サムイ島のスコール明けは、 優しい香りがした
「夏らしいことなんかした?」
そんな会話をよくする。ちなみに僕は「夏派」でも「冬派」でもない。
「夏らしいこと」ってなにかなと考えた時に、ふと大学生時代に友達と行ったサムイ島のことを思い出した。
大学時代の同じ学部学科で僕が2年目にニューヨークに行った際、彼はバンクーバーに留学に行き、それ以外の期間は本当に3日に1日は一緒に飲んでいた「盟友」のようなやつだ。
卒業旅行は綺麗な海でチルしたいという単純な理由で2人でタイのサムイ島に決めた。研究室で本当に適当に勢いで決めたと思う。
サムイ島のビーチは本当に綺麗だった。少し蒸し暑いくらいで、今はわからないが人も少なく。
島にはいくつかの寺院が点在してて、僕らは原付バイクを借りて回ることにした。
半日で一周できるくらいサムイ島はコンパクトで、道はほとんど海沿いだった。
ちょっと変わったかたちの大きな仏像を見ては「すごいね」と話しながら、次の寺院に向かうことを繰り返していた。
そんな中、雨がぽつりと降り出した。と思えばあっという間に激しい雨が打ちつけてきた。
これがスコールか!と走れないレベルの大雨に僕らは近くのコンビニのようなお店の前で雨宿りをすることにした。
少しすると、すぐに雨は弱くなった。雨宿りをしていた他の地元らしき人も皆一緒に走り出した。
ただ出ようとしたタイミングで近くの大きめの木の枝が折れていく道を塞いでしまった。危なかったねといったように友人と目を合わせたあと、降りて枝をどかそうとした。
まだ小雨が残っていた。
僕らがバイクからおりようとすると同時に、現地の若者らしき青年が、その枝をあげ、どうぞと顔を進行方向に振った。彼は笑顔だった。
僕らは「コップンカーッ」と言って通りすぎ、ホテルに戻った。
ラウンジで、レモン水?らしきものを飲みながら休んだ。ふとさっきの青年の笑顔が浮かんだ。
タイは微笑みの国と呼ばれている。タイの人々がなぜ笑みをよく浮かべるのか、その理由は憶測も含め様々な説があるが、微笑まれて嬉しく無い人などいないはずだ。
微笑むということの裏側にはきっと必ず優しい気持ちがある。その日、そう素直に思えた。
雨が止んですぐ近くのビーチに出てみた。視覚では虹の綺麗さを感じ、肌では少し涼しい風を感じ、香りはなんとも表現が難しい、でも心地良い、優しい香りだった。