【論文の紹介】筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群当事者による作業の選択・継続に影響を与える要因
わたころメンバーの田島です。今回は、先日、『作業療法』という学術誌に発刊して頂きました論文の紹介をさせて頂きます。というのも、この論文の主人公は、慢性疲労症候群当事者であり、看護師として働いてきた女性の方で、まさに「わたころ」でご紹介したい当事者×支援者の方だからです。
仮にAさんとしますと、Aさんは大学生の時に、極度の疲労を経験しますが、慢性疲労症候群という診断は、他の可能性のある疾患がすべて当てはまらないことを証明するような診断なのですね。つまり、診断を受けたいと思ったら、生活に支障が生じるほどの疲労感とともに、他の疾患でないことの証明が得られなければならないため、Aさんは発症から10年もの期間を経た後、ようやく慢性疲労症候群の診断を得ることができました。それでも運がよくて、理解のない医師であれば、なかなかそうもいかないのだそうです。
この10年の間に、Aさんは、看護師として働いても、極度の疲労の症状で働けなくなってしまい、3度もの転職をしています。頑張れる限りの力で頑張り、徐々に症状は悪化し、しまいには、極度の疲労の症状でまったく働くことができなくなってしまいました。Aさんの症状に理解を持ち、働き方の配慮をしてくれる職場があったら、Aさんはここまで体調が悪化してしまうことはなかったかもしれません。
ほぼ寝たきりの状態で過ごすことになり、ようやく、慢性疲労症候群の診断を受けます。そして、障害年金を受けて生活をすることにもなりました。
Aさんは、今、同じ症状に苦しむ人のための相談事業をしたり、患者会活動を行ったり、ロボットを介在したカフェで、遠方から接客業を行い働いたりしています。同じ経験を持つ人の苦しみに寄り添い、自分が経験した苦しみと同じ苦しみを繰り返さないような環境や社会をつくろうと力を尽くしています。
私はAさんにお話しを伺うまで、恥ずかしながら、慢性疲労症候群の方の置かれた、いろいろな場面で理解や配慮の乏しい現状、それによって、症状を悪化させ、社会から孤立させられてしまっている当事者の皆さんが沢山いることに思い至りませんでした。この論文はAさんのお話から伺い知ることができたお一人の方の経験ですが、この論文を扉として、慢性疲労症候群という病やそれに苦しむ人、おかれた状況を知って頂き、味方として自分ができることを考えて頂く機会になれば、少しはお役に立ててるかなと思います。
(わたころメンバー:田島)
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