私の中の幽霊
「自分がされていることが『いじめ』だなんて思われたくない、という気持ちがどうしてもあるから、『いじめ』を自覚してしまった途端、その屈辱に耐えられなくなる。」
わかる、と思った。
決して私はいじめられた訳じゃない、って思って生きている。今も。
そう思っている割には、教室にいたくないと保健室の先生に泣きついたし、学校に行きたくないと母に泣きついたけど。
小学生時代の私を思い返すと、私は【早穂とゆかり】の早穂みたいに、悪気がないいじめをしていたのかもしれない。いや、そう思うってことは少なからず人を傷つけた自覚がある。自分がやったことが自分に返ってきたんだって思う。そうやって肯定して仕方ないとなかったことにしてきた、噛み合わなかった過去。
そんな過去にたまに還る。あんなことがあったからこんな自分になってしまったんだと。
私の心にも、あなたの心にも、幽霊が棲んでいるはずだ。それだけではなく、私やあなたがかつて関わってきた誰かの心にもそういう幽霊が棲んでいるはずだ。
私の中の幽霊は確実にこれだ。成仏されることはきっとこの先ない。一緒に生きていくしかないのだ。でもそれでいい。あの頃自分がしてきたこと、忘れずに生きていかなければならないのだ。
この本の中に出てくる人達は誰か救われたのだろうか。
正直、私は背筋が凍るようなゾッとした気持ちになった。
同時に胸が痛くなった。登場人物と同じように胃がキリキリした。気持ちが分かるような分からないような、分かりたくないような。
せめて、誰かにも自分自身にもこれから新たな幽霊を作らずに生きていきたい。
【噛み合わない会話と、ある過去について】