#03 コーチングとティーチングそれぞれのメリット、デメリット
~過去投稿はマガジンから~
コーチングとティーチングの違いについて述べましたが、両者はそもそも別物なので、人材育成法として、コーチングのほうがティーチングより優れているというわけではありません。
どちらにもメリット、デメリットがあります。
仕事上の基本的な知識や経験を教えていくことは大事なことですし、基本的な知識がなければ、その後の発展もないし応用もききません。
ティーチングで与えられた「答え」は、その人の行動や思考の参考の一部になるという点で有効な人材育成法です。
しかし、基本的な知識や、上司や先輩から「自分の時はこうだった」と経験を伝えられても、多様化と流動化の激しい社会の中で、どれだけ応用がきくかは疑問です。
また、ティーチングの最大のデメリットは、「自分で考える」チャンスを奪ってしまうことです。
人生は「選択」の連続です。ティーチングばかり行っていると、対象の人物に自ら考え、自ら人生を切り拓いていく能力は育たず、行動する力が薄らいでしまいます。
では、コーチングのほうはどうでしょうか。
まずコーチングの能力を身に付けると、自分自身との対話力(自己対話力)が向上します。
自分で自分に質問し、自ら答えを導き出す「セルフコーチング能力」が発揮しやすくなります。
皆さんは、人生で一番対話をしている相手は誰だと思いますか。
両親? 妻や夫? それとも親しい友人でしょうか?
いや、人生でもっとも多く対話しているのは自分自身ではないでしょうか。
その自分自身との対話がプラス傾向にある時、物事は前に進み、能力も発揮しやすく、気持ちも明るい状態になっているでしょう。
逆に、自分との対話がマイナス傾向にある時は、物事が思うように進まず、ため息が多くなったり、気分も沈んでしまいます。
コーチング能力を身に付けると、自己に対する質問力が向上します。
質問力が向上すれば、「自己対話」の質が変わるのは当然です。
人生は、自分に投げかけた質問の答えで、行動や思考が変わっていくものです。
質問力を高めることは、行動や思考の幅を拡げることにつながり、創造力や発想力に磨きをかけます。
私はコーチングのプロとして、今のところコーチングの可能性を感じこそすれ、限界は感じていません。
今後コーチングの限界を感じることがあるとすれば、それは人間の可能性の限界を感じた時だと思います。
※本コンテンツはCOCORO 36号をもとに再構成しています
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著者プロフィール
小野仁美(おの ひとみ)
群馬県沼田市出身。株式会社リクルートに入社、就職情報誌の編集を担当。株式会社東京ストレスマネジメントに転職し、ストレスマネジメントセミナーやコミュニケーションセミナー等を担当。その後、新規事業部を立ち上げ事業部長として営業と運営に従事。1999年、株式会社コーチ・トゥエンティワン設立に伴い取締役就任。アメリカのコーチユニバーシティのマスターコーチに師事。米国ICF認定のプロフェッショナルコーチの資格を取得後、2000年に独立。株式会社ビューティアンドサポートを創業し代表取締役社長に就任。経営者や管理職、起業家、医療従事者、各種専門家など個人向けのコーチングを多数実施。
企業内研修、企業内コーチの育成やエグゼクティブコーチング、ビジネスコーチングをはじめ、現在も多数担当。著書に『自分は自分で変えられる』(PHP研究所)、共著に『周りの人をハッピーにする!はげまし言葉ハンドブック』『コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目』(以上、PHP研究所)などがある。株式会社ビューティアンドサポート取締役社長プロフェッショナルコーチ