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0.1%でも自分をアップデートし続ける~Buddy's Voice vol.11:角田千莉~

We are Buddies(WAB)は、子どもと大人ボランティアがバディとなり、直接会って一緒に遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていくオランダ発祥のプログラムです。バディとなる大人ボランティアは、月に2回程度の子どもとの関わりを1年以上続けることを自らの意思で選択し、この活動に参加しています。様々なバックグラウンドを持つ大人バディたちは、なぜWe are Buddiesに参加し、活動を通してどんなことを感じているのでしょうか。 この"Buddy's Voice" の連載では、様々な視点からこのプロジェクトを捉え、その意義を探求するべく、大人バディたちの生の声を届けていきます。

第11回となる今回は、WAB事務局の西角綾夏がインタビュアーとライティングを担当しました。インタビューを受けてくれたのは、WAB連携先の前橋医療福祉専門学校の角田千莉さん。小学6年生の女の子Yちゃんの大人バディとして活動中です。

WABのことなら何でもやる

千莉さんは、WAB群馬事務局のインターンとしてもかかわってくれています。群馬でWABの活動を広げるための企画運営などを手伝ってくれています。マッチングや打ち合わせも立ち会ってもらっているので、活動全てを共にしながら、同じ景色を見ることができているようでとても嬉しく思っています。

いつも瞳をキラキラ輝かせて真っすぐに思いを伝えてくれる千莉さん。「WABのことなら何でもやります!」と口に出してくれる通り、私たちからのお願いに、眩しいほどのエネルギーで応えてくれます。そんな千莉さんに私自身も触発され、一緒に企画を考えるために連日オンラインで打ち合わせをするようなことも増えてきました。千莉さんを突き動かすエネルギーには、どんな思いと背景があるのでしょうか。日常的にお互いの思いを語り合っていますが、今回は、改めて時間をとり、じっくりお話を聞いてみました。

運命的な出会い

西角綾夏(以下、綾夏):千莉ちゃんとは、日常的に語り合っているけど、今日は改めてじっくり話を聞きたいなと。そもそも千莉ちゃんは、どうして大人バディとしてWABに参加したの?

角田千莉(以下、千莉):WABを初めて知ったのは、学校の案内でした。もともと子どもは好きでも嫌いでもなく、自分からかかわろうとはしていなかったんです。ただ、高校卒業後に始めた塾でのアルバイトが意外と楽しくて、子どもとかかわることが好きだったんだなと気付きました。でも、アルバイトでは、講師と生徒という壁があるので、もう少し柔らかく、でも深く、子どもとかかわってみたいなと思っていました。ちょうどそんなときに、WABの説明会の案内があったんです。そのとき「もしかして自分がやりたかったのこれじゃない?」としっくりくる感覚がありました。

前橋医療福祉専門学校での説明会

説明会で直接話した綾夏さんと愛梨さんは、みんな良い人オーラが全開で、会った瞬間に「あ、これやろう」と心が決まりました。この人たちは絶対良い人だと思ったんです。自分のやりたかったことはこれだ!と思い、事前にWABのサイトやSNSを全部調べていたので、最後は人で決めた感じです。

綾夏:千莉ちゃんが説明会の日に会いに来てくれたことは、すごく覚えてる!じゃあ、千莉ちゃんは、WABに出会う前から日常的に子どもに意識が向いていたってことなのかな?

千莉:子どもとのかかわりを考えていたのもあるんですけど、私がめちゃめちゃ人見知りで、誰に対しても壁を作っちゃうタイプなので、壁を作らずにもっといろんな人を知ってみたいなと思っていたんです。

自分らしくいられる時間

綾夏:なるほど。実際に千莉ちゃんは、その後いろんな気付きや学びを得ていたよね。大人バディ向けの研修で、「みんなそれぞれ違うし、『普通』ってないんだな」という千莉ちゃんの気付きが、すごく印象的だった。相手のお子さんとのマッチングのとき、すごく緊張していたけど、最近は、バディ相手のYちゃんとどうやって過ごしているの?

千莉:Yちゃんと初めて会ったときは、お互い緊張して壁がすごくあったけど、今は全く気を使わないし、お互い素の状態で好きなことを共有し合ったり、一緒にお散歩したり、冒険したりしています。私は、オフラインで会える日を毎回めちゃめちゃ楽しみにしているんです。月に1,2回しか会えないから、ちょっと遠くにいる友達に会いに行くイメージです。その日を楽しみに1ヶ月頑張ることができています。

千莉ちゃんとYちゃんのマッチングの日

綾夏:そうなんだ。千莉ちゃんもYちゃんも最初は緊張でガチガチだったのに、いつの間にか2人の関係性が深まり、散歩して過ごすというルーティンができているんだね。Yちゃんと遊んでいる中で、印象的だったことは何かある?

千莉:Yちゃんは、お友達や妹と弟といるときは、すごくお姉さん感が出ているんです。私と2人でいるときは、学校や友達のことなどお喋りが止まらず、むしろ妹感が強いのに、みんなでいるときは、面倒見がよくて気配りもできて、しっかりしているところが印象的でした。

私にも妹がいるから、お姉さんらしくいなきゃという気持ちはなんとなく分かるんです。自分も妹とは、どっちが先にお母さんと話すか、など、いつも戦争状態で、親と話したいのに話せないことが多かったんです。実際に家族と一緒にいるときのYちゃんは、弟や妹に譲って引いてしまい、後から自分がいくタイプ。無理している感じはなく、楽しそうではあるけど、私と2人でいるときとは全然違う。

Yちゃんが好きなように話すときは、めちゃめちゃ良い顔をしているから、2人で過ごす時間は、Yちゃんが遠慮せず、自分のやりたいようにやっていい、Yちゃんらしくいられる時間になったらいいな、と思っています。

毎日が楽しくなって、気持ちの余裕ができた

綾夏:素敵。そんなふうに、千莉ちゃんが、あらゆる角度からYちゃんを見つめ、関係性を築いていくなかで、Yちゃんや千莉ちゃん自身になにか変化はあった?

千莉:Yちゃんの変化については、自己主張をしてくれるようになったことです。最初は何をやりたいか聞いても「なんでもいい」「わかんない」が多かったんです。前回初めて「千莉ちゃんと映画に行きたい」と言ってくれて、キュンとしました。他にも「私が好きなYoutube一緒に見ようよ」など、やりたいことを素直に言ってくれて、これがYちゃんの素なのかなと。私もYちゃんが素でいてくれるほうが嬉しいので、良かったなと思います。

自分の変化については、毎日が楽しくなりました。バタバタと忙しくても、気持ち的には詰まっていないんです。Yちゃんに会うのが楽しみだし、自分の素でいられる時間ができたことで、前よりは自分を出すことができるようになってきました。自分を偽らず、自分を押し殺していないから、気持ちに余裕ができたんだと思います。

私は私のことが好きだし、あなたはあなた自身のことが好き

綾夏:それはすごく尊いことだね。千莉ちゃんが大人バディとしてかかわるだけじゃなく、運営面も携わりたいと思ったのも、そうした自分自身の変化が理由なのかな?

千莉:大人も子ども含め、いろんな世代とかかわるようになって、みんながみんならしくいられたらいいなと思ったんです。自分のことを好きになって、それを胸張って言える。「私は私のことが好きだし、あなたはあなた自身のことが好き」という環境が当たり前になって欲しいと思います。WABにかかわって、前よりは自分のことを好きになっているから、それを胸張って言えるような環境が作れたらいいなと思い始めました。

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今でも、綾夏さんと愛梨さんは、良い人オーラ全開で、見ているだけでその幸せが伝わってきます。2人とも自分のことが好きで、自分を大事にしているんだなって思う。それって凄いなと思うし、2人がどうやっているのか知りたいなと思い、事務局をやりたいと言いました。

綾夏:わあ、ありがとう。すごい!一生分の告白をもらった感じ。千莉ちゃんのなかで、みんなにも届けたいという気持ちがあったんだね。実際にやってみてどうかな??

千莉:マッチングに立ち会ってみて、自分以外の人が新しい人と出会い、交ざり合っているのを見ると、こっちも幸せな気持ちになる。これを見ていたから、事務局の2人はいつもあんなにキラキラと話しているんだなと思いました。こないだの夜の打ち合わせも、バイト後で疲れていたけど、WABのことをやると一瞬で疲れが吹き飛びました。インターンとしてかかわってから、さらに毎日が楽しいなと感じるようになりました。

自分らしさがあってもいいじゃん

綾夏:いつもありがとう。今後に向けて、なにかやりたいことはある??

千莉:Yちゃんとは、あんまり先のことは考えていないんです。お互い素のままでいられる関係性が続いていったらいいなと思う。毎日いろいろあっても、重く考えすぎず、誰になんと言われようと自分は自分。「自分らしさがあってもいいじゃん」という考え方に、お互いがなれるといいな。今を楽しめたらと思います。

事務局としては、もっといろんな人に出会っていきたいです。いろんな考え方を知ることで、自分がまた一つ新しくなる。実際に、マッチングに立ち会って、自分が当事者でなくとも、誰かと誰かが出会っているところを見るだけで、プラスがありました。だから、いろんな子どもや大人に出会って、自分を更新し続けたいです。

綾夏:WABのことを知らない人にどんなメッセージを届けたい?

千莉:全然知らない人と出会うことで自分をアップデートすることができる、と伝えたいです。この活動は、ただ子どもと大人が会って遊ぶだけに見えるけど、実はめちゃめちゃ深い。この近すぎず遠すぎず、浅すぎず深すぎずの関係性が、もっといろんな人に広まったらいいなと思います。自分のことを好きになれる人が増えるかもしれないから、少しずつこの活動や、考え方、感じ取り方が伝わっていったらいいなと思っています。

そして、興味があるならやってみてほしいです。やってみてどう感じるかは人それぞれだけど、多分損はしない。自分が古くなることはないし、0.1%は更新できると思うから、まずは知ってほしいなと思います。

編集後記

一言一言、じっくり言葉を選びながら、思いを語ってくれた千莉ちゃん。美しい表現がたくさん出てきてハッとさせられました。それでもインタビュー後の千莉ちゃんは、上手く言葉にできない、難しいと少し照れくさそうにしていました。表面的な言葉に簡単に変換するのではなく、自分の心の根っことつながる言葉だけをじっくり選んで発する千莉ちゃんの存在は、私にとってとても大きく、いつもたくさんの学びを受け取っています。こんなふうに、私も誰かとかかわりながら、ずっと自分をアップデートしていきたいなと思ったインタビューでした。

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