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【トレイル紹介】Torres del Paine O Circuit パタゴニアの大地を歩く

チリのトレイルTorres del Paine O Circuit(トレス・デル・パイネ・Oサーキット)の解説です。
情報は2024年12月時点のものです。

基本データ

所在:チリ、マガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州(パタゴニア)
距離:約115km (71.5mi)
日数:7〜9日
累積標高:約5030m
最高点:1241m (Paso John Garner)

スタート:Laguna Amarga (またはLas Torres)
ゴール:Laguna Amarga (またはLas Torres)

パーミット:不要
事前予約:要
ワイルドキャンピング:不可

最重要ポイント:キャンプサイトの予約。予約開始と同時に最安値のフリーサイトを予約すること。

歩いた日

2024年12月10日〜12月16日

ベストシーズン

天気、気温、混雑等を考慮したシーズン早見表

Torres del Paineのベストシーズンの判断は難しい所です。パタゴニアのハイキングシーズンは南半球の夏に当たる12月〜3月となります。ハイシーズン前後の4月、9月〜11月が混雑を避けられそうな気がしますが、キャンプサイトの予約が可能な期間は基本的に予約がフルで埋まっています。そのため、朝晩の寒さという代償を払ってもさほど混雑を避けられないかと思います。5月〜8月はキャンプ場が閉鎖され、個人でサーキットを歩くことはできないため×としていますが、冬季のハイキングツアーは開催されているようです。

アクセス

首都サンティアゴ〜パタゴニア拠点の町プンタ・アレーナス

⚫︎飛行機
飛行機が最も一般的で、コスパが良い方法でしょう。
1日に複数の便が出ており、LATAM航空の直行便で約3時間半、¥7,500〜。プエルトモントで乗継、乗継時間35分という便で3,000円台のものもありました。
アンデス山脈とフィヨルドの景色が上空から眺められるので、窓側を指定する価値もあると思います。

⚫︎バス
この区間に関しては、バスの方が飛行機の最安価格帯よりもほぼ確実に高いです。チリ国内はプエルトモント以南は、公共のバスでのルートは無いため、一度アルゼンチンに入り、乗り継ぐことになります。35時間以上、約1万円〜。

⚫︎フェリー
お金と時間に余裕があり、移動も楽しみたい人向けです。サンティアゴからバスで約12時間のプエルトモントからプンタ・アレーナスまで、NAVIMAG社のフェリーが就航しています。3泊4日フルボード、ドミトリータイプの部屋でUS $499、個室だと1人US $650。

プンタ・アレーナス〜プエルト・ナタレス

⚫︎バス
Bus-Sur社で7時〜21時まで、1、2時間毎に運行しています。
・3時間14分、料金はCLP8000で一律
・プンタ・アレーナスの空港から乗車可能
・Recorridoというサイトで予約可能なので、プンタ・アレーナス行きの飛行機とセットで事前予約を推奨
※空港にはバスのチケットを購入できる場所が見当たらず、バスも予約でほぼ満席になります。

プエルト・ナタレス〜トレイルヘッド

⚫︎バス
・Bus-Sur社で1日4便程度。乗車時間2時間、CLP14,000。
・USB充電可能で車両によってはWi-Fiも使用可能
・行きは途中で20分程度のトイレ休憩があり、お土産、エンパナーダなどの軽食も購入   可能
・予約サイトRecorridoで予約できるのはBus-Surのみ

プエルト・ナタレスのバスターミナルTerminal Rodoviarioにはその他複数のバス会社のカウンターが並んでいます。トイレはチップ制、フリーWi-Fiはインフォメーションカウンターに行くとパスワードを教えてくれます。

プエルト・ナタレスのバスターミナル。商店、カフェ、ツアー会社も併設。
Bus-Sur社のバス

・Laguna Amarga〜Las Torres間のシャトルバス
 この区間は、7kmのほぼ平坦な道で1時間半程ですが半分は車道歩きになります。ハ イカーでもシャトルを利用している人が大多数でした。概ねPuerto Natalesからのバス発着時刻と合わせて運行されているようです。
所要時間約10分、CLP4500/US $6

宿泊地

ワイルドキャンピング

パイネ国立公園内では、指定キャンプサイト以外での幕営は明確に禁止されています。

指定キャンプサイト

Paine Circuit上には、現在9ヶ所の指定キャンプサイトがあります。これらは事前予約必須で、サイトの予約がこのトレイルを歩くにあたっての関門です。
全てのキャンプサイトを下記の表にまとめます。

Paine Circuitのキャンプサイト一覧
※価格は全てアメリカドル

フリーサイトが設営場所のみが提供される通常のテン場で、テント泊装備を全て持参しているハイカー向けです。レンタルテントは、各サイトに固定で設置されているため、自分で設営の必要さえありません。寝袋やマットは含まれていないため、レンタルする場合は+αで料金が必要です。
フリーサイトでもLAS TORRES管轄サイトについては、2名で約14,000円と目を疑う程に高額です。「1ピッチを2人1張で利用」が前提となっているようで、ソロの場合は割高になります。テント、寝袋、マット全てレンタルで8泊9日の行程をソロで歩いた場合の合計金額は、$1,328=約209,000円となります。同行程でフリーサイトの場合も、 $346=約54,000円です。

これは最小限の出費で済むよう、作戦を練らなければなりません。私は下記の行程で歩きました。

私が歩いた行程

私は2人で歩いたので、1人当たり$136=約21,400でした。最終日が42km、行動時間12時間超えになってしまいましたが、その他は無理なく歩けました。DicksonからGreyまでは約31kmなので1日でも行けそうですが、この区間はLos  Perrosを飛ばすことはルール上禁止されています。予約サイトでも、そのような行程では予約できないシステムになっていました。

歩き終えた後に、ルールに則った上で最小限に出費を抑えた実現可能な行程を考えてみたので参考までに貼っておきます。節約を第一に考えた行程なので全ての人にお勧めはしません。

体力に自信があり、とにかく節約したい場合の行程

1日目は約35kmですが、Puerto Natalesから始発のバスに乗ればLaguna Amargaに8時45分に着くので十分歩けると思います。Laguna Amargaからの7kmはシャトルバス利用も可能です。最終日は1番の見所のTorres del Paineまで往復すると、どうしても40km近くになってしまいます。12月〜2月のパタゴニアは22時近くまで明るいので、体力さえあれば1日に長く歩くことは可能です。

キャンプサイトの設備

料金が高いだけはあり、設備はとても充実しています。トレイルの中のサイトとしては私が経験した中で世界一の充実度でした。

・シャワー
特筆すべきは、全てのサイトにおいてシャワーが完備されていることです。VERTICEのサイトでは冷水のみですが、LAS TORRESではしっかりとした水圧でお湯が出ます。トレイルの中なので期待はしていませんでしたが、正直南米のどの安宿よりもよほど良いシャワーでした。

Francesのシャワー棟。鍵付きの個室ブースとなっており、脱衣スペースもある。
Francesのシャワーブース内。フックと全身用石鹸も付いている。

・トイレ
全て水洗でペーパーもあり、フィールドの中のトイレとは思えないほど清潔です。VERTICEでは、流れが不調だったり、ペーパーが空になっている時もありました。

Dicksonのトイレ

・ゴミ箱
全てのキャンプサイトに設置されています。

Greyのゴミ箱

・キッチンエリア
Paine国立公園内では、指定キャンプサイトのキッチンエリアでしか火器の使用が認められていません。自分のテント内やその周囲でバーナー等を使った調理や焚き火は禁止です。そのため、各キャンプサイトにキッチンエリアが設けられています。食器を洗えるシンクもあります。

Paine Grandeのキッチンエリア
※厳密には写真のスペースは食事専用で、バーナーの使用は禁止です。この後ろに火器を使える調理スペースとシンクがあります。

・売店
クッキーやポテチなどのスナック、パスタやパスタソース、ビール、ソフトドリンク、ガス缶や電池、石鹸類といったトレイルの中で必要な消耗品類が大体揃っています。品揃えはサイトによってやや異なり、Los Perrosでは全体的に品薄でした。当然、値段はスーパーの2〜3倍します。

・レストラン
お金を払えばご飯も食べられます。

キャンプサイトの予約方法

Paine Circuitではキャンプサイトの予約方法が複雑です。

・9つのキャンプ場はLAS TORRES、VERTICEという2つの異なる組織によって運営されている。それぞれの予約サイトで手続きをする必要がある。
・O Circuitでは反時計周りの一歩通行
・Dickson、Los  Perros、Greyは飛ばして歩いてはならない

この3点を押さえておきましょう。初日のサイトを決めた時点で、残りの組み合わせはほぼ決まってきます。

Las Torres公式サイトの予約ページ

VERTICE公式サイトの予約ページ

ここで難しいのは、例えば先にLas Torresのテン場の予約日程を決めたとして、それに対応するVERTICEのテン場が予約可能なのかを確認しなければならないということです。やってはならないのは、その確認をせずに片方のみの予約を先に確定させてしまうことです。対応する日程でもう片方に空きが無かった場合、O Circuitとして歩けず予約が無駄になってしまいます。

この面倒なプロセスを楽にしてくれるのが下記の予約サイトです。

指定した期間の中で、予約可能な組み合わせを検索でき、Las  TorresとVERTICEを一括で予約できます。

使い方は、
1.「Custom Trek」を選択
2.検索をかける期間の範囲を指定
3.自分が泊まりたいテン場を選択

すると予約可能な日程と最低の合計料金が全て表示されます。

食事やレンタルギアを追加したい場合も合わせて予約可能です。

このまま予約に進んでしまうと、約US $50程も手数料を取られてしまいます。この予約サイトは空き状況の確認に利用し、その後速やかに各公式サイトで予約をするの良いでしょう。

テン場のキャパシティに対して、固定で張られているレンタルテントが5〜7割以上を占めているため、フリーサイトは予約がオープンになったと同時にすぐに埋まっていきます。そのため、比較的直前でも予約は可能ですが、最も高額なプランしか残っていない場合がほとんどです。
私は12月の予約を7月末にして、ギリギリ全てのサイトをフリーサイトで取ることができました。その時点で、予約可能な全期間で全てをフリーサイトで取れるのはほぼ1パターンしか無かったため本当にギリギリだったと思います。JMTやミルフォードトラック程瞬殺ではありませんが、予約開始次第早めに取るのに越したことは無いでしょう。

キャンプサイト利用の注意点

・チェックインの行列
全てのテン場でチェックインが必要です。これがなかなかスムーズに進まず、ピーク時には長蛇の列になります。パスポートが必ず必要になるので持って並びましょう。確認されないことがほとんどでしたが、メールされた予約確認書のPDFも、トレイルに入る前にスマホにダウンロードしておくと良いです。
チェックインカウンターは売店の中や隣にあります。チェックインするとタグが渡され、それをテントのガイラインに貼り付けることで手続き済みの証明になります。

・良いピッチの確保
フリーサイトはやや斜めだったり凸凹な地面が結構多いです。良い場所から埋まっていくので、なるべく早めに着いたほうが良いです。チェックインに行列ができている場合、先に張ってしまっても良いと思います。その場合は、幕営可能エリアが看板で示されているので確認してから張るようにしましょう。

Francesでのチェックインの行列

山小屋

多くのテン場でドミトリータイプの小屋に宿泊可能です。Cuernosでは個室も利用可能。

ルート状況

ルートはよく整備され、ハイカーも多いためトレイルは明瞭です。

標識・マーカー

高頻度でトレイルを示すマーカーやテン場までの距離を示すサインがあり、分岐に必ず標識があります。

マーカーの一例

渡渉

靴を脱ぐレベルの渡渉はありません。川にはほとんど橋がかかっています。かなりの高度と距離の吊り橋もあるので、高所恐怖症の方は注意です。

Los Perros〜Grey間にはこのような吊り橋が3ヶ所あり

危険箇所

・Paso John Garnerの前後では部分的に雪の上を歩きます。アイゼンやピッケルは不要なレベルです。
・Paso John Garner含め、特に強風が吹くポイントがあり地図にも記載されています。

Paso John Garnerへの登り

水場

各テン場には飲用可能な給水スポットまたはキッチンの蛇口があります。トレイル上の沢からも取水可能。

パーミット

トレイルを歩くためのパーミットはありませんが、国立公園の入場チケットが必要です。

外国人料金
3日以内滞在 CLP32,400
3日以上滞在 CLP46,200

チケットはCONAFのWebサイトでオンライン購入可能です。

バスでLaguna Amargaに到着次第、レンジャーによるチケットの確認があるので事前に購入しておくことをお勧めします。現地でも窓口か自動券売機で購入は可能で、クレジットカードも使えます。

地図・ガイドブック

地形図

プンタ・アレーナス、プエルト・ナタレスのお土産屋さんで購入可能です。パイネ国立公園の地図で、1枚でトレイル全体を網羅していますが、最も細かいもので1:100000なので、読図には適しません。道迷いの心配はないので、全体を把握する目的での使用になるかと思いますので、紙の地形図は必須ではありません。私は下記のものを購入しました。CLERCというお店で複数種類の地図を扱っています。

Torres Del Paine国立公園の地形図 CLP10,000

ガイドブック

CICERONE『Trekking in Torres del Paine』

装備

特別な装備は不要
・強風に耐えられるテント
・レインウェア、ウィンドシェル

ハイライト

・Torres del Paine
・Grey氷河
・Mirador Britanico

Paso John GarnerからのGrey氷河

サイドトリップ

特に無し

コースバリエーション

・W Circuit
O Circuitの北側区間(Las Torres〜Grey)を除いた短縮ルートで、3〜4日で歩けます。

Paine Circuitで見られる動物

・馬、うさぎ
・ピューマの生息域でもありますが、滅多に見られないと思います。

拠点の町プエルト・ナタレス

・おすすめスーパー:Unimarc
街の中心部にある一番大きなスーパーです。サンティアゴの大型スーパーと比べて、値段はそれほど変わりませんが、品揃えは劣るので、パタゴニアに入る前に食料の買い出しは済ませておいた方が良いです。

・おすすめレストラン:Mesita Grande
イタリア料理店。ピザもパスタも種類豊富で悩みますが、どれも美味しいです。特にSorrentinos de Salmón del Fiordo Natalinoというサーモンと海鮮ソースのラビオリが驚くほど美味しかったです。しげ旅さんも行っていたお店です。

Sorrentinos de Salmón del Fiordo Natalino  CLP15,900

・おすすめ宿:Cabaña Bulnes
Airbnbの宿です。ホストの自宅の広い庭にあるタイニーハウスで、犬の親子がいます。内装も良く清潔で、暖房も効きシャワーの水圧と温度もかなり良いです。Paine Circuitを歩いている8日間の間、荷物も預かってくれました。
最低2泊〜約¥9,500

Cabaña Bulnesと犬の親子

個人的な感想

フィールドの中であるにも関わらず設備が整っているという点で異色のトレイルでした。これは憶測ですが、ハイキングの文化が浅い国だからこそ、ゼロベースで作られた結果実現したことなのではないかと思います。日本やアメリカで、トレイルの中のキャンプサイトに温水シャワーを設置しようとはならないでしょうし、ハイカーもそれを期待していないでしょう。
混雑に関しては覚悟はしていましたが、テン場のチェックイン時の行列やTorres del Paineへの往復はやはりストレスを感じました。海外トレイルの多くのテン場は指定サイトであってもテントの密度が低いので、今回他のハイカーと隣合うようにテントを張り、久々にハイシーズンの北アルプスのような感覚になりました。
世界的に有名なトレイルなので、歩けたのは良かったですが、アクティビティ感が強いので、もう一度歩きたいかは微妙です。
それでもやはりPaineの山々は美しく、特にCuernos del Paineはその独特な山容から世界で最も好きな山の一つとなりました。

Dicksonにて

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