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学習意欲デザインモデルの限界 vol.19

今日は勤務大学の第一回卒業式だそうです(コロナやら何やらでずっとできなかったということらしい)。木曜日の仕事がおわって、ワーキンググループのチャットが賑々しいなとは思いつつ「今日はもうしゅうりょー!」ということで放っておいての翌日、一応社会人の嗜みとしてチェックしましたら、「卒業式に浴衣か着物を着て出席できる人!(boss)」「すみませーん、出席できません(coworker1)」「すみませーん、出席できません(coworker2)」以下、同様の返信が続き「残りは先生(私のこと)ですね。犠牲者になれるかしら笑?(boss)」というところでチャットが止まってました。

□※▲×?!◾️&☆???!
まさにコレ。

断れない状況に追い込まれ、卒業式に浴衣という謎の組み合わせを体現することに。


行き詰まってというか、インストラクショナル・デザインの勉強が進まないなと思いつつNOTEを見返してたら、こんなこと書いてた。

熊本大学のインストラクショナルデザイン講座の入門編を終え、応用編を受講するにあたって、もういちどARCSモデルと向き合うべく、ID学のvol.1からvol.13で読み終えた「学習意欲をデザインする」をもう一度読み直して、できれば違った視点で深掘りしていきたい。

NOTE:Kellerのマクロモデル ID学 vol.15

熊大のID応用編の受講を終えてから、もうだいぶ経ってるし。なんなら熊大の科目登録履修生として1科目終えたし。ということで、さっさと進めなければということもあるし、「できれば違った視点で深掘り」といっていることもあり、前から順々に読むのは止めて、実用編ともいえる第8章から自分の現場を踏まえつつ読んでいこうかと思う。1周目ではこのあたりで若干飽きて、適当になったような記憶もあるし。といいながら、今日からじゃないというところが最近のわたしなのであります(卒業式あるし、無気力だし)。

学習意欲デザインモデルの4グループ

J. M. ケラー(著)・鈴木克明(監訳)『学習意欲をデザインするーARCSモデルによるインストラクショナルデザインー』(北大路書房)

第2章で、学習意欲デザインモデルは「人間中心モデル」「環境中心モデル」「相互作用モデル」「オムニバスモデル」という4つのグループに分けられるという話がある。1周目のおかげで今回このあたりが腹落ちした気がする。

□ 人間中心モデル
学習者のパーソナリティ特性を変容させることで動機を高めようとするアプローチ。学習者が自ら進んで持続的に学習しようとする状態にする心理学的調整を試みるモデル。

この時点で、マクレランドの3つの欲求の概念やアルシューラの動機開発とその内面化プロセスモデルが紹介されている。マクレランドの3つの欲求の1つである「達成動機」は「能力を使いたい、課題を達成したい」という欲求から生まれる動機で、アルシューラは学習者にこの「達成動機」を認識させ、それを内面化するステップを提唱した。

「動機」「内面化」というとデシの「外発的動機の内面化」を思い起こすけど(私は)、ここでいう内面化はあくまでも、学習者の中にある動機(となりうるであろう萌芽?)を自身に認識させて掘り起こし、動機として内面化・明確化していくプロセスであり、あくまでも心理的な変容に焦点があたっている。また、ここですでに「自分の力でやりたいタイプ」「競争することでやる気が出るタイプ」「グループで協力し合いたいタイプ」などの学習スタイルも提出されている(のかな)。

また、クールの行動制御理論もここで紹介されていて、これはケラーのマクロモデル(ARCS-V)のV(意思)の基礎となっておりますね。

□ 環境中心モデル
行動中心主義を基盤としたモデル。行動中心主義は、外部からの刺激によって学習者の行動変容を起こす(パブロフの犬)というアプローチで、その結果は観察できる行動によって判断する(行動に変容が起きたかどうか)ということで、なにやらすでにIDを彷彿とさせるのであります。スキナーのプログラム学習やフレッド・ケラーの個別化教授システムなんて、まさにIDって感じ。ここに、人間中心モデル的な心理学的要素が加わってIDとなったのですね、と腹落ちしたということです。

ちなみにDeci&Ryanの自己決定理論はここで紹介されている。たしかに、外発的動機を内発的動機に内面化するプロセスということは、はじめに報酬や将来性などの環境的刺激によって動機を生み出す段階があるわけで、外部(環境)発信という捉え方ができる。

ということで、IDは相互作用モデル(人間中心+環境中心)です。

学習意欲デザインモデルの限界

第3章を読んでいて「なんだここに書いてあるじゃん」ということがあったので引用。

ARCSデザインプロセスの基本的前提は、それが処方的な(prescriptive)プロセスではなく、問題解決プロセスであるということである。すなわち、ほとんどの状況においては、あらかじめ処方された方略の組み合わせや、順序立てた方略を実行することは可能ではないと考える。(中略)それは、学習意欲のデザインへの問題解決的、発見的なアプローチのほうが、処方的かつアルゴリズム的手法よりいも適切であるという考え方である。

ケラー・鈴木(訳), 2010, p.59

第2章でも、学習意欲デザインモデルの限界として、動機の多次元性や変数の多さが挙げられている。ARCSだけでも12要素あるが、その12要素の中にも予期しない突発的な現象なども含め、さまざまな要因があり、さらにそれは相互作用をもつ。汎用的なモデルを作るなんてお手上げ状態である。また、仮にモデルが作れたとしても、それを評価することがまた、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることから、難しい。

そこで、学習意欲デザインの基本的な考え方が以下のように示される。

1. 特定の具体的な事象(問題)を切り取って定義する
2. 問題に応じて、関連する要因の過不足を確認する
3. 要因の過不足解消にどう働きかけるか(方略)を決定する

具体的に解決すべき問題がないと、デザインできないということ。問題の特定が非常に大切で「学生のやる気がないから、やる気を高めたい」といった漠然とした問題意識では、ARCSをはじめ、ID理論を使うのは難しいということがよくわかる。そして、その問題の原因をよく考えること、その考える際にARCSなどの理論枠組みが大活躍し、解決策を考えるヒントとしてその方略集が役に立つわけですね。

NOTEの中で何度も書いたかもしれないけど、IDはとにかく使うことから始まる。そのヒトコトに尽きる気がする。わたしみたいに、理論をみちみち勉強して、途中で飽きてなかなか進まなくて、何か月経っても理論の中にいるようでは、一向にIDが意味をなさないといえる、ほんとに。そんな思考を経て、第8章から読もうと思った次第です。

IDはとにかく使う、論文はとにかく書き始める。

わたし