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ナポリ湾に落ちたキリストの涙


ナポリ湾の青さは、言葉にできないほど美しい。その景色はまるで天国の断片が切り取られ、地上に舞い降りたかのようです。そして、実際にそう伝えられています。かつて悪魔が天国の一部を盗み、それを落とした場所がナポリ湾。そして、その光景を見たキリストは深い悲しみに暮れ、涙を流しました。その涙が大地に染み込み、そこから生まれた葡萄がワインとなり、「ラクリマ・クリスティ(キリストの涙)」と名付けられたのです。

南イタリア・カンパーニア州に根付くこの伝説。そして、この地の恵みをたっぷり受けたブドウで造られるワインは、あらゆる料理と調和する万能な存在として愛されています。かの詩人ゲーテも、このワインを口にした際「キリストはなぜドイツで涙を流してくれなかったのだろう!」と讃えたと伝えられています。

では、この「キリストの涙」が持つ本当の魅力とは何なのか?ワインとしての特性、歴史、そして現代を生きる僕たちにとっての意味を考えてみたいと思います。
#ナポリ湾

ナポリ湾

天国の涙が生み出したワイン


イタリアのワインには、伝説が名前の由来になっているものが数多く存在します。その中でも特に有名なのが、この「ラクリマ・クリスティ」です。

話は、天国を追放された大天使サタンにまで遡ります。サタンは天国の一部を盗み、地上へと逃げる途中、誤ってその土地をナポリに落としてしまいました。その後、ナポリは繁栄を遂げるものの、やがて奢りと堕落が進み、街は荒廃の一途をたどります。その様子を天上から見ていたキリストは、悲しみに暮れ、涙を流しました。その涙が大地に染み込み、葡萄の木が芽吹き、やがて素晴らしいワインが生まれたのです。

この神話のようなエピソードが、このワインを特別なものにしています。飲むたびに、この伝説を思い浮かべると、グラスの中の景色が少し違って見えるかもしれません。
#キリストの涙

ラクリマ・クリスティ・デル・ヴェズーヴィオ

ヴェズーヴィオ火山の恵み


ラクリマ・クリスティが造られるのは、ナポリ南部、ヴェズーヴィオ火山周辺。この火山は歴史的にも有名で、紀元79年に大噴火を起こし、ポンペイの街を一瞬で灰に埋めました。

しかし、火山の大地は、ワインにとっては豊かな恵みをもたらします。火山性土壌にはミネラルが豊富に含まれており、それがワインの味わいに特別なニュアンスを加えます。火山の土で育つブドウは、鮮やかな酸と深いミネラル感を持ち、スッキリとした辛口のワインに仕上がります。

白ワインであれば、瑞々しく、柑橘系の爽やかさと塩味を感じるミネラルが特徴的。赤ワインであれば、果実味の奥にスパイスや土のニュアンスが感じられ、力強くもしなやかな味わいが楽しめます。

このミネラル感こそが、ラクリマ・クリスティ最大の魅力。口に含むと、ナポリの太陽、ヴェズーヴィオの大地、そして天国の涙までもが交じり合ったような味わいが広がります。
#ヴェズーヴィオ火山

ヴェズーヴィオ火山

キリストの涙と、僕たちの未来


僕がこのワインに惹かれるのは、単に味わいの素晴らしさだけではありません。伝説の背景にある「慈愛の精神」にも心を打たれるのです。

人間は時に奢り、高ぶり、過ちを犯します。しかし、キリストはそれを見捨てることなく、新しい命を芽生えさせました。そして今、僕たちはその恩恵を受けています。

現代に目を向ければ、気候変動や環境問題が深刻化しています。異常気象が続き、地球の未来が危ぶまれる中、もしかするとキリストは再び涙を流しているのかもしれません。

だとすれば、僕たちは変わらなければならない時期にきているのではないでしょうか。ライフスタイルを見直し、自然と調和する生き方を意識することで、キリストの涙を無駄にしない未来が築けるのかもしれません。
#ワイン

ラクリマ・クリスティのワイン畑

まとめ


さて、少し話が壮大になりましたが、最終的に言いたいのはこうです。「このワイン、美味しいから飲んでみて!」

ナポリの海を感じながら、ヴェズーヴィオ火山の大地の恵みを楽しむ。そんな時間を過ごせば、日々の喧騒も少し忘れられるかもしれません。

ワインには、ただの飲み物以上の物語があります。ラクリマ・クリスティは、その代表格。ぜひ皆さんも天国の涙を味わってみてはいかがでしょうか?
#ラクリマ・クリスティ  

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菅野 大輔 (ワインテイスター/食クリエーター:かんの だいすけ)
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