国名がついた3つの製本様式<その3.スイス装編> フランス・ドイツ・スイスがあるのに、イタリアがない?
これまで、国名シリーズとしてフランス装、ドイツ装に関して記事にしてきましたが、今回はこのシリーズの最終回「スイス装」です。
スイス装ってどんな製本?
まず、用語から。東京都製本工業組合1998年刊行の「製本用語辞典」で見てみます。
ちょっと難しい表現ですので、簡単に言いますと、本を開くと本体の片側だけが表紙についていて、背中が見えるようになっている製本です。
弊社ではスイス装と呼称するよりは、お客様が分かりやすいように「背開き製本」と呼ぶことが多いです。
その語源は分かりませんが、たぶん、スイスでよく見かけられた製本様式なのでしょうね。
並製でも上製でもOK
本体のつくりは、並製でも開きの良いコデックス装でも両方選べます。そして、外の表紙をクルミ式のハードカバータイプにすれば「背開き上製本(ハードカバーのスイス装)」になりますし、1枚モノの並製にすれば「背開き並製本」になります。
並製本のスイス装
これは、本体の裏側のみ5mmのノリ幅で付けた、スイス装の並製です。ほんのわずかな接着幅にすることで表紙内側の赤が目を引きますね。
表紙は背幅に合わせて筋を入れ、裏面にも開けやすいように筋を1本入れてあります。
こんな風にスイス装なら表紙の内側にもデザインを入れることができますね。
左右デュアルに開くスイス装
こちらは、ハードカバースタイルのスイス装です。この本の変わっているところ(凝っているところ)は、左右に冊子が向き合うように貼りつけられています。つまり、通常は本体の背中(=綴じ部)は内側を向いているのが当たり前なのですが、この本の場合は本体の背中が左右それぞれの外側に向いているのです。
そして、開くと左端から右端まで見開きがダブルにつながったように見え、ワイドな視覚効果を狙ったデザインになっています。
スイス装ですとこんなことも可能ですね。
LPレコード大の大型ハードカバースイス装
これは、弊社で製作した中で一番大きなハードカバースイス装です。
卒業アルバムですので現物はお見せできませんが、試作したダミーでご紹介します。30cm×30cmのコデックス装の本体を布クロス装のハードカバーに片面だけ糊付けし、くるんであります。
この装丁は、高校生のアルバム編集員さんと何度も話し合って決めていきました。高3で受験を控えているにも関わらず、この製作に奮闘した彼らには全く敬服です。(自主性を重んじる校風なので、先生が打ち合わせに加わることはありませんでした。本当にすごい!)
手の込んだ変わった製本大歓迎
今回で国名のついた製本様式のお話は終わりですが、どの様式も装丁で遊べる面白いスタイルであることは分かっていただけたと思います。
裏返せば、製本屋さん泣かせのつくりでもあるのですが、普通の製本ばかり続いている時など、「たまにはスイス装こないかなぁ」とか「フランス装しばらくやってないよなぁ」なんて考えている製本屋もいることはいるのです。それが私たち渡邉製本です。
印刷会社さん、デザイナーの皆さん、変わった製本のお声かけをお待ちしております。
▶もっと製本事例を見たいなら
▶こんな記事もnoteに書いてます
▶SNSで町工場の職人技など発信中
▶荒川区のふるさと納税返礼品になりました
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?