見出し画像

#03 プロテイン、サプリメントを有効に活用する

~過去投稿はマガジンから~

現在の精神科における治療は、
寛解を目指してはいるが、完治を目指してはいない。
もっと言えば、「完治を目指すことすらしていない」と藤川院長は言う。

「しかし、質的な栄養失調をなくせば、多くの疾患は完治可能、薬の量も劇的に少なくすることができる」と指摘する。

「なぜなら、病気を治すのは医師でも薬でもなく、患者自身だからです。
ところが、その患者が質的栄養失調の状態では、治る病気も治すことはできません。

建物の土台がしっかりしていないと、いくら太い柱を立て、しっかりとした壁材を使っても、ぐらついてしまうのと同じです。
まず病気を治せるしっかりとした土台を作らなければなりません」

それが、藤川院長が進めている、タンパク質と鉄、ビタミンBとビタミンC、ビタミンEの十分な接種を基本とする栄養療法というわけだ。

「タンパク質は英語ではprotein と言いますが、これはギリシャ語の〝第1となるもの〟に由来しています。
筋肉や皮膚、臓器、髪の毛から爪先まで、人間の体はまさにタンパク質でできています。
体だけではなく、血液、代謝酵素、消化酵素、ホルモンなどもタンパク質を原料にしています。
基本的な生命維持に必要なタンパク質ですが、心の健康にも直接に影響しています。それはタンパク質が神経伝達物質の原料にもなっているからです」

神経伝達物質とは、脳内において神経細胞と神経細胞の間の情報伝達を担う物質だ。

心を落ち着かせる働きのあるセロトニン
喜びを感じさせるドーパミン
これらの神経伝達物質は、タンパク質が不足すると十分に作られなくなるので、心にも大きな影響を及ぼすというわけだ。

「人間の体を工場にたとえるなら、原材料となるタンパク質を十分に供給しなければ、工場はたちまち生産低下を招き、体はひ弱になり、心の豊かさも失われてしまいます」

体重50kgの成人の場合、一日にタンパク質50gを摂取する必要があると言われている。

タンパク質10gを摂取するためには、牛肉なら65g、豚肉なら83gが必要だ。

1日に50gのタンパク質を摂取するには、牛肉325g、豚肉では415g食べなければならない計算となる。
「そんなにたくさんは食べられない」という声が聞こえてきそうな量だ。

「そんなには食べられない。ならば、どうするかです。
私がすすめているのは、市販のプロテインを利用することです。

タンパク質の含有量90%のプロテインなら、およそ55gで1日に必要なタンパク質を摂取できます。

こうした食品を上手に利用して、不足分を補えば、病気を治す、あるいは病気になりにくい体を作ることができるというわけです」

体を作るのがタンパク質なら、その体を円滑に動かす役目を果たしているのは、ビタミンやミネラルだ
 
藤川院長は、質的栄養不足の現代人にまず摂って欲しいものとして、鉄、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEの4つを挙げている。

「これらの四つはアデノシン三リン酸という、生体内のエネルギーの貯蔵、供給、運搬する際に必要な重要物質を大量に生成する時に欠かせないものだからです。

なぜこれらが必要なのか、どれくらい摂取すればよいかは、私の近著『うつ消しごはん』の中で詳しく述べていますので、そちらをお読みいただければと思いますが、これらも1日の必要量を食べ物から摂取するためには、相当な量を食さなければなりません。
プロテインと同様、入手しやすいサプリメントで補うのが合理的な方法だと思います」

※本コンテンツはCOCORO 23号をもとに再構成しています

・・・・・・・・・・・・・・・

著者プロフィール

藤川 徳美(ふじかわ とくみ)

ふじかわ心療内科クリニック院長医学博士

1960年、広島県生まれ。1984年、広島大学医学部卒業。
広島大学医学部附属病院精神神経科、県立広島病院精神神経科、国立病院機構賀茂精神医療センター等に勤務。

うつ病の薬理・画像研究やMRIを用いた老年期うつ病研究を行い、
老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見する。
2008年、広島県廿日市市に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院。

気分障害、不安障害、睡眠障害、ストレス性疾患、認知症などの治療にあたっている。
著書に、『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)、
『分子栄養学による治療、症例集』(NextPublishingAuthors Press)がある。