ビジネスアイディア小説ショート・ショート『KAWAIIデリバリー』
好みの異性をスマホ画面から選べば、
その子がお弁当を届けてくれるサービスがあるらしい。
昼休みに食べる弁当なんて、
そこそこの美味しさで、腹が満たせりゃ十分だ。
それなら、
可愛い子が、とびっきりの笑顔を浮かべながら到着して、
弁当をバッグから取り出す間、二言三言たわいもない会話ができて
「午後のお仕事も頑張ってくださいね♥」
なんて言ってくれりゃ、
なによりだ。
コンビニで買うより高いのは当然だけど、
週に一回くらい、
そういう贅沢ってもんをしてもバチは当たらないってもんだろう。
てことで、
給料日の今日、さっそく「KAWAIIデリバリー」アプリを使ってみることにした。
おお、
なかなかのかわいい子揃いじゃないか。
これは迷うな・・・
よし、この子に決めた!
弁当は洋風、和風、中華、イタリアン、カレーの五種類から選び…
おっと、好みの味付けも選べるのか。
ピリ辛がいいかな。
あとは、受け取り場所とクレジットカードを登録して、
申し込み完了!っと
これで、12:30に、あの娘がビルの1階に来てくれるのか…
昼休みがこんなに待ち遠しいのは久しぶりだな。
仕事もはかどるってもんだ。
昼休みの始まる音楽が流れるやいなや席を立ち、
エレベーターで一階に急ぐ。
ロビーに待つ人たちの中に…
いた! あの制服だ!
はやる気持ちを抑えつつ向かう。
余裕のない男はモテないからな。
「KAWAIIデリバリーの方ですよね?」
そう声をかけると振り返った。
あれ・・・
雰囲気違うな…
たしかに写真のあの娘だけど、、、
とびっきりの笑顔は浮かんでない。
弁当をバッグから取り出す間は無言。
「午後のお仕事も頑張って」
なんて言葉は当然なく、すばやく去っていった。
オレは弁当を手に立ち尽くすしかなかった。。。
フロアに戻り、弁当を頬張る。
なんだか味気ないな。。
もう二度と使わないぞ、あんなアプリ。
んん? これ、全然ピリ辛じゃないじゃないか!
むしろマイルドだ。
女の子の態度も、味も、期待と違うとなれば、
クレームをつけるべきだろう。
オレはスマホを取り出し、アプリを開く。
そこで気づいた。
オレが「ピリ辛」を選択していたのは、味じゃなくて、
配送員の態度
だったのだ。
選択肢をもう一度見てみると、
「ツンデレ」「萌え萌え」「優等生風」「妹風」なんてのもある。
頬がゆるむ。
ディナータイムも使えたりするのかな?
このアプリをもっと知る必要がありそうだ・・・
完
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