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我がふるさと(短編エッセイ春・夏編)

私が生まれ育った町は、東北地方にある。
自然に囲まれた主に農・林業に携わる人々が多いところである。
都会などは、ビルの建て替えで、町の景観が数年でコロコロ変わるが、
私の故郷はいつまでたっても変わらない。
だから、いつ帰省しても、同じ景色が待っていてくれて、私はほっとする。

春は他県に比べて到来が遅い。
冬は雪深いため、まず雪解けの時期が来る。
あんなに白一色で埋め尽くされていた地面が、一旦雪が解け始めると、一気に進み、コンクリートや土が、たちまち顔を出す。
そして、福寿草やバッケ(ふきのとう)が、春が来たことを告げてくれる。

私の母は山菜取りがとても好きだった。
母の実家の裏には、小さな山があった。
おそらく、母は子供の頃からよく山菜取りに出掛けていたのだろう。
私は山菜取りをしたことが無いので、どこが面白いのか見当がつかない。
母が言うには、なんでも、山に入ると、あちこちに山菜が生えていて
(もちろん他の人が行かないところに朝一で行かないといけない。)
とても夢中になってしまうのだとか。
時間を忘れ、一人で、どんどん山の奥の方まで入っていく。
(だから遭難する人もたまにいる。)
いつも、朝出ていった母の帰りは、夕方だった。
ある日、私は母に聞いてみた。

「なに、そった、おもしぇ?」
「あや~っ、あっちゃにも、こっちゃにも、いっぺ生えでるべぇ!」

と、笑顔で答えが返ってきた。

どこの家でも春の食卓は山菜料理でにぎわう。
私の好物は蕨(わらび)たたき。
蕨と味噌の味が絶妙に合わさり、ご飯が何杯でも食べられる。
そして、サシの味噌汁。
ちょっと苦いけど、あの少し、ぬるっとした触感が私は大好きだ。
どれも、母や、母亡き後は、父が作ってくれた手作りの故郷の味である。
私は作れないので、父もいなくなった今となっては、幻の料理となってしまった。


夏は暑いが、朝晩はとても涼しくて、過ごしやすい。
私の実家の裏には川があり、裏口のドアと、表玄関の戸をあけるておくと、川からの風が家の中を通り抜け、とても涼しい。
昔は扇風機もいらない程だった。
私が子供の頃には、裏口に近いところにある、お風呂の踊り場の板の間が、母と私と妹のお気に入りの昼寝場所だった。
人が一人、寝そべるくらいしかスペースが無かったため、

「オメェ、あっちゃいげ~っ!」
「やんた~っ!」

と、いつも場所取り合戦になった事を懐かしく思い出す。

私が子供の頃は、川でたまに泳いだ。
海が近くには無かったからと、まだその頃は、川の遊泳は禁止されていなかった。
さわ蟹もよく取りに行った。
カブト虫やクワガタもそこいら中に居た。
あの頃は、子供が子供らしく遊べる自然があちこちにあった。
今はどうなのだろうか…。

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