万石様、佐土原のサンタクロース
調査月報の原稿担当は、宮崎県の6月の年中行事。原稿を書き始めてみると、知らなかった事例がたくさん出て来て、もう一度、原稿を書き直したくなったが、締め切りで泣く泣く提出。なかでも佐土原の万石様はこれまでも目にはしていたはずが、見逃していた習俗だった。
多くの文献で、この「万石様」「マンゴクサマ」「マンゴク様」「まんごく様」は取りあげられている。(本登録した方しか見られません)
和歌森太郎『年中行事 (日本歴史新書)』至文堂、1957
西角井正慶編『年中行事辞典』東京堂、1958
『日本民俗学大系 第7巻 (生活と民俗 第2)』平凡社、1959
国会図書館デジタルコレクションで簡単に調べるとこんな感じで万石様が紹介されている。おそらくこの事例は松本友記の報告によるものと考えられます。
松本友記「佐土原の民俗」『日向郷土志資料 第16・17合輯「佐土原・妻・西都原」特集』日向郷土会、昭和13年4月
松本友記については以前紹介したことがある。
松本友記の事例紹介が全国的に知られるようになって多くの研究書に「まんごくさま」が紹介されることになったと思われる。
それでは宮崎に関する文献で他に「万石様」について触れた研究があるか?
野口逸三郎他編『宮崎の民俗 (宮崎の自然と文化7)』宮崎日日新聞社、1980
これも直接の報告ではないものと思われる。
唯一、一次資料で確認できたのが『風俗習慣調』大正4年(1915)の当時の宮崎郡の報告書である。宮崎市佐土原町の巨田地区の報告に次のような一文がある。
今後、佐土原町に伝承されていたサンタクロース同様の習俗について調べていきたい。