【読書体験】はたらきながら学ぶ――『状況に埋め込まれた学習』
パソコンのキーボードをカチャカチャ鳴らしていると、上司達が話している言葉が耳に入り、現場の動向が垣間見える。あるいは、手技を教わっている同僚の様子が目に入り、自分もこっそり取り入れたりする。
このように、働く現場には、教えられなくとも分かっていく類の学びがある。それが『状況に埋め込まれた学習』だ。
この概念をどう生かしていけば良いのだろう?
“教師がやらせるから学ぶのではない。教師がホンモノの世界(円熟した実践の場)をかいま見させ、そこへの参加の軌道(trajectories)を構造化する一方、子どもはその世界との漸進的交流で、自ら学んでいくときの「共同参加者」となる、ということになろう。”
― 佐伯胖 (大学教授)
上記は、訳者あとがきから抜粋したものだ。何かを伝えようとする人には、ヒントになるかもしれない。
教えることと、学ぶことは、根本的に違う。そのことを、わたしは経験から認めざるを得ない。後輩に教える時、あるいは、クライエントに伝える時、教えたいことと学ばれることが違うという現象になんども頭を抱えてきた。
けれども、学習においては、意味は教えられるものではなく、創られてゆくものなのだ。
それならば、交錯する意味の力動を感じ取りながら、語ったり聴いたりしていってみよう。手元の明かりで本を照らしながら、静けさの中、そんなことを考えた夜だった。