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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2020年11月の記事一覧

未完成のまままわり続けること −パース『連続性の哲学』と岩田慶治『コスモスの思想』を読む

(この記事は有料設定ですが、全文を公開しています) ◇ チャールズ・サンダース・パースの『連続性の哲学』に「われわれの探求の途(みち)」を「妨げる」、四つの「有害な思想の形態」という話が出てくる。 第一に「絶対的な断言」 第二に「いくつかの事柄は絶対に不可知である、と主張すること」 第三に「科学におけるあれこれの要素が根本的かつ究極的であり、他のものから独立であって、それ以上の説明を寄せ付けない」と主張すること。 第四に「法則や真理が、最終的で完全な定式化を与えら

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中沢新一著『レンマ学』 × 岩田慶治著『コスモスの思想』を並べて読む −コスモスの生成とレンマ▷ロゴスへの写像

文化人類学者 岩田慶治氏による「コスモス」の考え方について、前にこちらのnoteにまとめたものの続きである。 コスモスを生成し成り立たせる「反復」岩田氏は『コスモスの思想』の終盤に次のように書かれている。 人類の文化は「コスモス」としてある。 いや、「ある」というか「なる」、成り立っている、といった方が良いかもしれない。 コスモスとしての文化は偶然できあがるものでもなく、必然的に決まったかたちをとるものでもない。文化のコスモスは「自由」に、創造される。それは無数のひと

文化と自然の「空間構造」−岩田慶治著『コスモスの思想』 「アニミズムの空間構造」より

(本記事は有料に設定していますが、全文を試し読みできます) ◇ 文化人類学者 岩田慶治氏の『コスモスの思想』を引き続き読んでいる。 今回は155〜163ページに収められた「アニミズムの空間構造」を読んでみる。 アニミズムの思考や感覚は、空間構造のイメージを伴う。 私たちが自分たちの生きる世界についていだく空間構造のイメージには複数の型がありうる。 岩田慶治氏は今日の私たちが生きる空間構造を「われわれは文化という名の縫いぐるみの中に生活している」という言葉で表現する

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文化「と」自然、文化「にとっての」自然 −岩田慶治著『コスモスの思想』を読む

(この記事は有料設定ですが、さいごまで「試し読み」できます) ◇ 文化人類学者岩田慶治氏の著書『コスモスの思想』を読んでいる。読み進めるにつれて、岩田氏の論は核心へと入っていく。そして次のような一文がある。 「われわれの眼に写った自然、言葉に転化した自然はすべて半自然である」岩田慶治『コスモスの思想』p.121 半自然というのはどういうことだろうか? 文化と自然文化人類学では「自然」ということが「文化」の対立項に設定されてきた。 自然 対 文化 野生 対 文化 動

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