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観ながら学べるサイレント映画史

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実際に映像を観ながら19世紀後半から1930年代までの世界のサイレント映画の歴史を学べるマガジンです。
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記事一覧

第7回 フィルム・エクスチェンジ業者

前回はニッケルオデオンというアメリカにおける映画専門劇場の成立と普及についてお話ししました。今回はこのニッケルオデオンの出現によって生じた莫大な映画フィルムの需要に応えた、「フィルム・エクスチェンジ」と呼ばれる映画のフィルムや機材の流通業者についてお話しします。 デトロイトのフィルム・エクスチェンジ・ビル(FEB)さてまずは以下の画像をご覧ください。真ん中にエンブレムがあり「FEB」の三文字が見えます。エンブレムの両側には半裸の男性の彫刻があります。よく見ると、彼らが抱えて

第6回 ニッケルオデオンとアメリカの移民社会

前回は、エドウィン・ポーターの1901年から1903年ごろの映画を例に、この時期のアメリカにおける映画の大きな変化についてお話ししました。アクロバットやヴォードヴィル俳優のパフォーマンスを撮った非物語的快楽を提供する「アトラクション」の映画の中に、それ自体で完結した線的な時空間を表現するタイプの映画が生まれ始めました。もちろん、まだ現代の物語のような長さではないのですが、フィルムのリールを丸々一本使った10分以上の作品も増えてきました。今回の話題は、この映像コンテンツの変化と

第5回 エドウィン・ポーターと映画の文法の萌芽

黎明期においては映画という新しいテクノロジーは観客を引きつける大きな魅力であり、動いているものを映像として見ることそれ自体が新しい経験でした。しかしながら、1896年に投影式の映画装置バイオグラフを開発したアメリカン・ミュートスコープ社を始めとする競合の会社が出現し、エディソン社はこれらの会社との競争に勝ち抜く必要に迫られます。第3回でお話しした法廷闘争もその対策の一つですが、映像コンテンツ自体の内容でも勝負を迫られるようになります。魅力的なコンテンツを作ることがひいては映画

第4回 騒々しい観客と「アトラクションの映画」

さて、前回の最後に、今回は映画の中で物語を語る技法が発展して行く話をすると予告しました。早速昔の映画製作者たちがどのようにして、クローズ・アップやカット・バックといった映画の中で物語を表現する技法を洗練させて来たのかという話をしたいのはやまやまなのですが、その前に当時の観客が映画をどのように楽しんでいたのか少し考える必要があります。私は前回、映画の中で物語を語る技法は映画製作者たちが映画史の最初の20年くらいをかけて徐々に作り上げてたと言いました。先月みなさんがご覧になった通

第3回 エディソンとその競争相手

前回はリュミエール兄弟のシネマトグラフについてお話ししましたが、今回は映画の起源に関わるもう一人の重要人物トマス・エディソンのキネトスコープについてです。リュミエール兄弟が行ったシネマトグラフの上映会が投影式であり、一方エディソンのキネトスコープは覗き見式であったため、20世紀的な映画観からはシネマトグラフの方が起源として重視されると言いましたが、かと言ってエディソンの発明の映画史への貢献も無視できません。 ウィリアム・ディクソンとキネトグラフエディソンのキネトスコープと書

第2回 ベンチャー・ビジネスとしてのリュミエール兄弟の映画

映画の起源と言ったときに普通はリュミエール兄弟とエディソンが言及されるという話を前回しました。とは言っても、前回の記事はリュミエール兄弟とエディソンに至るまでの映画前史が中心でしたので、リュミエールが投影式の映画を、エディソンが覗き込み式の映画を発明したということしか触れていません。今回は「ベンチャー・ビジネスとしてのリュミエール兄弟の映画」というタイトルで、リュミエール兄弟の映画について解説します。通常あまりこういうタイトルで映画史にアプローチすることはない多くないのですが

第1回 映画誕生前夜

さて、記念すべき「観ながら学べるサイレント映画史」の第1回ですが、さっそく映画史の大きな問題から始まります。みなさんは映画の歴史の始まりと言われていつを思い浮かべるでしょうか?映画史に詳しい方であれば、フランスのリュミエール兄弟がシネマトグラフをお披露目した「1895年」と回答されることと思います。この事実自体は歴史的に正しいのですが、ではそれでもって1895年が映画の誕生の年であると簡単に言い切ってしまっていいかというと、ことはそれほど単純ではないのです。 投影式シネマト

第0回 このマガジンについて

はじめまして渡部宏樹(わたべこうき)と言います。筑波大学の人文社会系で教員をしています。この「観ながら学ぶサイレント映画史」というマガジンは、その名の通り、動画で昔の映画を実際に観ながらサイレント映画の歴史を学べるというものです。映画の歴史を学びたいという人であれば子供から大人までわかるように書いています。また、内容はアメリカのフィルム・スクールの授業スタイルに合わせているので、アメリカに留学して映画史や人文系の学問を学ぶときの雰囲気を掴むのにも役に立つと思います。 フィル