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イケアのパーパスから学ぶ、暮らしを豊かにするビジネス戦略
前回は、アウトドアブランドのパタゴニアのパーパスを取り上げ、環境保護とビジネスの両立について考察しました。
今回は、北欧家具ブランドのイケア(IKEA)のパーパスに焦点を当て、どのようにビジネスモデルや企業戦略に組み込まれ、世界的な成功につながっているのかを探ります。
イケアのパーパスとは?
イケアは、次のような企業理念(パーパス)を掲げています。
“To create a better everyday life for the many people.”
(より多くの人々の、より良い暮らしをつくる。)
このシンプルな言葉には、「多くの人々が手の届く価格で、機能的でデザイン性の高い家具を提供する」というイケアの使命が込められています。
このパーパスは、製品開発、ビジネスモデル、店舗運営、サステナビリティ戦略のすべてに反映されており、世界中で愛されるブランドへと成長する原動力となっています。
イケアのパーパスがどのように事業に反映されているのか?
ビジネスモデルにパーパスを反映
イケアは、パーパスを実現するために、家具業界の常識を覆す独自のビジネスモデルを築きました。
低価格と高品質の両立:大量生産・フラットパック(組み立て式)の導入により、輸送コストを削減し、リーズナブルな価格を実現
セルフサービスと自己組み立て方式:コスト削減だけでなく、顧客が「家具を作る楽しさ」を体験できる仕組みを提供
大規模な店舗体験:ショールーム形式の展示で、実際の暮らしをイメージしながら購入できる体験型ストアを展開
これにより、ただ家具を売るのではなく、「暮らしをより良くする」というパーパスを実現するビジネスモデルが構築されています。
サステナビリティ戦略にパーパスを反映
イケアは「より良い暮らし」を実現するために、環境や社会への貢献も重視しています。
持続可能な素材の使用:再生可能エネルギーの利用や、リサイクル可能な素材を積極的に採用
エネルギー効率の向上:LED照明の普及や、エネルギー消費を抑える商品開発を推進
「Buy Back & Resell」プログラム:不要になった家具を買い取り、リユース・リサイクルする取り組みを強化
このように、サステナビリティは単なるCSR(企業の社会的責任)ではなく、パーパスの実現のための重要な要素となっています。
組織文化にパーパスを反映
イケアは、社内文化においてもパーパスを徹底的に浸透させています。
社員へのミッション共有:「より良い暮らしをつくる」という理念を全社員が理解し、実行する文化を醸成
リーダーシップとチームワークの重視:階層的な組織ではなく、フラットでオープンな企業文化を採用し、現場の声を尊重
従業員の多様性を促進:ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が活躍できる環境を整備
これにより、従業員一人ひとりがパーパスを意識しながら業務に取り組むことができ、組織全体が一貫した方向性を持つことにつながっています。
イケアの事例から学べること
イケアのパーパス「より多くの人々の、より良い暮らしをつくる」は、次の3つの成功要因を持っています。
明確で共感しやすいパーパスを掲げ、社内外に浸透させている
シンプルで分かりやすい言葉が、従業員や顧客の共感を生んでいる。
ビジネスモデル、サステナビリティ、組織文化にパーパスを落とし込んでいる
低価格と高品質の両立、環境配慮、フラットな組織文化が、一貫した理念のもとで運営されている。
パーパスを持続的な成長の原動力として活用している
環境問題や社会的課題の解決を組み込むことで、時代の変化に適応しながらブランド価値を高めている。
まとめ
イケアは、「より多くの人々の、より良い暮らしをつくる」というパーパスを軸に、家具業界の常識を覆すビジネスモデルを築き、
サステナビリティや組織文化にも一貫性を持たせながら、持続可能な成長を実現しています。
週末経営合宿でパーパスを策定する際には、単なるスローガンではなく、どのように経営のあらゆる側面に落とし込むかを具体的に議論することが重要です。
次回は、パーパスとより関係の深い、デザイン経営について考えてゆきたいと思います。