理科のおさらい(2) 回転スピードの解明
今回のテーマは、回転です。
中学理科の範囲からはちょっとはみ出ていますが、実は長いこと疑問だったこともあり、どうしても力学的観点から理解してみたかったんです。
こちらの動画、最初のほうはポールの回転スピードが緩く、後半は回転スピードが上がります。
ポールダンスを教わった当時のインストラクターからは、
「ポール自体が回転しているときには、ポールから体を離すほど回転が遅くなる、近づくほど早くなる」
と教えられました。
(ポールは、それ自体が固定されていて自分が遠心力をかけないと回れないものと、ポール自体が回る仕様で遠心力を調整できる2種類がある、今回は後者のほう)
これは実際、そのとおりで、ポール自体が回る仕様の場合には、体を近づけたり離したりしながら回転スピードを調整して作品を作ります。
しかし!「体の位置を調整するとなぜ回転スピードが上がるのか」はやっぱり疑問でした。そして、自分が教える立場になっても、この理由だけでは、やっぱりなんかもの足りない(自己満足かもですが)。
ということで、がんばって理解しました。
なお、今回は一人の理解だけでは限界があり、力学的なことが分かる人に助言をいただきながら下記、書いております。
結論からいうと、フィギュアスケートのスピンと原理は同じなんですけどね。
1.スピンの速さは回転軸の太さに左右される
スピンは、回転軸が
太ければ回転が遅く
細ければ回転が早くなる
回転軸が太い(細い)って何でしょうか。
ざっくり説明するために先ほどの動画を抜き出すと、下記の写真で赤線の範囲が回転軸です。細いほど回転が早くなる。
この回転軸うんぬんを物理学的に説明するために必要な概念が3つ。
「角運動量」「角速度」と「慣性モーメント」です。
まず、最初に回転運動の大きさは「角運動量(L)」で表します。
角運動量(L)の求め方は、半径(r)× 運動量(p)
運動量(p)は質量(m)と速度(v)の積で表される運動の状態、と定義されますが、ざっくりいうと、「勢い」と言ったところでしょうか。
つづいて、物体の運動時の考え方として「運動量保存の法則」というのがありましたが(ニュートンのゆりかご、を思い出して!)、それは回転運動の時にもあてはまります。回転運動のときは「角運動量保存則」と頭に「角」がつきます。
=角運動量保存則=
外部から摩擦などの力が加わらない場合、
角運動量(L) = 慣性モーメント(I) × 角速度(w) = 一定
つまり、角運動量が一定の場合は慣性モーメントが小さくなれば角速度(回転速度)が大きくなります。
イメージしやすくするために数字を当てはめてみると
角運動量(300)= 慣性モーメント(10)× 角速度(30)の場合に
慣性モーメントが5になると
角運動量(300)= 慣性モーメント(5)× 角速度(60)
となります。
慣性モーメントが小さくなる=角速度が上がる(回転が早くなる)、または、角速度(回転速度)を上げるためには慣性モーメントを小さくする必要がある、とも言えます。
では、慣性モーメントってなんでしょうか??
2.慣性モーメントは回転のしづらさ
慣性モーメントは、詳細な説明をすっ飛ばしてざっくり簡単に言うと「回転しにくさ」のことです。「回転の始まりにくさ」「回転の止まりづらさ」。
慣性モーメントを式で表すにはちょっと寄り道をします。
先ほど記載した、角運動量(L)は、半径(r)× 運動量(p)です。
そしてこの式を分解すると、運動量(p)は、質量(m)× 速度(v)。
さらに、速度(v)は、角速度(w)× 半径(r)に分解されます。
まとめると、こうなります。
そして角運動量保存則に当てはめると、慣性モーメントは質量(m)× 半径(r)の二乗ということになります。
3.まとめ
ここまでの式が出たところで、やっと回転軸の太い・細いの話に戻れます。
先ほど出した、慣性モーメント(I)は、質量(m)× 半径(r)の二乗。
これをポール上での回転に置き換えたときに、質量(m)は私の体重、半径(r)はポールの回転軸と私の体の距離と考えると、
私(体重)がポールに近づくことで、回転半径が小さくなり
慣性モーメントが小さくなる=回転軸が細くなる=回転が早くなる
逆に、ポールから離れることで、回転半径が大きくなり
慣性モーメントトが大きくなる=回転軸が太くなる=回転が遅くなる
1.のところで数字をあてはめてみたように、慣性モーメントが小さくなることで角速度(回転速度)が上がるというイメージと一致します。
体重は変わらないけれども、ポールとの距離は変えられる。
だから、角速度(回転速度)を上げるには回転軸を細くする必要がある!
となるわけです。
文章でまとめると
物体の回転運動には、角運動量保存の法則があって、そこで定義されている慣性モーメントっていう「回転のしづらさ(?)」みたいな概念は、定義上、質量に半径の二乗を掛けた積で表す。で、質量を体重と置き換えるならば、半径を縮めれば回転速度が上がる、という仕組み。
ということになるのかな。
でも、文章だけだとやっぱり全然わからなかったので、物理学で使われている式を駆使して説明してみました。
理科はホント苦手だったので、解釈の仕方とかイマイチ自信ないけどたぶんこの考え方で合っている・・はず!