2022.6.29.「資本論」に関する記事(之哲)の注9

ロシア革命の指導者 レーニンの「国家と革命」(*7マルクスエンゲルスの著書からの膨大な数の引用によって成り立っています。

数えてみると、エンゲルスからの引用およそ 247行、マルクスからの引用およそ 138行、共著からの引用およそ 12行でした。日本語の翻訳から私が手で数えたのですから、正確な比率とは云えませんが、それにしてもエンゲルスからの引用が随分と多いように思います。
マルクスの文章は、それを補足するために用いられているように私には思えます。マルクスとエンゲルスを別個の思想家と捉えると、マルクス-レーニン主義というよりも、エンゲルス-レーニン主義の方がふさわしい呼び名に思えます。

「国家と革命」の骨子であるプロレタリアートによる権力の奪取・国有化・国家の止揚と死滅は、「国家と革命」で引用されているエンゲルスの「反デューリング論」の中に示されています。多岐にわたる「反デューリング論」をもとに科学的社会主義についてまとめた「空想から科学へ-社会主義の発展-(*8の次のような言葉 (反デューリング論にも載っている)は、レーニンの「国家と革命」が依拠した思想を端的に表していると思います。

プロレタリアートは国家権力を掌握して、生産手段を、まず国有に転化させる。だが、それと共に、プロレタリアートは、プロレタリアートとしての自己を廃棄※し、そしてそうすることによって、全ての階級差別と階級対立とを廃棄し、それとともにまた国家としての国家を廃棄する。

「空想から科学へ-社会主義の発展-」水田洋訳 講談社(*8

 上記の引用中の「廃棄」は、「ワイド版世界の大思想エンゲルス」所収「空想より科学への社会主義の発展」(川口武彦訳)(*9では「止揚」と訳されています。


もはや抑圧しておくべき社会階級がなくなれば、そして、階級支配とともに、これまでの生産の無政府状態にもとづく個体生存のための闘争とともに、そこからでてくる衝突と乱暴もまた、除去されるならば、ひとつの特別の抑圧権力すなわち国家を必要とした、抑圧すべきものは、もはや存在しないのである。

「空想から科学へ-社会主義の発展-」水田洋訳 講談社(*8

国家は、「廃止」されるのではなく、それは死滅するのだ。

「空想から科学へ-社会主義の発展-」水田洋訳 講談社(*8

とはいえ、エンゲルスとレーニンの思想も同じものではありません。レーニンは自身の暴力革命の思想を述べるために、エンゲルスとマルクスを彼流に解釈したといえます。

「国家と革命」の中の「資本論」からと思われる言葉は、「収奪者の収奪」の一言のみです。

「国家と革命」レーニン 宇高基輔訳 岩波書店 1957.11.25.1刷発行、1992.12.5. 40刷発行
原書 1917年 "ГOCYДAPCTBO  И  PEBOЛЮЦИЯ" /  B. И.Лeнин


「空想から科学へ-社会主義の発展-」エンゲルス 水田洋 講談社(電子書籍)
底本:講談社文庫 1974.9.発行
原典: Die Entwicklung des Sozialismus von der Utopie zur WissenschaftFriedrich Engels

「ワイド版 世界の大思想Ⅲ-05 エンゲルス 社会・哲学論集」 河出書房新社 2013.9.30.発行(電子書籍)訳者代表 岡崎次郎
底本:「ワイド版 世界の大思想Ⅲ-05 エンゲルス 社会・哲学論集」  2005.5.10.発行
所収「空想より科学への社会主義の発展」(川口武彦訳)
原典: Die Entwicklung des Sozialismus von der Utopie zur WissenschaftFriedrich Engels

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