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【ダイレクターズ】『箱男』【HOME】

【ダイレクターズ】
六本木 蔦屋書店 WATCH PLANがお送りする日本映画紹介プログラム。
2024年に公開される日本映画の中から、映画監督という切り口で厳選したオススメ作品を紹介していきます。


ダイレクターズ第十三弾は、8/23㈮公開の石井岳龍監督『箱男』です。

(C)2024 The Box Man Film Partners

『箱男』

2024 | 監督:石井岳龍

2024/8/23(金)より
全国公開

オフィシャルサイト

念願の映画化

今年2024年に生誕100周年を迎えた安部公房の原作小説「箱男」は様々なクリエイターに影響を与えてきた作品です。
有名なところだと、ゲームデザイナーの小島秀夫さんは人気ゲーム「メタルギア」シリーズでオマージュを捧げております。
他にもバラエティ番組「進ぬ!電波少年」では“電波少年的箱男”という企画で引用されたこともあります。
難解な小説ではありますが、その精神を独自に解釈したモノやビジュアルのインパクトを模倣したモノまで影響下にある作品は数えればきりがないほどです。

石井岳龍監督による映画化には、既に色々なところで語られてきたように20年以上に及ぶ因縁があります。
撮影予定地であったドイツの地で、クランクイン直前に制作中止が決まるという悲劇に見舞われました。
それから27年の月日を経て、遂に完成した作品です。

パンクな映画監督

石井監督は、石井聰亙名義で自主制作映画『高校大パニック』を発表し注目を集めました。
その後、大学在学中に『狂い咲きサンダーロード』をインディペンデントな体制で作り上げ、カルト的人気を博します。
パンキッシュな作風で国内外から高い評価を受けますが、80年代後半から長編映画から離れている時期もありました。
90年代中頃に復帰を果たしましたが、実は最初に箱男が持ち上がっていたのはこの頃でした。
箱男の企画が頓挫した後、当時の最新鋭のVEXを用いて弁慶と牛若丸の物語を描いた『五条霊戦記 GOJOE』という大作を発表します。
奇しくもこちらには今回の『箱男』に出演している永瀬正敏さんと浅野忠信さんが主演しています。
この時代の日本映画を代表する俳優だったお二人との共闘は『ELECTRIC DRAGON 80000V』『DEAD END RUN』と続きました。
このあたりから実験的なアプローチも目立ち始めます。
大学で教鞭をとるなどして、また長編映画監督としては潜伏期間に入りますが、2010年に突如、現在の石井岳龍への改名を発表して驚かせました。
近年は様々な規模の作品をコンスタントに発表しており、円熟期に差し掛かっていると言えるかもしれません。

生前の安部公房からリクエストとして「箱男をエンタメにしてくれ」と言われたという逸話があります。
もちろん映画化によって、万人に向けた分かりやすい作品になったわけではありませんが、石井監督というフィルターを通した解釈によって安部公房を理解するという体験が味わえます。
さらに、作品内でも語られている「箱男はこちらから世間を一方的に見る」という行為は、まさに映画鑑賞そのものです。
これは間違いなく石井監督も映画化にあたって重ね合わせた部分ではないかと思います。
より多層になった『箱男』を鑑賞したあなたも、すでに箱男になっているかもしれません。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

壁男
2006 | 監督:早川渉

諸星大二郎原作の短編マンガを映画化した作品です。
タイトルの類似性だけでなく、覗く・覗かれるという関係性を掘り下げたテーマという意味でも近さを感じます。
そして、この“壁男”という存在を意識することで、生活に影響が出るという描写も箱男に通じるもので、意識下に働きかける心理学的アプローチのシンクロニシティとみることができるかもしれません。

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