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#01 対症療法では完治には至らない

広島県廿日市市の「ふじかわ心療内科クリニック」の藤川徳美院長は、病気の症状がほとんどなくなった寛解ではなく、完治を目指した診療を行っています。
これは精神科や心療内科では珍しいこと。

その治療の考え方や、治療方針を紹介している『うつ消しごはん』(方丈社)があります。
寛解ではなく完治を目指した治療とはどのようなものなのか、藤川院長に話をうかがいました。

※2018年12月発刊COCORO第23号に掲載された内容をもとに4回に分けて掲載します。

藤川院長は2008年に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院するまでは、
大学病院や国立病院の勤務医として多くの患者を診察し、
臨床研究、学術論文発表に積極的に取り組んでいた。

「精神薬理研究も数多く手がけ、どのような薬物治療を行えば症状が改善するのか熟考して、治療に当たっていました」
病院の医師仲間からは「薬の使い方が上手い」と評判だった藤川院長だが、どんなに頑張っても薬を中心とした一般的な治療では、
ある程度までしか症状を改善させることができなかった
と言う。

「病院やクリニックなどで行われている医療行為は、熱があれば解熱剤を、痛みがあれば鎮痛剤をというように、
薬剤処方中心の対症療法が中心で、私が専門とする精神科なら、
うつ病には抗うつ剤を処方するわけです。

抗うつ剤を処方すれば、たしかに抑うつ状態を緩和させることはできます。

しかし、病気の症状がほとんどなくなったものの完全に治癒したわけではありません。
いわゆる寛かん解かいと呼べるところまでは改善できても、薬を必要としなくなる完治にはなかなか至らない患者さんが多いのです」

クリニック開院後、藤川院長は勤務医時代以上に患者を診察する機会が増えた。
その分、治らない患者や、
寛解はしても完治までには至らない患者を目の当たりにする機会も増え、必ずしも治療行為に治療結果が伴わないことに「ジレンマを感じる日が続いていた」と言う。

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著者プロフィール

藤川 徳美(ふじかわ とくみ)

ふじかわ心療内科クリニック院長医学博士

1960年、広島県生まれ。1984年、広島大学医学部卒業。
広島大学医学部附属病院精神神経科、県立広島病院精神神経科、国立病院機構賀茂精神医療センター等に勤務。

うつ病の薬理・画像研究やMRIを用いた老年期うつ病研究を行い、
老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見する。
2008年、広島県廿日市市に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院。

気分障害、不安障害、睡眠障害、ストレス性疾患、認知症などの治療にあたっている。
著書に、『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)、
『分子栄養学による治療、症例集』(NextPublishingAuthors Press)がある。