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レムリアのくじら。
最近お迎えした石くんが、どうやら私のあの頃の記憶を刺激する。
忘れていることさえ忘れているし、憶えていない。
その、寝起きの微睡むようなあの僅かな時に石くんを握り、または掌にのせて、目を瞑る。
海が割れて、私は地底を歩いている。
浅瀬の澄んだ水に入り、見たこともない大きさのエイを眺めたり、水色の魔法のステッキでなにやらおまじないをかけたり。
はたまた、宇宙からおっきな手が伸びてきて、私の手を握り『恐がらないで!大丈夫!』そう言って引き上げようとしてくれる。
私は、昔から海が苦手だ。
違う、海は好きだけど、怖い。
小学生の時授業中に、突然頭に深海に落ち沈んでゆく牛の映像が浮かんできて、あまりの恐怖に叫び、保健室に連れていかれた。
先生は、『感受性が強すぎる。』と言って、
うちの親はただ笑ってた。
その牛は白と黒の柄で、その時から牛も深い海も怖くなった。
人形姫の童話は好きだったけど、やっぱり海の深い色は苦手だったし、とにかくざわざわするから。
それでも不思議で、私は学生時代(小学生から中学)の図工美術の作品モチーフはすべてくじらだった。
理由は正直わからなくて、でもいつも決まってくじらの絵を書いた。
書いたこともない時から、なぜかそれを知ってるみたいに、すらすらとサラサラと、くじらの家族の絵を書いた。
お父さんくじらが青色で、お母さんはオレンジ。
ぼくかわたしは黄緑色。
わたしは、レムリアの魂が強い。
そんな風に思う。
そして、そう思うからそうなのだ。
だってそれはそうでしょう。
だってそれを、わたしの魂が一番良く知ってるのだから。