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タップダンスの静と動に、酔え! 水谷豊の「TAP the last show」
とある理由から大きな怪我を患い、一線を退いたタップダンサー・渡新二郎(演:水谷豊)。10数年を経て、渡は足を引きずり、酒におぼれる毎日を送っていた。
そんな渡が旧知の劇場支配人・毛利(演:岸部一徳)から「最後のタップダンス・ショーを演出してほしい」という相談を持ちかけられる。
ラスト・ショーに向けた、渡の戦いが、始まった…。
東映はおろか、最近の邦画にも類を見ない一本。昭和の時代に舞い戻ったような「モダン」な映画だ。
探偵事務所の様な水谷豊の靴工房、ダンサーたちが集う、ネオン輝くアメリカンディナーに、その美学が凝縮されている。
「踊りとはつまりアクションシーン」と言う。「セッション」さながらのダンサーたちへの厳しい指導に、前半早くもその片鱗が現れる。練習の成果を見せるラスト24分、春夏秋冬、場所を変え手を変え繰り広げられるダンスシーンにそれが結実している。
「登場人物に降りかかる不幸で泣かせようとする」のがありありと見えて胃もたれする中盤のドラマパートでダレること、後半のカット割りとカメラワークのために、ダンスシーンの全体像が見えにくいのが、不満ではある。
それも、タップダンスの激しさの前には、些細なことに思えてしまう。
オープニングは必見。タップダンスのカットと靴作りのシーンのモンタージュだけでも、一見の価値はある。
「ジンジャーとロジャース」などというまんますぎる(しかしミュージカル映画の深いところを知らないとまるで分らない)小ネタを仕込んだ男女のダンスコンビ、ほか、わき役もよい。
監督 水谷豊
脚本 両沢和幸
製作 亀山慶二
以下、小ネタ。
冒頭、アメリカのドライブイン風のレストランで、毛利が渡への手土産のオーダーをする。
この時、ドラマ「傷だらけの天使」のOPイントロが店内BGMとして微かに流れている。「相棒」のイメージばかりが強い水谷豊の原点をのぞくようで、興味深い。
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