【石川旅行記 #1】『予定は未定』は平常運転
前説・競馬見たさに金沢へ
「競馬が見たい」
10月の半ば頃私は唐突にそう考えた。
と言うのも、私は競馬が好きでよく見ているのだが、いつもテレビの画面越しでしかレースを見ておらず、最後に生で競馬を見たのも9月に大井競馬場に行って以来である。
そろそろ競馬が見たいと思った矢先、金沢に公営競馬場があることを知った私は観戦(と少額で馬券も購入)をするため次なる旅の目的地を金沢に定めた。
それに金沢には他にも観光地がたくさんあり、私自身金沢に行ったことがなかったため新しい経験を得たい願望も手伝い、12月の初旬に金沢に向かう計画を立てた。
ちなみに今回は一人旅ではなく、競馬の趣味を共にしている友人と向かうことになる。
Noteで旅行記を書き始めてから初の友人との旅行。
複数人で旅行をする時は計画をしっかり立てて行くのが私の性格であるため、時間と目的地をしっかりと決めていた。
そして、いざ念願の金沢へ…!!!
1日目
「見るのも良いけど乗るのも良いよ!!」
金沢へは前日の夜に大宮に一泊して向かった。
理由は単純で、東京駅で新幹線に乗るより大宮駅から乗る方が少し安くなるからである。
そして、北陸新幹線かがやき501号に乗り込み約2時間。
念願の金沢に到着した。
時刻は午前8時43分。6時41分大宮発の便に乗ってきた。
すんごい朝早い。
まず説明をさせてほしい。
なぜここまで朝早くから金沢に赴いたのか。
それは「乗馬」をするためだった。
私自身は馬について競馬で興味が湧いたため、あまり自分が乗ることを考えたことがなかったのだが、友人は一度体験した乗馬に感動して乗馬ができる所に行く時は絶対に乗ろうと考えていたらしい。
私は今まで馬は子供の頃にポニーしか乗ったことがなかったため、サラブレットにも乗ってみたいと興味が湧き、友人に予定を任せた。
そして、友人が一度来たことがあるという乗馬クラブに体験の予約を申し込んだのだが…
なんと『午前9時からのコース』だった。
金沢行きを計画しようとした時に私は「午前11時くらいの新幹線に乗って、お昼に海鮮料理をゆったり食べながら美術館なりを周って夕方に競馬場に行く」と漠然と考えていた。
それが「午前9時前に金沢に行き、最初に向かう先が乗馬」という道中になった。
これくらい意外性があった方が旅は面白いのかもしれない。
このような事情で向かった場所は、「ヴィテン乗馬クラブ・クレイン金沢」。金沢市の内灘海岸にある乗馬クラブである。
今日はあいにくの雨で、乗馬クラブに着いた午前9時頃には土砂降りになっていたのだが、屋内施設があるクラブだったため、中止にならずに済んだ。
施設に入り、乗馬の際の注意事項に加えて、相手は自分より何倍も体の大きな生き物であるため万が一怪我をした時の保険書類などをしたため、いざ馬と対面することとなった。
私が乗ることになった馬は【ジェネシス】という格好いい名前の牡馬(オス)だった。
ジェネシスは乗馬暦20年の古老で、人間で言えば70歳~75歳くらいのおじいちゃんである。そのためか、今にも眠りそうな顔をしており実際寝ようとしていた。
それを職員の補助がついているとは言え、無理やり起こして背中に乗ろうとするのである。振り落とされてもおかしくない状況だが、さすがベテラン。慌てずにその場で立ち止まってくれていた。
乗馬は、ただ歩いている馬に乗っているだけに見えるがその実人間側のテクニックも大いに求められることがわかった。
例えば、歩いてほしい時にはアブミ(足をかけるところ)でお腹を叩いて合図をする必要があり、歩いている状態から止まる時や早足をしてほしい時も人間の手綱で合図を送る必要がある。
さらに難しいのが、「駈歩(駆け足)」をする時の乗り方だ。
ただ鞍に乗っているだけでは、馬の動きに揺さぶられて最悪足がアブミから離れ落馬する可能性もある。(馬が走っている時に何もしていないと体がバウンドしている状態になり続ける)
そのため、馬の背中が跳ねるタイミングで腰を上げたり下げたりする必要がある。また、その上下運動をするには足を動かさず膝や腿の力だけで上体を動かす必要があるため、想像以上に筋肉を使うのである。
この映像がわかりやすいが、足腰を馬のリズムに合わせて動かし体幹がブレないようにしている。
(座り方の解説は0:50~、実演は2:31~です)
たかが乗馬と思うなかれ。
馬に乗ること一つでも考えることが多々あった。
およそ30分ほどの乗馬体験を終え、ジェネシスを馬房に戻した後、他に繋養されている馬の見学を行った。
ここでは、競馬を知っている人なら盛り上がりそうな血統の馬が多くおり、血統を勉強中の私は職員の方を質問攻めにしてしまった。
しかし、そこは馬を管理する職員さんでほぼ全ての質問に答えてくれた。
(ちなみにマンハッタンカフェ、ゼンノロブロイ、タニノギムレットの子供が多くいた)
およそ1時間ほどで全てのプログラムは終了した。
最後に今回担当してくれた職員の方から体験だけではなくきちんとクラブに入る形で乗馬を続けないかと勧誘された。
ヴィテン乗馬クラブは全国に展開しており、特に首都圏に多く展開していたので家から通うことは可能だったが、全て絶妙に距離があるため考えた末にやめることにした。
ただ乗馬自体はとても面白かったので、たまに旅先で乗ってみたくなったのは事実である。
ちなみに大体の乗馬クラブは入会の際、馬具などを合わせると20万円くらい支払うことになるそうだ。やっぱり乗馬って貴族のスポーツなんだなとしょうもないことを考えてしまった。
メインディッシュ
乗馬体験を終えた私たちは次に行く先を決めあぐねていた。
当初二人で立てた計画では、きっかけが競馬場に行くことであるとは言え、金沢初上陸の身であるため21世紀美術館や兼六園などの有名な観光地も行こうと考えていた。
しかし、乗馬クラブから主要な観光地がある金沢駅周辺は距離があり、且つその間に競馬場がある。
こうなると考えることは一つである。
「金沢駅に向かうより競馬場に行ってしまった方が長く楽しめるのではないか…?」
というわけで、本日の主目的である「金沢競馬場」に歩を進めることとなった。
予定していた時間より4時間ほど早く競馬場に到着している。どれだけ楽しみにしていたのかが伺える。
到着した金沢競馬場は昔ながらの、地元のおっちゃんたちの憩いの場という雰囲気が漂っていた。
公営競馬の中でも、ファミリー層向けに遊具を設置している高知競馬場や施設全体を改装している大井競馬場や船橋競馬場などと違い、建物は昭和からの雑居ビルの雰囲気を残し、全体的に少し古く感じた。
極め付けは出走前の馬の状態を見る「パドック」である。
他の競馬場は出走する馬の体重増減などを電光掲示板で表示しているのだが、金沢競馬場は「はめ込み式の回転パネル」である。
そういった競馬場は今まで見たことがなかったので、とても興奮していた。
そして、いざ!!馬券勝負!!
自分の予想の精度との戦いである。
…の前に、
1レースが始まる12時10分より早く着いていたため、昼食を摂ることにした。
金沢競馬場は競馬場でおそらく唯一「寿司」を食べられる所である。
そのため真っ先に寿司を買い、舌鼓を打った。
やはり金沢クオリティ。海鮮が美味しいのはどのような場所でも共通のようだ。
ちなみにお寿司を売っていたのは競馬場の入場口から一番手前のお店。場所もわかりやすい。これが金沢クオリティ。
さて、肝心の馬券についてお伝えしよう。
結果だけ述べると、マイナス収支である。平常運転。
後で調べてみると、どうやら金沢競馬はあまり荒れる(人気のない馬が好走し配当が高くなる)ことがなく、今日は全く荒れない日だったらしい。
そのため穴党(人気がない馬の馬券を買い高配当を狙う人)である私は今日全く馬券が当たらず、本命党(人気がある馬を買い配当より的中率を高くする人)である友人だけがっぽり稼いでいた。
もうギャンブルとはそういうものだと割り切るしかない。
そのような調子で競馬を楽しみ、8レースほど馬券を買った。時刻は17時20分頃。
本日宿泊する旅館に、予約時だいたい18時頃までには到着すると伝えていたため、まだ2レースほど残っていたが泣く泣く競馬場を後にした。
ちなみに馬券を買っていなかった残り2レースも全く荒れなかったらしい。(一番配当が高い三連単を100円買っても2000円しか戻ってこなかった。当たったら10000円がマストの馬券なのに…)
金沢からの天罰
金沢競馬を満喫した後は旅館に向かうだけなのだが、実はここから試練が待っていた。
金沢競馬を見に来たとなれば、金沢市内に宿泊すれば良いと考えるのが普通である。
ただ私の旅は普通では終わらない。
「金沢なんて一日いれば大抵の観光地まわれそうだよね(笑)」
なんてナメたことを考えていた私は、今回の旅の計画にこんな文言を入れた。
「金沢だけじゃなくて能登方面も行ってみよう!!」
これが地獄の始まりだった。
…そもそも初日に金沢の主要な観光地にも行けていないのに大言壮語にも程がある。
かくして、金沢からさほど離れておらず能登方面にも行きやすい(と勝手に思っている)七尾市の「和倉温泉」に向かった。
季節も秋から冬に変わり、夕方17時30分時点で真っ暗な石川県の道は街灯が少なく、暗闇を手探りで進んでいるような錯覚に陥った。
それがまだ一般道であるため、高速に入れば煌々とした灯りが私を待っている。
そう思ったのも束の間、石川県の自動車専用道である『のと里山海道』に入ってもずっと真っ暗だった。わずかな光源は車のヘッドライトのみ。
寄り道することなく60km近くをただひたすら走り抜けたのだが、道中思っていたことは、
「あれこんな遠いの?」
だった。
今まで長距離の田舎道を幾度となく駆け抜けているが、だいたい街灯に照らされた道を進んでいたため、どれくらい進んだかの距離感がつかみやすかった。
しかし、街灯が少ないと距離感がつかみにくく、時間感覚も狂っていく。
到着してみると、17時30分頃に出発して18時40分頃に到着したのだが体感2時間以上経っている気がした。
それくらい夜道の運転は気を使わなければならず、怖いのだということを思い出した。
豪華夕食
初めに記した通り、今回は一人旅ではないため泊まる宿もグレードアップを試みた。
いつもなら単身者用のビジネスホテルにお安く泊まるのだが、今回は思い切って『旅館』に泊まることにした。
とは言っても、一人15,000円くらいの宿泊費である。
agoda様様のお得価格。
さらにいつも素泊まりで泊まるのだが、今回は1泊2日にも関わらず夕食・朝食付きである。
20時くらいに到着することを想定していたため、近くのお食事処は全て閉まっていると考えての判断だった。
宿に到着し、チェックインを済ませた際注意書きをもらったのだが、そこに驚きの文言が書かれていた。
「夕食は18時と19時、朝食は7時と8時の2回に分けて提供しております」
私たちは18時40分に到着したので当然19時からになるのだが、興味本位でもっと遅くに到着していた場合を聞いてみると、
「提供はいたしますが品数が少なくなります」
と言われてしまった。
つくづく毎度運に任せすぎだな…と辟易した。
そして肝心の夕食だが、種類が豊富なバイキング形式だった。
石川県特産の海鮮や石川県原産のブランド牛を使った料理など豪勢を極めていた。
正直ここ半年くらい食べるどころか見てすらいないような見た目の良さと高級感である。
本当はたらふく石川の食を堪能しようと思っていたが、実は夕食をもっと遅いと思い込んでいたため、競馬場を出る間際に量の多いフライドポテトを食べてしまっていた。
あまりにも痛恨のミスすぎる。
明日の朝食はたらふく食べるぞと息巻き、ワンプレートで夕食を終えた。
今日は予定通り行くことの方が少なく、次の予定を考えて行動することも少なかったのだが、
「もしかして私はタイムマネジメントが絶望的に下手なのではないか?」
とようやく気付いたのである。
それでも、今日がダメなら明日は多分良い日になる!!と気合を入れて就寝した。
特に明日は広範囲を巡るため、帰る新幹線の時間を気にしながらの観光となる。がんばろう。
次回…「これが私の旅行です」…お楽しみに…
二日目↓