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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2022年1月の記事一覧

意味分節理論は大学入学共通テスト「情報」の範囲に入るか??

大学入学共通テストが行われているということで、意味分節理論と絡めて書いてみる。意味分節理論は近い将来新たな試験科目になる「情報」に、深いところで関連すると思われる。 ◇ ◇ さて、意味分節理論というのは何かといえば、意味ということの発生の仕方を考える理論である。 といったところで、さっそく迷路の入り口に落とし穴が開いている感じになる。 第一に、意味分節理論でいう”意味”とは、「もの」ではなく「こと」である。第二に、意味分節理論で言う”意味”は、止まったり固まったりして

動いているのに止まっているように見せる技術 -井筒俊彦「事事無礙・理理無礙」を読む(4)

井筒俊彦氏の「事事無礙・理理無礙」を引き続き読む。 (前回の記事はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても、今回だけでお楽しみいただけます) 「事事無礙・理理無礙」は井筒俊彦氏の著書『コスモスとアンチコスモス』に収められている。 事事無礙、事と事が無礙であるとは、複数の事と事が、互いに同じではなく異なりながらも、しかし同時に無碍に妨げなくつながっている、ということである。複数の「事」は、互いに異なりながらも同じであり、分かれていながらつながっている。 事の線、線としての

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シンボルとシグナルの間でハビトゥス(あるいは言語アラヤ識)を建立する 【2021年の読書まとめ】

2021年に印象に残った文献(の一部)をご紹介します。 『梵文和訳 華厳経入法界品』 まずこちら『梵文和訳 華厳経入法界品』三冊である。 梵文から和訳されたものを文庫本で読めるというのであるから、たいへんなことである。 例えば、「深く法性を洞察し、生存の海から超出して、如来の虚空の如き境界にあり、人を束縛する煩悩とその習慣性を抑止し、その拠り所や住居に執着することなく、虚空の如き静寂に住まい…」((上),p.38)であるとか、「牟尼たちは、法界の無区別の極みに安住して