AIからAnI(人工非-知能)へ(2) ヒトの進化の環境としてのメディア
ヒトの進化
人間はずっとむかしから変わらず人間であり、これからもおそらくずっと人間であるのだろうか?
「人間」という一つの言葉のもとで、私たちは遠い過去から未来まで、ずっと「同じ」であるだろう、という素朴なイメージが生息している。
しかし、過去に目を向ければ人間もまた他の生命と同じように進化してきた。
進化の環境
進化はある生命が生きる環境の変化とともに展開する。生命と環境は切り離して扱うことのできない一体の出来事である。生命は常に環境からエネルギーを得てパターンを再生し続けようとする。
地球上の個々の生命にとっての環境とは、その大半が他の生命とその産物である。例えば今日の大気中にありふれている酸素もまた、ある生物の活動の産物として生じたものであるという。
環境と生命の関係は流動的に変化する。生命の活動が環境を変え、その環境が選択圧となり生命を変える。
人間の進化の環境としての集団生活
人間にとっての環境は気候や食料となる他の生命といった自然環境に限られない。人間にとっては複数の人間からなる「社会」もまた進化を方向づける環境である。
私達の言語能力の起源は明らかではないが、一説によれば、他の生物と較べて未熟な子どもを育てる必要のある私達には、集団で生活する必要があったという。
そうした環境の中で、他者の表情からその感情を読み取り、回避すべきか接近すべきかを即座に判断し、自分の行動に反映するという他の近縁の生物にも備わっている神経機構が一層の進化を促された可能性がある。それが言語能力獲得の遠因になったとも考えられる。
私達の脳もまた、他の生物とその器官と同様に、進化を経て今の姿にまで変化してきたものだ。私達の脳には、言語以前の段階で、他の人や動物の顔を認識し、近寄るべきか、避けるべきかを瞬時に区別する機構が備わっている。集団で暮らす野生動物であった人間の祖先たちの間では、そうした能力に長けた者がよりよく生き残り、子孫を残したと考えられる。
進化の環境としての言語とメディア
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