大人の読書感想文:両利きの組織を作る
雨の日の読書感想文まつり、第二弾。
今度はオライリー教授が提唱している「両利きの経営」についての実在企業での実施例を考察している、この本。「両利きの組織を作る」
早稲田の入山先生がよく話している「知の探索」「知の深化」ですが、その大本になっているのは、オライリー先生のいう「両利きの経営」が元になっています。ただ、提唱者のオライリー先生が言いたかったのは、経営論ではなく、組織論だったようです。
経営的に「両利き」になったとしても、実際に行動するためには、それを「組織」に落とし込まないといけない。という目線で語っており、頭でっかちのアカデミック(失礼!)かと思ったら、結構、現場の実情に合わせた考察がされているな〜と感じました。
また、この書籍で一番面白いのは、「AGC」という実在かつ現在進行系で組織変革を進めている企業について、赤裸々にその内情を綴っていることですね。(とはいえ、成功事例の部分にフィーチャーしているので、あたりまえですが、闇の部分にはスポットライトはあたっていませんよ。)
この書籍の中で面白かったのは「本当のイノベーションは出島では生まれない」としている部分です。新規事業系のお話でよく出てくるのは「出島」方式ですが、AGCの実例を見る限りは、出島方式では、小さな事業として立ち上げられるかもしれないが、その後にAGCという企業で事業化するときのハードルがあがってしまうと考えている点。
AGCでは、事業開発するときに最初から、開発部門は新規性について、事業部門は量産化について、それぞれの分野の専門家がそれぞれのフェーズで必要な事を考えているそうです。まさに「事業のアジャイル開発」が行われている感じですね。
これが出島方式だと、おそらくスモールスタートで事業化できたとしても、本業の既存事業部とのシナジーは少なく、しかもカルチャーが合わず、結局スピンアウトまたは事業売却、みたいな感じになっちゃうんでしょうね。
と、AGCべた褒めの内容なんですが、私には非常に引っかかった部分があります。オライリー先生は色々な企業をリサーチし、成長を継続している企業の共通項として「両利きの経営」という形で抽象化しているんだと思うんです。(それが経営を学問にしている人の本質でしょうが)
でも、実際にはAGCのようなリアルな企業が四苦八苦しながら、自社に属する個人個人の性格に合わせて、色々チャレンジした結果の組織がたまたま当たったから結果が出たんだと思うんです。
なので、経営や組織運営について「コレが正解!」というわけでなく、自社がなりたい姿を実現するのに、良い武器は何か?ということで、AGCの手法の真似られる部分を真似る。だと思います。
個人個人がパーソナリティがあるように、その個人の集まりである企業も異なるはずですからね。目的と手段を履き違えないことを前提にして、こちらの書籍を読んでほしいな〜、と思います。
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