
【トレイル紹介】John Muir Trail ハイカー憧れの道
アメリカのトレイル John Muir Trail(ジョン・ミューア・トレイル)の解説です。
情報は2025年2月時点のものです。
基本データ
所在:アメリカ、カリフォルニア州
距離:340km (211mi)
日数:18〜21日
累積標高:約14,000m
最高点:4,421m (Mount Whitney)
スタート:Happy Isles, Yosemite Valley
ゴール:Mount Whitney
パーミット:要
事前予約:要
ワイルドキャンピング:可
最重要ポイント:パーミットの取得
歩いた日
2024年9月11日〜10月3日(20泊21日 +Zero Day2日)
ベストシーズン

(無雪期のハイキングを想定)
日本アルプスの夏山シーズンと同じ、6月下旬〜9月がシーズンです。この中でも最もおすすめなのが9月です。
6月下旬〜7月は、残雪が多く残っており、降雪量によってはパスを超えられない場合もあります。また、雪解け水により川の水嵩も高く、渡渉の難易度が上がります。朝晩の冷え込みも厳しいです。
7月〜8月は、日中の暑さと大量の蚊が問題です。
9月には蚊がいなくなります。私が歩いた中では、一度も刺されることはありませんでした。標高が高いエリアでもトレイル上に残雪もほぼ無く、渡渉を渡るのも容易です。ハイカーの数も7月8月と比べると減り、パーミットの取得も比較的簡単になります。日中の暑さも8月と比べるとマシになります。シエラネバダ山脈の夏はどの月も天候は安定しており、基本的に快晴の日が続きます。私が歩いた21日間の中で、雨が降ったのは1日のみでした。一時的な雷雨や雹にも遭遇することはありませんでした。
9月以降のデメリットは、朝晩の冷え込みと、区間によっては水場が無いことです。朝晩は一桁台〜氷点下になることもありますが、JMTではクマ対策としてテント内での調理ができないため、寒くてもテントから離れて食事をとらなければなりません。雪が降ることもありますが、トレイル全体が雪で閉ざされるということはなく、翌日にはほぼ溶けています。水場に関しては、Half Dome〜Upper Cathedral Lakeの間で水場がありませんでしたが、それ以外は特に問題にはなりませんでした。

(9/19 Fish Creek付近)

(9/28 Lake Marjorie付近)
アクセス
日本からJMT目的で行く場合の飛行機は、サンフランシスコかロサンゼルス発着になるかと思います。どちらの都市からも、トレイルヘッドのあるヨセミテまでのシャトルバスが発着する町を経由する必要があります。
【サンフランシスコから】
⚫︎サンフランシスコ 〜 マーセド
・バス
運行会社:Greyhound
所要時間:3時間35分
料 金:US $25前後(約3,800円)
運行頻度:毎日 11:35発/15:10着の1便のみ
乗り継ぎ:直行便
・電車
運行会社:Amtrak
所要時間:3時間半〜4時間
料 金:US $32〜(約4,860円)
運行頻度:毎日 1日5本
乗り継ぎ:電車の駅があるEmeryvilleまではバス(上記時間、料金に含む)
・飛行機
直行便無し
⚫︎マーセドーヨセミテ
・バス
運行会社:YARTS
所要時間:2時間40分
料 金:US $44(約6,680円)
運行頻度:毎日 夏季(5/13〜9/30)1日7本、冬季(10/1〜5/22)1日4本
乗り継ぎ:直行便
【ロサンゼルスから】
⚫︎ロサンゼルスーフレズノ
・バス
運行会社:Greyhound、FlixBus
所要時間:4時間20分〜5時間25分
料 金:US $46.99〜(約7,140円)
運行頻度:毎日 1日7便
乗り継ぎ:直行便。1回乗り継ぎ便の場合US $31.98〜有り。8時間。
・電車
運行会社:Amtrack
所要時間:5時間〜5時間半
料 金:US $39〜(約5,930円)
運行頻度:毎日 1日6便
乗り継ぎ:Bakersfieldまではバス(上記時間、料金に含む)
・飛行機
運行会社:ユナイテッド航空
所要時間:1時間14分
料 金:19,020円〜
運行頻度:毎日 直行便は1日3便
乗り継ぎ:直行便。乗り継ぎ便の場合4時間半
⚫︎フレズノーヨセミテ
・バス
運行会社:YARTS
所要時間:4時間
料 金:US $40(約6,080円)
運行頻度:夏季(5/10〜9/10)のみ運行。1日2便。
乗り継ぎ:直行便


宿泊地
ワイルドキャンピング
可。
指定サイトは無いので、基本的に毎日ワイルドキャンプすることになります。
基本的なルールは下記の通りです。
テントは沢や湖沼などの水源、トレイルから100フィート(30m)以上離れて張る
植生のある場所は避け、岩や砂地に張る
焚き火は既存の焚き火跡を利用する
トイレは水源、トレイルから100フィート(30m)以上離れ、4〜6インチ(10〜15cm)以上の穴を掘る。ペーパーは埋めずに持ち帰る。
その他、特定の湖の周辺では設営場所の制限があったり、国立公園ごとに細かくルールが定められています。

(9/14)
指定キャンプサイト
ヨセミテ、Tuolumne Meadows、Reds Meadow、Vermilion Valley Resort(VVR)等のトレイルヘッドにのみ指定キャンプサイトがあります。

(9/11)

(9/19)
山小屋
無し。ヨセミテ、Vermilion Valley Resort(VVR)、Muir Trail Ranchには売店、宿泊施設があります。
補給ポイント
トレイル上でのリサプライ(補給)、町に降りてのリサプライ、ヒッチハイクについては下記の記事で解説しています。
ルート状況
標識・マーカー
マーカーは特にありませんが、トレイル自体が非常によく整備され明瞭なため、道迷いの心配はあまり無いと思います。分岐には必ず標識があります。道迷いしそうな開けた場所では、トレイルを示すように石が置かれていたりします。


渡渉
靴を脱ぐ必要のある渡渉が複数あります。7月は雪解けの影響で、最も水かさが高く、渡渉が困難になります。9月になると石を渡って超えられる渡渉も多くなり、比較的容易に超えられます。

危険箇所
全線を通じて非常に良く整備されているため、特になし。
6月〜7月は、残雪が残るため、特にパスの状況を確認する必要あり。
水場
全体的に沢が豊富で、美味しい水が飲めます。
9月は、地図上に水場の記載があっても枯れている箇所あり。2024年はHalf Dome〜Upper Cathedral Lakeの間で、水場がありませんでした。
パーミット
JMTを歩く上での最大の関門が、パーミットの取得というのは耳にした方も多いと思います。初めての方にとっては、パーミットのシステムは複雑に見えるでしょう。しかし、一度理解してしまうとそれほど難しくはなく、取得するのもイメージされているほど難しいものではありません。
厳密に言うと、「JMTのパーミット」というものは存在しません。
アメリカの国立公園エリアの中で、1泊以上の野営をする場合にはパーミットが必要です。パーミットは国立公園ごと、さらにその国立公園の中のどの入口(トレイルヘッド)からフィールドへ入るかによって細分化されています。
JMTのハイキングは、国立公園のエリア内で野営をしながら歩くということになるため、数多あるパーミットの中から該当するエリアのものを1つ取得する必要があるわけです。
パーミットの基本的なルールは、
・6割が抽選枠。1週間区切りで、歩きたい日の24週間前に受付開始。
・4割が先着枠。歩きたい日の7日前に受付開始。
・1回の抽選につきUS $10(約1,520円)。落選の場合も返金はされません。
・当選の場合、1人US $5(約760円)。
ハイキングの日数による料金の変動はありません。つまり、1週間で歩く場合も、1ヶ月で歩く場合も、パーミットの料金はUS $15(約2,280円)のみということです。
パーミットの取得は全て下記のサイトにてオンラインで行われます。
以前は、ハイキング開始日の早朝からヨセミテのウィルダネスセンターに並び、ウォークイン(walkup)パーミットを取得するという方法も主流でした。しかし、現在は先着枠もオンラインで受け付けるシステムとなったため、JMTに関してはウォークインパーミットは無いものと考えて良いかと思います。
ルール上は、余りがあれば当日にウィルダネスセンターでウォークインパーミットの受付はされますが、JMTを歩けるパーミットについては当日に余りが出ることはほぼ無いでしょう。
私のおすすめは、出発7日前に4割の先着枠で取得することです。特に9月であれば、一番人気のHappy Islesのパーミットでも、この方法でほぼ確実に取れると思います。
具体的な取得方法については、別の記事で詳しく解説します。

地図・ガイドブック
地形図
National Geographic Topographic Map Guide, 1001「John Muir Trail」 1:63,360
1冊でJMT全域をカバーしています。カリフォルニア州のREIには大体置いてあると思います。US $14.95(約2,270円)

John Muir Trail Map-Pack: Shaded Relief Topo Maps (Tom Harrison Maps)
こちらは現在廃盤になっているようです。
ガイドブック
CICERONE『The John Muir Trail』
勝俣隆『JMTプランニングガイド』
装備
ベアキャニスター
JMTを歩くにはベアキャニスターの携行が義務付けられています。ベアキャニスターとは、クマにも破壊されない耐久性のある食料保管用のケースです。トレイルでは、食料のみならず、日焼け止めや石鹸など匂いを発するものは全てこの中に入れ、幕営の際はテントから離して保管します。
日本でも購入できるほか、現地で購入するかレンタルすることも可能です。
詳しくは別の記事で解説します。

その他
氷点下に対応できるシュラフ、防寒着
渡渉用のサンダル
ハイライト
ヨセミテの山々、Nevada Fall

1000 Island Lake

Evolution Lake

Glen Pass

Mount Whitney

サイドトリップ
Half Dome
ヨセミテのシンボルであり、THE NORTH FACEのロゴのモチーフである半円形をした花崗岩の岩山。登頂にはパーミットが必要で、これも取得が困難ですが、Happy Islesのパーミットを取得できた場合は、US $10(約1,520円)の追加料金でHalf Domeにも登ることができます。



NOBOかSOBOか
下記の点からSOBO(南下)がおすすめです。
・南に行くにつれて標高が高くなり、険しくなるため順応していける
・NOBOの場合、Mount Whitneyのパーミット取得がより困難
・ヨセミテはシャトルバスがありアクセスしやすい
・アラスカを除くアメリカ最高峰であるMount Whitneyで締められる
あえてNOBOを選ぶメリットはあまり思いつきません。
コースバリエーション
Happy Isles、Mount Whitney以外のトレイルヘッドについては下記の記事で解説しています。
John Muir Trailで見られる動物
アメリカナキウサギ

マーモット

ブラックベア
リス
シカ
馬
ニジマス等の川魚
個人的な感想
ロング・ディスタンス・ハイキング発祥の国、アメリカを代表するトレイルというだけあって、トレイルのお手本のようなトレイルだと感じました。
自然を守るためのルールの制定、トレイルの整備、指定地ではなくワイルドキャンプ、といった、自然環境とトレイルを持続可能なものにしつつ、ハイカーが自由に楽しく歩ける条件を見事に整えていると思います。
パーミットのシステムは、始めはとても複雑に思えましたが、一度理解してしまえばそれほど難解なものではありませんでした。実際に取得するのも思っていたよりはずっと容易でした。
何より、世界で最も有名かもしれないトレイルを歩けたことがシンプルに嬉しかったです。よく耳にしてきた名前の場所に自分で歩いて辿り着いて行く過程はテンションが上がりました。
次はPCTのハイキングでまた来たいですね。
