ちゅ～るこわい 再放送
【お江戸の野良猫が怖いモノとは】
🎍お正月特番🎍
こちらの記事は過去記事の
編集再アップでございます 🐾
今日は町内の若いもんの集まりなのですがどうせ暇だからってんで早くから仲間が集まりましてワイワイやりはじめました。話題はと言いますと、それぞれに自分の怖い生き物を言い合おうじゃないかということになりまして
「俺ぁ、なんといってもゴキブリが怖いねえ。あんなすばしっこい、真っ黒な生き物がいるだけでゾッとするね」
「俺ぁカマキリだね。あの顔と、なんといってもあの大きな鎌が怖いや」
とまあ、みんなが披露したんですが最後に残った野良という男がいまして、みんなが「野良は何が怖いんだい？」と聞きますと
「おいらは怖いもんなんかないね。第一わけえモンがあれが嫌いこれが怖いっておかしいじゃあねえか」
「じゃあ野良はゴキブリは怖くないのかぃ？」
「あたりめえよ、ゴキブリなんてものはゴキブリせんべいにしてサクッと食っちまえばいいんだよ。カマキリなんざ稲刈りンときに鎌でもって働かせりゃあいいんだよ」
と、威勢のいいことを
言い続けた野良ですが
「おっと、こりゃあまずいや…」
「どうしたんだい？野良？」
「いやぁ、ちょいと怖いもんを思い出しちまったんだよ…」
「なんだい、それは！？」
威勢のいい野良にも怖いものがあると知って、みんなの目は光りまして
「なんだよ、教えなよ」
「いいかい？一度しか言わねえよ」
「うん、ないだい、怖いものは？」
「ちゅ、ちゅ～る！」
「はあ？おい、ちゅ～るという名前の生き物を知ってるか？……おい、野良、それはどんな生き物だい？」
「そうじゃあないよ。ペットショップやスーパーで売ってるやつだよ」
「あんだって！？あのスティックタイプのちゅ～るかぃ？」
「あああ、それを言うなよ。思い出しただけで気分が悪くなってきた……」
野良はプルプル震え出し、顔がだんだんと青くなってきまして
「ううう、もうまいっちまった…誰か隣の部屋に布団をしいてくれ」
そういうと隣の部屋に引っ込んで布団を被り寝てしまいました。この様子を見たみんなは思わず顔を見合せまして…
「おいおい、聞いたか！？」
「野良の野郎、猫(人)が変わってると思ったら怖いものまで変わってやんのな！」
「本当に顔青くして寝ちまったよ」
というのも…
普段からみんな野良のことをイヤな奴だと思っていたものですから、そんなことなら枕元に沢山ちゅ～るを積み上げて野良をうんと震えあがらせてやろうという相談はすぐにまとまりました。早速みんなは手分けして店をまわり、ちゅ～るを買い集めてきました。
まぐろちゅ～る
かつおちゅ～る
とりささみちゅ～る
ほたて貝柱ちゅ～る
かにかまちゅ～る……
これを大きなお盆に山盛りにしますと、頭から布団を被って寝ている野良のいる部屋にそっと運び込み…
(これなら野良もびっくり仰天だ)
みんなの目が、更に光りました。
「おーい、野良ぁ、そろそろどうだぁ？起きてこっちへきなよ」と言いますと
「…そうかぇ？起きてくけどアレのこたぁ言いっこなしだよ…」
「わかったわかった。でえじょうぶだから、言わねえから起きてこっちきな」
「それじゃあ…」ってんで、野良、起き出したようなんですが……
「うわぁーっ！ちゅ～るぅぅぅッ！」
と悲鳴が上がり、さあ、
こちらの部屋ではみんな大喜び。
「なんて、ひでぇことをしやがるんだ！ちゅ～る、こわいーっ！」
野良がうめけばうめくほどみんなは笑いをこらえるのに必死でして、ところがしばらく悲鳴が続いていたんですがさて、野良はといいますと……
「うわーっ！まぐろちゅ～るだぁ！こわいーっ！いちばんこわいーっ！これは、とりささみちゅ～る！こわ！ほたて貝柱ちゅ～る！ヒィ！こわーい、こわいっ！
かにかまちゅ～るだ！このとろみがこわいねぇ！においが、こえぇ！ちゅ～るはみんなうま…じゃなくて、こわい。ちゅ～るこわい。こわいはちゅ～る。こーわいこわい……
ちゅ～る ちゅ～る CIAOちゅ～る♪
ちゅ～る CIAOちゅ～る
いつものごはんもいいけどぉ
今日は良い子で待ってたよっ
おもちゃで遊んで待ってたよ
花瓶も割らずに待ってたよ
玄関先まで迎えに来たよー
だーかーらー♪……」
「おいおいなんだい？ヘンだよ！？」
「野良の野郎なんだか歌ってますよ」
「たしかに様子がヘンだねえ。ちょいと中を覗いてごらんよ」
そっと襖をあけて
隣の部屋を覗きますと……
野良がちゅ～るを夢中になって
舐めているではありませんか。
「あの野郎、ちゅ～るがこわいだなんて言いやがって俺達を騙しやがったな！」
てんで、みんなで隣の部屋に乗り込んで
「こらーっ！野良っ！おまえがほんとにこわいものは一体なんなんだ！」
と聞きますと野良すかさず
「うーん、このへんで
濃いミルクがこわい！」
《落語 饅頭怖い》
～猫バージョン 今昔ミックスの巻～
