蒔絵訪問記#5:蒔絵の小さな宝庫
この取材のご縁にと、いただいた小さなアマガエル。小さな石の舞台で鎮座する姿が絶妙な余韻を醸し出していて、見るたびに印象が違うのです。
ある時はグリーンの艶やかな漆の輝きの中にさり気なく施された金粉を発見してグッときたり、ある時は石の余白に侘び寂びを感じ見入ってしまう。
小さな石ころの中に豆粒大のカエル1匹を立体的に描くことができるすごい技術もさることながら、日本の豊かな自然の魅力や、信仰を通して古くから培われてきた日本の思想文化も。私にとっては、たくさん感じられることが詰まった石ころ。握りしめると力が湧いてくる。
蒔絵職人という肩書きだけではこんな蒔絵の魅力をつくれないだろうと思って臨んだ取材でした。やはりこの魅力を生む背景には職人の生きてきた環境と積み重ねた経験があってこそだと腑に落ちました。ただそれでも足りない。一見では気付かない小さな着彩は何度も工程を重ねて作られます。気が遠くなるほどの手間暇を込める根気と集中力も必要です。手間暇をかけてまで仕込む小さな筆致の有無で雰囲気が大きく違ってくることを想像できる感性があってこそ、これだけの作品が作られるのです。
取材をきっかけに漆の業界を調べてみると、経済的統計の数字はどんどん小さくなっていき、縄文時代から築いてきた日本の漆文化は絶滅してしまいそうです。先人が積み重ねてきた漆技術が途絶えてしまうのはなんとか避けたい。そのために何ができるか考え、お手伝いしていきたいです。
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