目標に向かって努力する人へ ~陥りやすい創作のスランプについて~
はじめに
長期間に渡る創作活動をしている時、大事なのはモチベーションの維持だと私は考えています。
ところが最近、何故かモチベーションを維持するのが難しくなっていることに気がつきました。
気晴らしに好きなゲームをしたり、本を読んだりして気分転換するのですが、どうしても長時間の再開ができない。作業を少しやったら手が止まってしまう。
以前は毎日のように取り組めていたのですが、それがいつの間にか出来なくなっていました。
今回は、色々自己分析をしたり、誰かに相談したりすることで、ようやくこの原因に気がつくことが出来ました。
そこで、同じような悩みで困っている人の助けになれればと思い、この文章をしたためています。
タイトルであえて"目標に向かって努力できる人"と書きましたが、今回のスランプの原因は性格に由来するもので、万人が陥るものではないと思っています。
一方で、性格に由来するものであるため、それが"当たり前"になってしまっていて、自分で気がつくことが非常に難しい問題でもあると思っています。
(実際私は気がつくまで、2カ月ほど悩んでいました)
そこで、以下に示す事柄に、部分的にでも当てはまる人は読んでみると良いと思います。あくまでも客観的に自分を照らし合わせてみてください。
・常に目標を設定して、継続して頑張ることが出来る。
・(短期・長期問わず)物事を集中して続けることが出来る。
・物事は忘れないうちに早めにやる。またはメモを取る。
・物事を観察し、改善すべき点を見つけることが出来る。
・物事を上達することが楽しいと思う。
いかがでしょうか?当てはまる部分があるようでしたら、続きへ参りましょう。
見えない創作の病
あなたが今やっている創作を始めた時、当たり前ですが素人だったと思います。
いかなる天才であったとしても、過去の偉人と呼ばれる天才達から受け継がれていた技法を始める前から知っているなんてことはありません。
少しずつ知識を蓄えて、上達していったことでしょう。
そして"上達する"というのは、大多数の人間にとって楽しいことだと思います。特に始めたばかりの時は、真っ白な紙にインクを垂らすように、グングン上達していくことができます。
問題は、すぐに上達する部分を通り過ぎた後です。
成長速度が鈍化し、ゆっくりとした歩みしか出来なくなった時、上達する楽しみは失われるか、より小さなものになってしまいます。そして面白くなくなって、創作活動が停滞してしまう。
これはよくあるスランプの形だと思います。
このスランプに対しては、いくつか対処法があると私は考えています。
一つは、外からインプットを得て、自分の作品に取り入れること。
『良いアウトプットには、沢山のインプットが必要だ』……どこかで聞いたようなフレーズで、如何にも良く言われていそうな気がしますね。
ただし、自らの作品の一部とするためにはどうしても時間がかかります。ですので、この方法は長期的にゆっくりと効果を発揮するものだと認識しています(実際のところはこれも上達の喜びに分類できそうだなと思いました)
もう一つは、他者に評価してもらうこと。
近年はSNSの発達により、顔も名前も知らない人に直接褒めてもらうことができます。まぁ心無い言葉も飛んでくることはありますが、それが嫌なら家族や友人に見せて感想を聞くでも良いと思います。
これは短期的に効果を発揮して、モチベーションの維持にはちょうど良い方法だと考えています。
このような方法で自分のモチベーションを保ちつつ、鈍化した成長と向き合っていく必要があると思うのですが、ある性格の人が陥りやすい罠があります。
さて、ここを読んでいる読者の方は多かれ少なかれ、"真面目な"性格をしているのではないでしょうか?
『いやいや、そんなことはない』と思っているかもしれませんが、先ほど「はじめに」の最後で書いたことに一つでも当てはまっているなら、十分真面目だと思います。
そんな真面目なあなたは、『誰かに作品を褒められた時、素直に喜べなかった経験』はありませんか?
例えば
「この作品のこの部分がとてもいいですね!」
と褒められた時。
言葉では
「ありがとうございます、嬉しいです」
と言っていても、内心
「そこは大したことしてないけど」とか
「たまたまそうなっただけなんだよな」
と思ったこと、ありませんか?
ここで、素直に喜べないこと……これが今回の記事でお伝えしたい創作のスランプであり、見えない病です。
『え?偶然褒められたことを喜べってこと?』って思うかもしれませんが、そうではありません。
ただ、認識がズレていることに気がついて欲しいのです。
もちろん、その褒められた部分は偶然の場合もあるかもしれません。
ですが、仮に偶然であっても「その作品の良さが、あなたが今まで積み重ねてきた努力の延長線にある」ということを、真面目なあなたは認識できていないのです。
創作を始めたころを思い出してください。
今ではもうスラスラと出来るようなことを、色々苦戦して、やっとの思いで体得して喜んでいませんでしたか?上達する喜び、ありましたよね?
真面目でストイックである人ほど、簡単に出来るようになったことに対して、"出来て当たり前"(=大したことではない)と思うようになります。
また、上達すればするほど、他者の作品と比較したりして、自分の作品に足りない何か……つまり課題を感じるようになります。
そうすると、上達する喜びは消え、やっていることは出来て当たり前のことばかり、そして現状の創作に対する課題だけが目に見えて残るようになります。
仮に課題がなかなか難題で、解決に時間のかかる問題だった時、誰に褒められても『まだまだだから』としか言えないですし、素直に喜べません。
これではモチベーションの沸きようがないですよね。
ですので、自己肯定感を高めて、モチベーションを維持するために大事なのは『今サラッとやっているテクニックに価値を感じること』です。
自分が初心者だったころを思い出して、今やっている作業を見つめ直すのも良いかもしれません。そうすると自分がいかに複雑なことを、実に当たり前にこなしていることに気が付けると思います。
ただし、"当たり前"になっているところを自分で気がつくのは難しいですし、それを褒めるというのもこれもまた難しいかもしれません。
その場合は他の人にお願いして、自分の作品の良いところ探しをしてもらうと良いでしょう。時折目から鱗が落ちるような意見を貰うこともあります。
(得てして、それらは偶然そうなった部分だったりします)
そして、探してもらった良い部分については、今まで積み重ねてきた努力の結果として、素直に受け取りましょう。
その良い部分が、大したことない当たり前のことと感じられるほどの努力をあなたはしてきたのですから。
おわりに
今回の話は創作だけに当てはまらずに、色々なことに通じている話かなと思っています。
学校の勉強などは期間があって、終わり(試験日)も決まっていることが多いですから、強制力があります。
一方で、趣味としての創作活動は自分が終わりにしなければ、いつまででも出来る、強制力のないものです。
そして長く緩く、持続できさえすれば、自分にとっての素敵な作品を沢山作り上げることができますし、もしかしたらその作品が誰かにとっての大切なものとなることもあると思います。
この記事でスランプを抜け出せた人が居れば幸いです。
読了ありがとうございました。
余談:アリとキリギリス
友達にこの話をした時に、アリとキリギリスの童話の話題が出てきました。
私は朧げにしか覚えていませんが、確かにアリは真面目で、自分達が冬に備えて働くことに何の疑問も抱いていなかったように思います。
日本人特有なのかは分かりませんが、一般的に"真面目"であることが美徳とされている側面があり、模範的に過ごすことが偉いと捉えられる傾向にある気がしますが、同時に自分を褒めたたえることはみっともないことのように思われている気がします。
ずっとその中で成長してきたからかは分かりませんが、今回のスランプに陥った時も、私は性格的な問題であると気がつくことがなかなかできませんでした。
色々と自己分析した中には
『もっと他者から評価を得る機会を増やしたほうが良いのではないか』とか
『作っている作品のインスピレーションが足りていないのではないか』とか
その果てには
『自分の中のこの創作に対する熱意が冷めつつあるのではないか』
といった漠然とした不安まで、偏見(バイアス)が掛かった内容になっていた気がします。
そんな中で知り合いに相談したところ
『やっぱり他の人に見てもらって、フィードバックを貰うのが大事』
と言われて、見てもらったことで元気が出たこと。
そしてその翌日に、自分の作ったもので、これじゃ全然駄目だなと思っていたものをじーっと観察していたところ、『あれ?意外といいじゃん?』と思えたことで、今回のスランプを抜け出せたように思えます。
アリのように模範的に頑張ることも大事ではありますが、こと創作においては時折自分が当たり前にやっていることの凄さを振り返り、肯定してあげるのも大事だなと思わさせられました。
(勿論キリギリスのように生きるのはどうかと思いますが、自己肯定感くらいは真似たほうが良いかもしれませんね)
余談:私の創作活動について
折角ですので、私がしている創作活動について紹介したいと思います。
私はVRChatというゲームの中で、ワールドを制作して投稿しています。
もうちょっと具体的に言うと、Unityというゲーム開発エンジンを使って、ゲームの中にゲームを作っています。……意味がわからないですよね?
VRChatは実に変なゲームで、ユーザーがコンテンツを作って投稿することが出来るのですが、そのコンテンツがワールドであり、まさに一つの世界になります。
現実に例えて言うなら、学校や職場、自宅などそれぞれがワールドです。ただし、陸続きではないので、ポータルと呼ばれるものを介して移動します。よって移動時間はほぼ0です。
VRChatで遊ぶ人は、自らのアバター(これも投稿できる)を身にまとい、他のユーザーによって作られたワールドを転々と移動して楽しむことができます。
どのように楽しむかは自由ですので、SNSのようなものだと思ってもらってもいいのですが、そこにアバターという肉体に相当するものがありますので、リアル寄りのエクササイズも可能です。
"VR"と付いていますが、ただのパソコンだけで遊ぶことができます。そしてプレイするだけなら無料です。
と、これ以上言うと長くなるので、あとは各自で調べてもらうことにして、私が今まで製作してきたものの写真を上げようと思います。
一枚絵のように見えるかもしれませんが、3Dのゲームですので、実際にこの中を歩き回ることができます。しかもその気になればVRで。
この創作活動の一番良いところは、アバターとはいえ直接人がやってきてくれるので、その場で言葉でフィードバックを貰える点です。
普通の芸術作品であれば、他の人から言葉でのフィードバックを貰うのに、実際にその場で見せないといけませんので、相手に来てもらうか、自分が然る場所に運ぶかしないといけませんよね?
VRChatは、パソコンとネット環境さえあれば、パソコンの前から一歩も動かずに相手に作品を見せることができます。それが見ず知らずの人であっても。
これは本当にモチベーションの維持が容易です。
移動時間がほぼ0なので、暇(ワールドでのんびり)している知り合いのところに行って、『ちょっと制作中のワールド見てくれませんか?』と言えば大抵了承してもらえます。
これが現実だと、『ちょっと自分の家まで来てくれない?』になりますが、そんな電話かかってきたら、よっぽど家が近くて知り合いじゃない限りはうーんってなりますよね?
というわけで創作するにしても非常にハードルが低いわけです。
ワールド製作自体の難易度は、求める内容によってピンキリです。超綺麗なお家が欲しいくらいだったら、お金(約3000~10000前後程度)で解決できたりします。
私はテクスチャ(絵)も作りますし、音楽も書きおろしますし、プログラミングもしますし、3Dモデリングもしますし、と今では完全に自作の総合格闘技状態になっています……が、極めるべきことが数多くある状態がとても面白く、かれこれ5年ほどこの創作趣味を続けています。
SNSには色んな趣味の人が居るように、VRChatにも色んな趣味の人が居て、趣味の沼が沢山形成されています。そういった同好の士を探し求めたり、新しい趣味を広げるのもVRChatの一つの楽しみ方だと思います。
もしモチベーションの上げ方に悩んでいたり、興味を惹かれるところがあったら是非遊びに来てください。