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時代をつくるCM

テレビを見ることは少なくなったが、朝の忙しい時間帯は時報がわりにテレビをつけっ放しにしている。

番組自体はどうでも良いのだが、見慣れた番組にしないと時間が分かりにくくなって意味がないので、チャンネルはほぼ固定状態になる。

まぁ、いわゆる「ながら見」で音だけ聞くような状態なのだが、やはりCMが流れると自然に耳が反応する。
耳に残るキャッチコピーや歌にまんまと引っかかるタイプだな〜自分。

そんな毎日の中でちょっと気になることがある。

CMと言うのは時代の流れを反映しているものだが、最近多いなと感じるのは、転職斡旋と予防接種(或いはワクチン)推進だ。あとはボートレースや競馬、不動産関係だろうか。

まずは、転職について。
私は昨年1年かけて就職活動をした。
本当にたくさんのサイトがあり、いくつかに登録をした。もちろんハローワークにも登録して職探しをしたが、同じ職種でも比較的高賃金だったのは派遣会社を通した仕事だった。

ちょうど同時期に就活をする知り合いが何人かいたのだが、一人は派遣で仕事を見つけ、一人は契約社員として3ヶ月ごとの更新をし続けている。また、今の職場に不満があるという働き盛りの若者は就職サイトというより、もっと踏み込んだ指導をしてくれるサイトに登録して、自分の評価を探ろうとしている。昔ながらの終身雇用などはもう流行らないのであろう。

転職することは別に悪いことではない。自分を高く評価してくれるところで働きたいと思うのは当然だからだ。
しかし、誰もが高い評価を受けられるわけではなく、中には今の会社で評価されているにも関わらず、もっと、もっと、となっている人もいるのではないだろうか。

「隣の芝生は青い」とはよく言ったものだ。努力をすることと、評価はイコールではない。自分への真っ当な評価にガッカリすることもあるのだ。

自分に価値があると思うのは大事なことだけれど、長く勤めることで得る信頼関係や愛着も、充分価値のあるものだといえる世の中であって欲しいなと思う。

逆に言えば、その信頼関係以外に売りのない企業は人材集めに苦労するだろうなとも思う。


次に予防接種だ。
様々な病気を紹介して、最後には「予防接種(或いはワクチン)という手もあります」…。

…。

…。

その病気の中に帯状疱疹がある。
これは私も20代の頃に発症し医者に罹って治療した。普通はその若さで罹らないらしいが、当時はかなりハードな仕事をしていたのでそれが祟ったのだろう。
痛いことは痛かったが皮膚科で良い治療をしてもらい、さほど時間を掛けずに治った記憶がある。

しかし発症する場所によっては大変なことになる病気でもある。
顔面に出来てしまった上司がいて、酷い顔面麻痺で通院したものの、食べられない・喋れないでけっきょく入院した。
後遺症もしばらく残り、場所によってこんなに違うのかとびっくりした。

風邪のように誰もが罹るわけではないが、防ぎようもない病気である。注射で防げるのなら打っておこうか、と思う人もいるだろう。
うーん、必要かな?まぁ気になる人は打つんだろうな…くらいに思っていたら、別の病気のパターンでやっぱりお注射推進のCMが流れて来た。
そう言えば帯状疱疹の前にも何かあったなぁ…。
うーん、必要かな?

必要かな?
は、未来のことなので何とも言えない。
その病気に罹るかどうかなんて分からない。
そりゃ「備えあれば憂いなし」
備えで片っ端からお注射打つか〜。
そうなるとキリがないのである。

転職の話も同じ。
キリがないのである。
キリがないことを盛んに煽るCMなのである。

毎日毎日同じCMに耳を侵されながら、ふと転職しようかなって気になってしまうのでは、優しいことを言われてふわっと入信してしまう宗教となんら変わらない。

危ないですよ、と言われてふわっと入信してしまう宗教となんら変わらないのである。

そもそも繰り返し流すことで洗脳し、購買意欲を唆るのがCMの役目であろう。朝の時間帯なら仕事の準備をしている時間帯、そこで転職を促すのは的確なマーケティングあってのこと。予防接種とて身体のことが気になり出す世代が見ていることを考慮してのものだろう。

今に始まったことではないのだが、お菓子や洗剤のような生活に密着したものを買わせようとしていた時代とは少し違う。

今は自分への評価を買い、健康を買い、安心を買い、最後は博打でお金を使おう。

見ている時間帯が悪いのかもしれない(笑)


CMというのは業績の良さと切り離せないだけに、端的に世相を映し出す。
ビッグモーターのCMもよく見かけたけれど、儲かっていたんだろうなぁ。その一方で自動車メーカーの新モデルのCMは少なくなって来た気もする。菓子類のCMが少なくなり、お手軽調理系は多く見かける。

時代の流れがよく判るという意味では大変興味深いものでもあるが、CMが世の中の流れを生み出しているとしたら、それはそれでちょっと怖い。

子供の頃に見たCMをYouTubeなどで見かけることがあるが、へたなテレビ番組より余程懐かしさが込み上げる。それだけ時代に寄り添い生活に密着していたということだ。踊らされることなく、適度な距離感で寄り添いたい相手である。

昭和の時代には数多くのヒット曲がCMから生まれた。


唇より熱く君を語れ
Hey! Lady
不思議なピーチパイ
燃えろいい女
HERO(ヒーローになる時、それは今)
いい日旅立ち
季節の中で
時間よ止まれ
い・け・な・いルージュマジック
異邦人
SWEET MEMORYS
クリスマスイブ

これもまた、キリがない。