#01 「コーチ」とは、大切な人をその人が望む場所へ送り届けること
コーチングスキルを身に付ければ仕事も人生もうまくいく!
究極のコミュニケーションキル<コーチング>についてご紹介します。
※2020年1月発刊COCORO第36号に掲載された内容をもとに5回に分けて掲載します。
「コーチ」という言葉を聞くと、スポーツの世界、特にプロ野球で選手に技術やトレーニングを指導したり、精神面でのアドバイスをする人のことを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
プロテニスプレーヤーの大坂なおみ選手の活躍によって、コーチの存在が注目され、いっそうその印象が強くなったようです。
ビジネスの世界には、「コーチング」という人材育成法があるのはご承知のとおりです。
1980年代からアメリカを中心に広まり、日本でも2000年ごろから経営者や管理職の研修に用いられるようになりました。
いうまでもなくコーチングという言葉は、コーチに由来していますが、そもそもコーチの役目とは何でしょうか。
コーチングについてお話しする前に、まず「コーチ」とはそもそも何なのか、その歴史的な経緯を述べておくことにします。
コーチという言葉が生まれたのは1500年代で、もともとの意味は「馬車」、
ハンガリー北部のコークス(Kocs)という村の名前に由来するといわれています。
この村では、自家用四輪馬車(coach)が最初に作られており、その四輪馬車で「大切な人を、その人が望む場所へ送り届けてあげる」、これがコーチという言葉の意味でした。
「馬車」から「大切な人を、その人が望む場所へ送り届けてあげる」という意味が派生したことにより、1840年代、英国のオックスフォード大学で、受験生の指導をする個人教師(チューター)のことを、コーチと呼ぶようになりました。
受験生を合格に導いてあげる、という意味合いでしょう。
コーチという言葉が私たちに馴染みの深いスポーツの世界で使われるようになったのは、1880年代に入ってからのことです。
最初は、ボート競技の指導者がコーチと呼ばれ、次第に他のスポーツにも広がりました。
アメリカでは、野球の監督だけはmanager と呼ばれますが、他のスポーツの監督は、coach やhead coachと呼ばれています。
マネジメントの分野でコーチという言葉が使われ始めたのは、さらに下った1950年代で、当時、ハーバード大学の助教授だったマイルス・メースが『経営者の成長と育成』( 1959年、日本語版は1961年) の中で、「マネジメントの中心は人間であり、人間中心のマネジメントの中で、コーチングは重要なスキルである」と位置づけたのが先駆けでした。
以降、マネジメントや企業研修に関する文献の中で、「コーチング」という言葉は散見されますが、ビジネス界でコーチングという言葉が一般的に使われるようになったのは、先に述べたとおり、1980年代に入ってからでした。
コーチングという人材育成法がビジネス界に定着すると、1987年にはコーチングをテーマにしたマネジメント・セミナーが開催され、ビジネスやスポーツの世界でアメリカを代表するコーチや研究者が一堂に会して、コーチングの技術について議論しました。
そして現代では、アメリカやヨーロッパ、日本の企業でも、コーチングが管理職研修の重要なテーマの一つになっている、というわけです。
最近では企業にとどまらず、医療・教育の中にも浸透し、医師や看護師、医療従事者、教師や保育士や親にも重要なコミュニケーションスキルの一つとして学ばれ、実践されています。
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著者プロフィール
小野 仁美(おの ひとみ)
群馬県沼田市出身。株式会社リクルートに入社、就職情報誌の編集を担当。
株式会社東京ストレスマネジメントに転職し、ストレスマネジメントセミナーやコミュニケーションセミナー等を担当。
その後、新規事業部を立ち上げ事業部長として営業と運営に従事。
1999年、株式会社コーチ・トゥエンティワン設立に伴い取締役就任。
アメリカのコーチユニバーシティのマスターコーチに師事。
米国ICF認定のプロフェッショナルコーチの資格を取得後、2000年に独立。
株式会社ビューティアンドサポートを創業し代表取締役社長に就任。
経営者や管理職、起業家、医療従事者、各種専門家など個人向けのコーチングを多数実施。
企業内研修、企業内コーチの育成やエグゼクティブコーチング、ビジネスコーチングをはじめ、現在も多数担当。著書に『自分は自分で変えられる』(PHP研究所)、共著に『周りの人をハッピーにする!はげまし言葉ハンドブック』『コーチング一日一話 今日から始める「気づき」の365項目』(以上、PHP研究所)などがある。
株式会社ビューティアンドサポート取締役社長プロフェッショナルコーチ