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バゲットで作る自己肯定感(後編)

前編はこちら

ピザパン作りは楽しみ始められた頃、バゲット作りの計画が着々と始まる。彼の頭の中は、常にわたしの一歩も百歩も先を行っていて、追いつくことにやっとなのです。今までは二人の違いが個性であり、どちらがどちらかに合わせる必要はないと思っていました。

でも追いつけないわたしに歩幅を合わせていたのは、彼だったのかもしれません。

バゲット作りはややこしいです。でも、何回もやれば感覚がついてきます。わたしのように自尊心が高くはなく、すぐ諦めかける人でも続けること、やったことをメモして置いて次回少し変えてみることで、なんか少しずつだけどできてるかもと思えてきます。

一度目で失敗するのはセンスがないわけではなく、ただやり方が悪かっただけ、こんなことに気がついてきたのが恥ずかしながらこの歳になってきてからです。

パンの種類やレシピによっては、水の種類や温度にも指定があります。そこまでしなければ、美味しいバゲットを作れないなんて!と思った時もありました。

でも、一つ一つの工程でコツを思い出しながら作業をするのは楽しいです。 
 
・ボウルの中の水にドライイーストを浮かべ、泡立て器でしっかり混ぜること。
・小麦粉は適当にバーっと入れて、木ベラやカードでざざっと混ぜてから、カードで切りながら水が染み込むイメージをしています。
・パンと言えば、手の平の分厚い所で押しながらこねまくるイメージでしたが、バゲットでは外側を引っ張り中央にたたむ。これだけで、きれいに生地がまとまってきます。

こんな発見を見つけながら、パン作りへの認識が変化してきました。

本の中には専門用語が頻出します。オートリーズ、ベンチタイム、発酵、名前が違ってややこしいな、複雑だなと思っていましたが、要は全部休ませる、放置する工程です。理解した後は、わかりやすい名前も入門者レベルには完全なる謎ですね。

こんなに休ませて、なんの意味があるんだろう?とこれまた初心者な疑問が湧きまくっていました。オートリーズは、木ベラなどで水と小麦粉が混ざったと思っても、休ませることで小麦粉に水が行き渡るようです。なので、休ませた後の生地はしっとりしているように見えるはずです。すでにドライイーストが入っている場合は、そちらも時間とともに反応しているんだと思います。

小麦粉も色々種類があります。基本バゲットなどのパンには、強力粉を使います。正直なにが違うか全然知りませんでした。知ろうともしてきませんでした。

強力粉は、薄力粉に比べてタンパク質が多く含まれていて多ければ多いほどグルテンがつくられます。グルテンが多いほど、弾力が出てパンらしくなるイメージだと思います。逆に薄力粉は、サクッとしたクッキーやふわふわパンケーキなどに使われますね。

強力粉一つ取っても何十種類もあり、作りたいバゲットによって使い分けます。わたしはキタノカオリと、はるゆたかブランドを主に使っています。

ここまででかなりの事を学びました。知識が少しずつ増えると、それだけ出来ることが増えてわくわくしてきます。いままでは、お店を見つけてはそこの商品を買って、あれ美味しかったね!とか値段の割に普通だったね!とか、評価する側でした。作ってみると、仕組みもわかるし、家庭ではなかなか技術や設備の面で作るのは大変なものもわかってきます。

バゲット作りで一番苦戦したのは成形です。一次発酵という休ませる工程が終わると、生地にある程度気泡が入り膨らんだ状態になっています。その気泡をある程度保ちつつ、赤ちゃんを扱うように形を整えていく必要があります。

YouTubeでイメトレは何度もしたのですが、いざ
やってみると全然上手くいきません。1/3畳む、反対にまた同じように畳む。なんでそんなことをしているのか、という疑問が浮かびながら、手際が遅くて生地が弛んでどこまで済ませたかわからなくなり、パニック状態になりました。

材料を混ぜてから、休ませる工程を何度もやった、この苦労を失敗させたくないという不安で打ちの目されそうになります。

とにかく、本と動画を頭の中に浮かべ、それっぽく仕上げました。一度目は失敗してなんぼ、そう思うしかなかったし、あわよくばビギナーズラックってこともあるし、前向きに考えました。

その後オーブンの予熱をしながら、バゲットなら切り込みを入れるクープの時がきました。クープ用のナイフを、恐る恐るバゲットの生地に近づけてイメージを湧かせました。スーーーーっと軽やかに。

ナイフが生地に触ると、生地がぐにゅーーーの引っ張られバゲットが変形していきます。
!!!!!
意図した軽やかさを出すことは出来ず、力を入れすぎてしまったと思いました。自信が底をついて、泣きべそを書きながら世界一ヘタクソなクープを3本入れました。

オーブンはハイブリッド機能で10分、普通オーブンで10分弱焼きました。焼いてみると案外美味しそうな見た目で驚きました。こんがりきつね色、なんとか縦方向に伸びています。心の中は喜びでいっぱい、早く中が見たい、中が見たい、それだけでした。

手で持てるくらい完全に冷めるのを待って、バゲットの真ん中を切りました。断面を見てみるとバゲットの底から直径3cmくらいの大きな空洞が!なんだこれは、生地はどこへ消えたの、どういうこと、頭の中はハテナだらけです。

購入した本にの失敗例に近いものはなく、グーグルで調べてもあまり似た失敗例は見られませんでした。実はその後二度に渡り同じ空洞ができてしまいました。正直なにが悪いのかはっきりわからなくて、かなり落ち込みましたが、自分なりに悪かったところを考えてみると成形の手際の悪さしか考えられませんでした。あ、あとは発酵不足も多少あったかもしれません。

その週一でバゲット作りを繰り返した結果、成形は少しずつ安定して手際も良くなり、大きな空洞もないバゲットが作れるようになりました。

最後までお読みいただきありがとうございます。また、次のお話を書いたらお願いします。


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