松明の火を手渡す人に
皆さんは、生きる理由について考えたことがありますか?
"何のために生まれ、何のために生きるのか"
職場に社内SNSがあるのですが、「死生観」についての話題があり、私も書いてみました。
こちらでも投稿したいと思います。
命の教科書
『獣の奏者』という小説をご存知でしょうか?
文化人類学者で大学教授でもある、作家の上橋菜穂子さんが書かれた作品です。10年ほど前に、NHKでのアニメ化もされました。
http://book-sp.kodansha.co.jp/topics/kemono/
小学生でアニメ版を観て、中学生で原作を読み、それ以来、作者の上橋さんは私にとって最も尊敬する憧れの作家です。
主人公のエリンという女性は、幼い頃に母を処刑され、見知らぬ土地に流れ着き、その後も波乱万丈の人生を歩みます。
放浪の民の血を受け継ぎ、心無い人から「魔が差した子」と陰口を叩かれながらも、飼い慣らすことを禁じられた聖なる獣と心を通わせたことで、政治の駒として監視付きの生涯を送る主人公。
読むたびに、生きることの意味を、何度も考えさせられます。
刹那を生きる
作中の彼女の台詞で、私が思わず号泣した言葉があります。
「生まれてきて、よかった」
なぜ、彼女は諦めないでいられるのか。
生きることを。学ぶことを。そして幸せになることを。
それは、彼女自身が「生かされている」と感じているからだと思います。
周囲の人から見たら辛すぎる人生を与えられても、恩師や仲間に支えられ、恋をして母となり、学ぶことに人一倍の情熱を傾ける。
未来が不確実であることを身に沁みて知っているからこそ、「今」という刹那を懸命に生きられる、彼女のような人は魅力的です。
松明の火を手渡す人に
作中で「松明の火を手渡していける人になりたい」と、彼女は幼い息子に語ります。
人々が松明の火を移して暗闇を照らすように、自分の学んだ知識を後世に伝えたい。
一人一人の人生は短くても、生きた証を伝えていくことで、人の想いや夢は世代を超えて繋がっていく。
目の前の何かと真摯に向き合うこと。
大切な人々を笑顔にすること。
日常の小さな幸せの積み重ね。
それがいつの日か、顔も知らない誰かの夢に繋がることを願って、「今」という刹那を全力で生きたいです。