TAR/ター ケイト・ブランシェットは女アンソニー・ホプキンスだった

TAR/ター

トッド・フィールド監督の作品を観てきた。
多数の賞のノミネート、受賞作品というだけあり、総じてレベルの高い作品である。
クラシック音楽やLGBTに関する知識がないとついていけない部分もあるので、どちらかというと通好みの深みのある作品である。

兎にも角にも主役のケイト・ブランシェットが女アンソニー・ホプキンスかというくらい、知的でオーラもあり、神がかった怪演をする。
役者としてまだまだ成長しているストイックさに圧倒されるのだ。

あらすじ

世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は天才的な能力とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功する。今や作曲家としても、圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんな時、かつてターが指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは、追いつめられていく──


最後まで見てみて、これはモデルとなる人物がいるのだろうと思えるほど、どの業界でもあり得そうな話なのである。
しかし、実際はフィクションとのこと。

芸術家というのはどこか欠落したところがあり、自分を犠牲にしながら命を削って作品を作り上げる。
こういう人物に関わるとまた周りも消費の対象となり、消耗してしまうのだ。
この作品に登場する人物や楽曲はLGBTを想起させるものであったり、「交響曲第9番を作曲すると死ぬ」というクラシック音楽のジンクスのメタファーも盛り込まれている。

また、監督はシャイニングのような作品にしたかったのだろうなという意図も随所から感じられる。
非常に神経質な作品で素晴らしかった。


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