえる。生活環境もオーストラリアなどは都市と自然が近い環境で、自分自身をホリスティックでエコロジカルな環境に身を置いて良い状態にキープするのがそんなに大変ではない。何よりも、海外在住というだけでブランディングになる。

一方、日本。ホールフードやオーガニックな食材へのアクセスのしやすさはまだまだ海外には及ばない。何がどのような形態で市場にあるのか、何がアクセスしやすいのか、日本にいないとわからない。日本には明確な四季があり、伝統が長いだけあって野菜や魚介などの食材も種類が豊富で、日本特有のハーブもある。

また、諸外国とは異なる社会や文化風習の違い。
中小企業の多い日本社会の特殊なドロドロ感はやはり普通の人の生活に存在していて、多くの人が様々なストレスを抱えて黙々と(!)生きている。

私はもともとグローバルな大企業に勤めた経験が長く、帰国後の一時期、理不尽の塊のような中小企業で働き、わかっているつもりではあるけれどもやはりその差に愕然としました。

社長が毎日怒鳴りまくって社員が全員萎縮している会社もあれば、社長が社員を一人ずつ順番にいじめるような会社もあり、そこで働き続ける人たちは皆それぞれの理由があって我慢して働いている。「嫌なら辞めたらいい」をいうのは簡単。抜けられるのであればとっくに辞めているだろう。皆、さまざまな同調圧力や家庭の圧力、自分との戦いの中で生きている。

そして、若い世代は徐々に緩和しているにせよ、まだまだ女性一人に家事や育児の負担がかかりやすい、この文化。

食のアドバイス1つとっても、ナチュロパシーはその人を取り巻く全ての環境を加味するホールパーソンをトリートするので、当然、家庭環境、家族構成、仕事の環境、経済状況、地域の状況などを加味してアドバイスする必要がある。

夫一人と子供二人のご飯を毎日作りながら、日本社会で(ここポイント)仕事も家事もこなしているお母さんに「食べ物はホールフードで。キヌアをサラダに入れて、魚多めに、お野菜多めに。マヨネーズは使わないでエキストラバージンオリーブオイルとレモンでね」と簡単には言えないわけ。できる落とし所を一緒に見つけていく。

そんな中、出産でもしようものなら、もう完全にキャパオーバー。「いいよ、いいよ、できないところは冷凍食品や加工食品にも頼ろう。お金の余裕があるならば、ヘルシーな冷凍食品や加工食品はコレコレ。少しずつ余裕が出てきたらぶつ切りでいいので野菜を加えていこうね」とか。できることを一緒に考えていく。お母さんの自信につながる。

お金がないからピルで子宮内膜症をコントロールしていて、ハーブや栄養素サプリメントにそんなにお金をかけられない。自然療法で治したいというよりは西洋医学で限界に来ているので、自然療法で何かできることがあれば、という人もいる。そういう人にはピルを飲みながらできる方法を予算内でアドバイスしていく。症状を悪化させるほどに大きなストレスでありながらも収入につながっていない状況を見直し、将来的に改善する必要があることを一緒に考える。他人軸で生きてきたクライアントの意識が変わる。

何を食べても具合が悪くなり、病院や分子栄養学のクリニックを転々としても良くならない。サプリメントも合う合わないがあり、他の人が反応しないようなものに反応する。そんな時も、その人が摂れるもの、その状況を打開する一手になるものを探り出し、治癒のスイッチを押す。その治癒のスイッチを押すものが、薬でもハーブでも栄養素でもなく、しいたけスープや玄米スープかもしれない。クライアントが失っていたバイタルフォースを取り戻す、表情がどんどん変わっていく。

サリチル酸過敏症の人はハーブは摂れない。特にハーブが有効に働く症状の場合は本当にもどかしい。それでも他の方法を考えて結果に繋げる。結果、自信につながる。

薬を摂取している人も相互作用のあるハーブを摂れないことも多い。がんの治療中で栄養素もハーブも摂れず、食事だけの指導になることもある。クライアントの「自分の体(または家族の体)を大切にしたい」という気持ちを実現するための手助けになる。

自分に無理だと思うケースを他のプラクティショナーに紹介することもある。それでも、「苦しかった時に一緒に考えてくれてありがとうございました、何よりも心強かったです」と言ってもらえる。

これが実際に日々起こること。学校で「XXの時に、どのような処方をするか考えよ」で答えた内容がそのままできることなんて滅多にない。

調合したリキッドハーブ(濃厚なチンキ剤)が使えないならば、日本で入手できるものの中で考える。ハーブも栄養素も使えない場合もある。その場合は、ホメオパシーやフラワーエッセンスを使うかもしれない。治癒の過程を進めるために、どこかで物質に変えていく必要もある。でもその物質がハーブではなく、食品かもしれない。

特に慢性疾患、年齢が高い人の慢性疾患などは、1つのことで全部がクリアになることなんかは絶対ない。ツールだけに頼るとだめ。

厳しい環境の中で生き延びると、植物もその環境に対応して強く育つよね?それと同じ。与えられた環境でできる最大限のことを考え続けていたら、その分野で強くなる。

10年後に「ドクダミとヨモギでたいていのことには対処できます」って言い放つナチュロパスになっているかもしれない!

薬事法に触れるので日本国内で処方ができないとしたら、「処方」という形でなく、自然療法を広める方法をどうにか考えると思う。

あと、クライアントさんが求めることの中に、当然「よくなりたい」はあるのだけど、それと同じくらい重要なのに隠れているニーズで「理解してほしい」ということがあります。

「理解をしてもらえた」ということがカウンセリング的な治療効果の1つになることもある。これまで「痛みを感じるはずはない。それはあなたが痛みに過敏だからです」などと言われ続け、しまいには精神科送り。

クライアントの体で何が起こっているのかを理解しようとクライアントさんの体の中に意識が入っていき、心の症状で表れているものと繋げていく。それを伝えると「やっとわかってくれる人が現れた」と安心される。

傾聴、または「理解力を養う」のはどこにいてもできることで、近い環境に身を置いていた方がまぁ当然有利ではある。

そして、そして。上記のことは全てプラクティスを始めて数年ぐらいの話で。

10年近く経つと、ハーブや栄養素やエナジェティックスはどれもツールの1つで、ツールはなんであってもよく、ホリスティックメディシンの真髄はやはり「その人があるがままの姿で生きる、自己実現する手助け」になるんだろうなと思っています。そうなると、ツールの重要性がさらに低くなる。

マッサージセラピストだって、キネシオロジストだって、ホメオパスだって、オステオパスだって、エッセンスのセラピストだって、そこの真髄に辿り着こうと思えば辿り着けて、ちょっと食やハーブや病気の知識があれば、ナチュロパスとある程度同じことができると思う。

その域までくると、自分の治療法も確立されていて、もはや場所も環境も関係なくなってくるし、あとは自分が生きやすいところを選んで生きれば良い。

自分の描きたいホリスティック医療の世界はどこででも描けるので、与えられたものは全てありがたいチャレンジとして受け取り、その場で最善を尽くしてほしい。

チャレンジが多ければ多いほど、最終的には自分しか描けない絵が完成するのかなと思います。


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