大人の読書感想文〜職場で傷つく〜
今回も読書感想文です。
今回読んだ本は、能力の生きづらさをほぐす、働くということ、と連続して出版している勅使川原さんの三冊目です。
いつものように原田個人の感想文であり、概要や内容には触れておりません。そこはご了承下さい。
概要が知りたい方は、著者がインタビューされている他の記事や音声メディアなどを参考にして下さい。
本書は、勅使川原さんの専門分野である「組織開発」の経験に基づいて書かれたものです。組織を離れて個人で働く私にとっても、多くの学びがありました。
組織で働く中で、傷ついた経験がない人はいるでしょうか?私の経験上、程度の差はあれ、誰もが傷ついた経験を持っていると思います。
ビジネス書では、「できるリーダーは〇〇をする」「心理的安全性が大事」といった内容がよく書かれています。しかし、実際の現場はそんなに単純でしょうか?
組織は個人と個人の関係性で成り立っています。だからこそ、絶対的な正解はなく、ケースバイケースで対応は異なるはずです。人間の個性や感情は一人一人違います。異なる個人が集まった組織は、無限の組み合わせがあると言えるでしょう。
異なる個人が集まるからこそ、お互いの自我がぶつかり、合わない部分が出てきます。それを無理に合わせれば組織は安定しますが、個人には大きな負担がかかります。
この問題に対処するには、ビジネス書に書かれた方法だけでは不十分だと、私は思うんです。
現場を見て、組織の全員と対話を重ね、個人に合わせた対応をするしかありません。しかし、この面倒な「個人に合わせた対話」をする余裕がないからこそ、ビジネス書が売れるのでしょうね。
本書を読んでも、組織と個人が傷つかない方法は書かれていません。しかし、傷つきから回復し、次に進むためのヒントはたくさん詰まっている!と私は感じました。
個人の性格が異なるように、組織の風土もケースバイケースで全く違います。ならば、その違いや課題を許容し、完璧を求めずに、昨日より今日、今日より明日が組織と個人にとってより良くなるように、コツコツと努力していくことが大切なのでしょう。
効率化に慣れた現代人にとって、すぐに解決しない課題はモヤモヤするかもしれません。しかし、このモヤモヤを許容しつつ、前を向くことが、遅効性ではあるものの、組織への処方箋になるのではないでしょうか。
もちろん、傷つくことを恐れずに全力で動くマッチョな組織があっても良いでしょう。しかし、同時に、傷つくことで優しくなれる組織があっても良いはずです。
私自身、サラリーマン時代はマッチョな部門長で、メンバーの傷つきに対応できていなかったかもしれません。本書を読みながら、課題に対して焦って解決策を探すのではなく、傷ついている部分を認識し、その痛みがわかるように努力し続けようと心に誓いました。
この書籍、組織に関わる人には是非とも読んでほしい一冊です。
そして、個人の傷つきが、組織の致命傷にならないよう、傷が癒えやすい社会になって行くことを願います。