【5000字】広告宣伝面で今年の箱根駅伝を制した大学は?現役マーケターが解説
お正月の楽しみのひとつといえば、箱根駅伝ですね。
箱根連覇の青山学院大学か、3冠の駒澤大学か、2強対決と言われていましたが、結果は駒澤大学の優勝で幕を閉じました。
各大学で見せ場があり、語りたいことはたくさんあるのですが、このnoteでは、競技視点ではなく、広告効果視点で書いていきます。
箱根駅伝の広告宣伝効果
箱根駅伝のようなスポーツをビジネスで語るな、という主張もあり、もっともだと思います。
ただ、よく言われているように、各大学がこぞって箱根駅伝に力を入れるのには、高い広告宣伝効果があるからだと思います。
まず簡単に、箱根駅伝を取り巻く広告環境について記載します。
箱根駅伝は視聴率25%を超えるおばけコンテンツ
1月2日の往路、3日の復路を合わせてTVでの放送時間は約11時間。
この長時間放映で、世帯視聴率の平均は25%を超えます。
2022年の平均世帯視聴率No1ドラマの「DCU(TBS)」で、14.4%なので、箱根駅伝は、その2倍程度もあります。
この間に、
・ランナーのユニホーム
・運営関係者の専用ウェア
・応援者の旗
・画面上に映し出される大学名
・実況のアナウンス
など様々な方法で大学名を目にしたり、耳にしたりします。
特に上位争いに食い込むことで、より放送され目に入る時間も増えていきます。
そして、このように露出が増えると、大学側にも様々なメリットがあります。
メリット①志願者数のアップ
分かりやすい成果は、志願者数のアップです。
たとえば、2009年に「山の神」と言われた柏原選手が活躍し総合優勝を果たした東洋大学は、その年の志望者数は前年より1万人増えて6万9000人になったようです。
もちろん、ずべてが駅伝の影響ではないとは思いますが、受験料は1回35,000円程度なので、単純計算で1億~3億5,000万円ほどの収益が増えたことになります。
(参考:https://www.j-cast.com/2012/01/04118026.html?p=all)
メリット②スポンサーからの広告費の獲得
2021年の第97回大会から規定変更され、出場校のユニフォームに民間企業・自治体などのスポンサーロゴが掲出できるになりました。
そのため、企業とスポンサー契約をして、収益を得ることもできます。
2023年の第99回は、20大学中16大学がスポンサー契約契約を結んでいます。
たとえば、今回優勝した駒澤大学は、日能研とスポンサー契約を結んでいます。他にも青山学院大学は、妙高市と契約を結んでいます。毎年妙高市妙高市杉野沢地区で夏合宿を行っています。
このようにスポンサー契約を結ぶことで、練習費用・監督などのスタッフの人件費なども確保できます。上位に入ると放映時間が増えて広告効果も高まるため、上位を目指す具体的なメリットにもなるのです。
Twitterトレンドで見る注目大学・ワード
前置きがとても長くなってしまいましたが、ここから2023年の第99回箱根駅伝のトレンドについて、まず時系列を追って見ていきます。
※ツイートは、こちらのサイトを参照させて頂いています。
1/2 9時 1区”孤高の独走”学生連合に注目
まず今年の箱根駅伝の序盤の話題をかっさらったのは、学生連合で出た育英大学の新田颯選手でした。トレンドでも2位〜5位は、その関連ワードは続いています。
学生連合とは、箱根駅伝本戦に出られなかった大学から1名まで、タイム上位者で編成されるチームで、オープン参加(記録には残らない)という立ち位置になります。
その学生連合の新田選手が1区で、スタート直後から飛び出し、一時は他校に400メートルほどの差をつけました。
トレンドには「パンサラッサ」と大逃げを代名詞とする競走馬の名前も入るほどでした。
最終的にはトップでは渡せず、また渡せたとしても公式記録には残らないのですが、多くの方の記憶に残る走りになりました(ベタな表現ですみません…)
1/2 11時 2区・3区始まる。引き続き学生連合に注目
1区の”孤高の独走”の余韻も冷めない中で、2区・3区へと進んでいきます。トレンドには、2区の区間賞を獲得した、中央大の吉居大和選手の名前が入ってきています。
余談ですが、吉居選手の横で激走するヤマト運輸さんの配達員の方も話題になりました。
1/2 13時 圧巻のヴィンセント選手の走り
4区に入り、注目されたのは、東京国際大学のヴィンセント選手です。
毎年圧巻の走りをするヴィンセント選手ですが、4区で驚愕の8人抜きをし、区間新記録を樹立しました。
余談ですが、裏番組のテレビ東京で放映していた『ヤギと大悟』の名前も入っています。ヤギを連れた千鳥の大悟さんが色々旅みたいなのをする番組で、一瞬見たのですが、「箱根駅伝の裏でやっていて、この番組だれも見ていないでしょ」と言っていたのが面白かったです。
1/2 14時 往路終了
箱根駅伝の往路の放送が終了した14時。
トレンドでは、ヴィンセント選手の余韻と往路優勝の他に、山の妖精のワードが入っています。
往路最後の5区は、山を登っていくルートになり、登りに特化した選手が起用される場合が多いです。
過去には、順天堂大学の今井選手、東洋大学の柏原選手、青山学院大学の神野選手などが、「山の神」と呼ばれました。
毎年、どのような「山の神」が生まれるのか、と楽しみにしていたところで、今年生まれたのは「山の神」ではなく「山の妖精」でした。
中継した日本テレビが、城西大学の櫛部監督が山本選手に「おまえは山の神にならなくていい。おまえは『山の妖精』になろうぜ」と激励の言葉を贈ったことを紹介。山本選手は、見事区間新記録を樹立。
これらを受けて、「山の妖精」がトレンド入りしています。
1/3 9時 復路スタート
復路がスタートし、トレンドに箱根駅伝ワードが並び始めます。
ここからは、特に区間賞や優勝候補の大学の選手名などがトレンドに入ってきます。
ちなみに、「玉なし学院」というプレートを持った方が中継に映る珍事があり、トレンドに入っています。
1/3 12時 いよいよ終盤
復路も終盤に差し掛かった12時。
9区を走った青山学院大学の岸本選手が2年連続区間賞を獲得、トレンド入りしています。
1/3 14時 駒澤大学が総合優勝!
ついに総合優勝が駒澤大学に決まります。
トレンド上位は入っていませんが、引き続き「#箱根駅伝」はTOPに位置しています。また、箱根駅伝の優勝とは別のもう一つの争い「シード権」もトレンド入りしています。
特に注目を集めた大学の検索数は上がってるのか?
ここからは、特に注目を集めた大学で、検索数が上がっているのか、Googleトレンドで見ていきます。
直近1週間の検索数について、時間帯ごとに調べています。
駒澤大学
まずは総合優勝に輝いた「駒澤大学」です。
時間帯が見にくく申し訳ないですが、駅伝が放映されいる時間帯は、比較的たかくなっています。一番多いのはやはり優勝が決まったタイミングでした。
中央大学
次に惜しくも総合優勝には届かなかったものの優勝争いを繰り広げ、2位になった「中央大学」です。
2位でゴールしたものの、2日目の復路より、1日目の往路の方が検索数が多くなっています。
駒澤大学と中央大学の比較
駒澤大学と中央大学を比較すると下記になります。
※赤:駒澤大学、青:中央大学
こう比較すると、優勝と2位では、検索数の跳ね上がり具合が違ってくるのが分かります。
また、出場校の中でも、上位争いをすることで、検索数は多くなる傾向があります。
健闘されましたが19位・20位となった、国士舘大学・専修大学と比較すると、その検索数の違いがよく分かります。
※赤:駒澤大学、青:中央大学、黄:専修大学、緑:国士舘大学
箱根駅伝出場大学と、未出場大学の比較
ただ、未出場大学と比較した場合では、出場大学の検索数は高くなる傾向はあるようです。
専修大学・国士舘大学と、残念ながら予選会で後1歩届かずに出られなかった神奈川大学を比較してみます。
専修大学・国士舘大学ともに、神奈川大学より多くの時間帯で、検索数が多くなっています(復路は神奈川大学も多めになっていますが)
黄:専修大学、緑:国士舘大学、赤:神奈川大学
育英大学
往路序盤で話題を席巻した学生連合の新田選手。その所属大学である「育英大学」に大きな注目が集まりました。
育英大学は、2018年4月開校した比較的新しい大学で、運営は高校サッカー強豪校の前橋育英高校などと同じ「学校法人群馬育英学園」です。
新田選手の活躍でHPにアクセスが集中して一時開なる事態が起きていた程だったといいますが、実際に検索数などはどうなっているのでしょうか。
時間帯見にくいのですが、学生連合の新田選手が活躍した8時にピークを迎えています。
駒澤大学・中央大学と比較すると、その多さが顕著です。
※黄:育英大学、赤:駒澤大学、青:中央大学
この手のトレンドの特徴として、一時的に上がり、再度下がる傾向は出ていますが、「認知」という観点では、ものすごい広告効果があったと思います。
東京国際大学
4区で区間新記録を樹立したヴィンセント選手が所属する「東京国際大学」も大きな注目を集めました。
ただ、駒澤大学、中央大学と比較すると、やはりトレンド数的には若干劣ります。
※黄:東京国際大学、赤:駒澤大学、青:中央大学
城西大学
5区で区間新記録を樹立した”山の妖精”こと山本選手が所属する「城西大学」も見てみましょう。
こちらも、往路の終盤の5区の時間で検索数が多くなっています。
駒澤大学、中央大学と比較すると、5区での伸びの大きさが分かります。
復路の駒澤大学・往路の中央大学と同水準程度にまで、伸びている時間帯があります。
5区は毎年「●人抜き」などのドラマが生まれ、元々の注目度が高い要因もあり、そこで区間記録を更新した山本選手の所属する「城西大学」にもおこう注目が集まったのだと思います。
※黄:城西大学、赤:駒澤大学、青:中央大学
最後に
かなり駆け足で書いてしまいましたが、今年の箱根駅伝について広告宣伝効果の観点から振り返ってみました。
こうしてみると、総合優勝や、優勝はできずとも上位争いに入ることが注目を集める方法だと感じます。
本当はimp数などをもとに、広告予算の目安を出そうと思ったのですが、力尽きました、すみません…
私も中学高校の頃に陸上競技をしていました。専門は長距離ではなかったのですが、駅伝は好きでずっとみています。
箱根駅伝に限らずスポーツは私たちに大きな感動と勇気を与えてくれます(昨年のW杯の記憶も新しいです)
ただ、その運用費や練習費など大きな予算がかかるのも事実です。
(選手や大学側もそうですし、主催者側も)
広告効果という観点で、可能な限りビジネス的価値も生み出せていくことが、箱根駅伝の今後の発展につながっていくと思い(誰の目線で言っているんだという感じですが)、僭越ながら私もみていきたいと思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
※記載した見解は、すべてあくまで私の意見です、あくまで1人の人間の意見として参考程度のものとして、ご了承ください。