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踏んだり蹴ったりラジバンダリ

ついてないな、と思っていた。

まず、こればかりは仕方がないのだが予定していた他県への地方滞在は2件とも中止になり、面倒だなと思いながらも、ワクワクいそいそとバッグに詰め込んだ荷物をほどかなくてはいけないし、
(いつもながら詰め込んだのは夫なので、私は「面倒だなと思いながらも、ワクワク」までしか担当していないのだが)

次に、夕食後の雑談から怒涛の夫婦喧嘩に発展し、大喧嘩の末に夫は出ていきお金は飛んでいくし、
(顔を合わせたくないと言い放ち、持ってけドロボーとばかりになけなしのお金をキッチンに置き捨てたものの、朝起きて本当に元・我が財産とともに夫がドロンしていることに気付いた時は久しぶりに首と指の節を鳴らした。
どちらかが出ていく際は家に残る方が最寄りのビジネスホテル代+食費を支払うルールになっているのだが、これを機に撤廃を考えたい)

さらには、義母から送られてきた正月の集合写真の私は自分の髪の毛先が口に入ってることも気づかずに半目でニヤついているし、

まさに踏んだり蹴ったりラジバンダリだ。

(普段からこんな懐かしい言葉を乱用しているわけではないが、この言葉が自然と湧いて出てくるほどなんかアレだったのだ)

そんな時に、毎回タイミングよく現れて我々家族を救ってくれるのは姉夫婦だ。

「美味しいロールケーキと紅茶があるんだけど、家で一緒にお茶をしない?」

そんななんとも魅力的な誘いで、あっという間に我ら家族全員を暖かなリビングに着席させて静かに微笑ませ、我ら家族全員のティーカップを持つ手の小指を立たせてしまうのだ。

そんなこんなでロールケーキを食べてお茶もすすったことだし、ポッカリと予定の空いたこの数日をどうするか考えることにした。

本来なら現地の方に会って、いつもと違う場所で仕事をして、夜は焚き火などをしながら物憂げな表情を浮かべたりする予定だったことを考えるとしょんぼりはするのだが、いつも通り家で仕事をするしかないだろう。
どうするもこうするもないのだ。
いつもより少し贅沢なご飯でも食べようか。

そんな風に考えていると、夫がいそいそとおにぎりを作り始めた。

「平日だしさ、おにぎりとパソコン持って近場の人が少ないところでピクニックと仕事しようよ」

この一言で、場所もちゃんと決めずに全員で車に乗り込み、なんとなく成田方面へ向かうことになった。

屋外でまとまった時間集中して仕事をする方法を、まだ私は見出せていない。
ある程度の仕事は行きの車の中で終わらせて、屋外では今まとめている記事の見直しや企画のアイディア出しをすることに決めた。

成田山公園へ到着する。
ほぼ貸切状態だ。

気持ちいいよね

子どもたちはとにかく走るし、私もこの清々しい空気の中で頭や心がスッキリしてきているのか、隙あらば鼻息荒くPCを広げたくなる。

走る走る。これ以外の写真はブレブレだった。
鴨がいっぱいいた


が、先程までこの成田山公園の清々しさに圧倒されてカラスの鳴き声までをも「綺麗な歌声だね」
などと言っていた子どもたちも、
空腹のせいか「やっぱりすごくうるさいね」などと言い始めたのでお昼にすることにした。

りんごを家に忘れた!
もぐもぐ

やはり美味しいし、来てよかった

さて、また散策を始める。

穴があった
とにかくカコーンみたいな感じだ

奥に進めば進むほどマイナスイオンブシャーーみたいなスポットがあり(マイナスイオンがすごい感じだぞという感情はどう表現するんですか)、
何故か急にマイナスイオンの虜になってそこかしこで仕事をしたくなる私。

是が非でも癒されたいのだろう。

今日ここ(滝)で誰とも出くわさなかったことは、なかなかの幸運だと思う

滝のドドドドという音で何が何だか分からなくなるのと、ちょっとした仙人のように見えてしまうという理由から滝前での作業は難しい。
ただ、私の中の何かは満足した。

椅子と机があるとやはりいい。この広い背中の向こうから、サラサラというせせらぎが聞こえる

せせらぎは少しトイレに行きたくなるけれど心地よくてありだ。

せっかくなので成田山新勝寺へお参りに。

何年かぶりにおみくじも引く。
私と子どもたちは大吉で、夫は吉。

嬉しい。30歳で凶を引いた以来のおみくじだ。
子どもも大吉

この結果にちょっと心がスッとしている自分に気づく。しつこくもまだ夫に怒っていたことを知る。

続いて、悪い箇所にあてると良いといわれている、香閣から立ちのぼる煙を互いに頭にかけるという罰当たりなバトルも発生した後、反省しつつ参拝し、帰路に。

参拝が終えた後、何故ここで?という場所で驚く程陽気になる夫
レトロなポストに興味津々な子どもたち

心地よい疲れで帰りの車の中ではすっかり子どもも私も眠ってしまった。

「着いたよ」という声で目が覚めたら、家ではなく旭市の海だった。
このまま帰ることを少し残念に思っていたから、素直に嬉しい。ありがとう。

まだ夕方なのにもうこんなに暗くて、こんなに寒くて、こんなに綺麗なのかと思った。

本当は今頃ここではない海辺で仕事をして、焚き火をしているはずだったな、なんて思いはもうなかった。
せっかくなのでワーケーションぽさを味わうために少しだけPCを開き、メールを2つ3つ返して閉じた。
寒くて笑えてきた。
目の前にある「希望の鐘」でも鳴らして帰るとしよう。

この姿勢は1番楽なのだが、やはり今日ここで誰とも出くわさなかったことはけっこうな幸運だと思う
あっという間に暗くなった
子どもたちが何度も鳴らす気持ちもわからんではない

行けなかった場所、できなかったことは残念な分後を引くが、やはり私はどこでもよかったのだ。

ついてなくなんかない。
私の目の前の景色が今こんなに綺麗だということ、子どもたちが楽しそうなこと、こんなに寒いけど、なんか楽しいと思っていることに集中したい。

旭市のスーパーで食材を買って、家に帰ってみんなで食べようと思う。

まだまだ模索中だけれど、日帰りのリモートワークもなかなかいい。
たまにはまたホッカイロを持ってサクッと行きたいと思う。

そして踏んだり蹴ったりラジバンダリは、やはり封印していきたいと思う。

おわり。

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