「猫が好きだ。そしてネコが嫌いな人間が大嫌いだ。」_"North Sea Hijack"(1981)
以上の逸話、本当だったかはともかくとして、みごとに三代目ボンドを演じて見せたロジャー・ムーア。
フラレてもフラレてもめげずに、粘りで女をゲットする男。取りあえず一発試せるかどうか?まずは単刀直入に切り込む男。断られても怒らない男。そして何より、女のピンチには必ずそばにいるダンディな男(期待通り向こうから飛び込んできてくれる男…)近づいてくる女性は敵だろうが味方だろうが、まずは信じる、優しさに溢れた男…。
女たらしでユーモラスなスパイ=ジェームズ・ボンドという前時代のイメージは、コネリーに続いて、この人が定着させたことは、間違いない。
そんなムーアが、女にわき目を振らないどころか、女っけ一つすらない油田基地を舞台に、女性よりも猫を愛してスコッチウイスキーをラッパ飲みする髭もじゃの対テロリスト専門家を演じた1981年の映画『North Sea Hijack』(北海ハイジャック)より。
ある日、北海油田にある海上施設がテロリストに占拠される。彼らは人質を取り、石油プラットフォームに爆弾を仕掛け、政府に対して膨大な金額の身代金を要求。この状況に対処するため、イギリス政府は冷静で非情な対テロ専門家であるルーファス・フォークス(演:ロジャー・ムーア)にオファー。フォークスは独自の方法で仕事をこなし、独自の考え方と奇抜な手法でテロリストと対峙するのだが…。
石油プラットフォームを舞台に「007」顔負けの巧妙かつスリリングな戦闘を繰り広げる…というのは、当時52歳のムーアの身体能力と予算に期待するだけ無駄。アンドリュー・V・マクラグレン監督の手により、ワンカット、ワンカットにこだわりがなく、徹底的な早撮りが行われていることが、テレビムービーと見間違えんばかりの安っぽい画面からして、お分かりいただけるだろう。
しぜん、われわれの視線は「レディが傍にいない潜入捜査をロジャー・ムーア」がどう演じるか?に注がれる。一言で言えばこうだ:
カシミアのセーターが似合う男。顔の皺に口髭が良く似合う男。きっちり仕事をこなす男。わざわざ長台詞で女嫌いの理由をいちいち説明する男。そして、
という台詞の似合う、仕事のできて親近感がわく男。
同じく英国紳士:ジェームズ・メイソンやアンソニー・パーキンスと共演しているのも、見どころの一つだ。
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