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篠田正浩の冷血ハードボイルド「乾いた花」。_不毛な恋に賭け、ボロボロになっていく。

何か良いことはないか。 心の底で渇望し、何かにひたすらのめり込む。
人によってターゲットは異なる。 石原慎太郎原作を生きる主役二人にとって、それは博打だった。
だから詰まるところ本作はヤクザ映画なのだが、誰も刺青を見せない、ひたすら冷血でシャープな作品だ。

この映画の主役は、
色気や、毒といおうか、どこか身を持ち崩すような危うさ持った中年:池部良
加賀まりこの花札を玩ぶ手つき、声と札束だけが静かに飛び交う賭場。
それだけ。非常にシンプルだ。

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物語は池部良のぼやきから始まる。 群衆の主体性のなさへの軽蔑でいっぱい。
自分だけは世俗に汚れまい、と時代を拗ねて見ている、屈原のような男だ。
しかし、彼の高慢な自意識なんてのは、バクチと「彼がのめりこむ」ファム・ファタールの前では、クソの役にも立たないのである。 皮肉で、痛快だ。

黒い霊柩車が彼の横を通り過ぎていく:死の表象に、すべてが暗示されている。
ストーリー
花札賭博に憑かれたヤクザと、賭場で出逢った不思議な少女との愛と悲劇を通して“真実の愛”が浮き彫りになる!やくざを殺して、三年ぶりに出所した村木(池部良)の足は賭場に向かった。賭けの緊張感とその後の虚脱感だけが村木に生を実感させた。その賭場で少女(加賀まりこ)と村木は出逢う。茣蓙を見つめる熱っぽい眼差しと、勝負への放胆さを持つ少女に村木は羨望と嫉妬を感じた。少女にせがまれて大規模な賭場に案内した村木だったがその部屋の隅には殺しと麻薬にだけ生きている中国帰りの葉(藤木孝)がうずくまっていた……。
スタッフ
原作:石原慎太郎
脚本:馬場当/篠田正浩
監督:篠田正浩
撮影:小杉正雄
美術:戸田重昌
音楽:武満徹/高橋悠治
録音:西崎英雄
照明:青松明
編集:杉原よ志
キャスト
池部良/加賀まりこ/藤木孝/杉浦直樹/原知佐子/佐々木功/竹脇無我/中原功二/三木真一郎/東野英治郎/宮口精二

松竹DVD倶楽部 公式サイトから引用

刑期を終えて出所したやくざ・村木は偶然入った賭場で、正体不明の若い少女に出会う。彼女の刹那的な張り方に興味を覚えた池部は、彼女をアパートに誘って花札のサシの勝負をする。このカケグルイの前に、あっさりと、負ける。

「もっと掛け金の高い賭場に連れて行ってほしい」という加賀の願いを聞き入れて、池部は弟分が仕切っている連れ込み宿へ加賀を連れて行く。
「賭ける。」「賭ける。」とひたすら花札を出す音だけが響く。
結果は大勝利。帰路、村木を車で送った少女は「楽しかった」と無邪気に笑うのだった。世の中をつまんなく思っていた村木も、思わず、ぷっと笑い出す。

そこにガサ入れが起こる。村木は少女を抱いて逃げ、情事の最中に見せかけて警察の目をごまかす。ヤレヤレと安堵する村木に対し、少女は「可笑しくてたまらない」とコロコロと笑う。村木はいざ危機が起こってみるとたじろぐタイプだが、彼女にとっては身に迫る危険も所詮「賭け」の一種にすぎないのだ。

より大きな賭けがしたいと望む少女を連れ、よその組が仕切る賭場で勝負に挑む二人。そこに香港人のハーフで薬物中毒の殺し屋:葉(藤木孝)が現れる。
モラリスト気取りの村木にとっては、三悪兼ね備えたこの男、嫌悪すべき存在。
しかしあろうことか・・・少女はその男へと近づいていき、麻薬にも手を出し、村木のもとから離れていく。 
もっと危険な人が好き! 中庸な村木は、捨てられたのだ。


そうこう言っているうちに、村木の所属する組と対立する組の抗争が激化する。
平時の終わり、戦時の始まり。内面が荒廃していく村木。 唯一の心の癒しだった花:少女は、もはや彼のものではない。それどころか、葉によってヤク漬けにされ、ボロボロにされている。父親の様に叱ってみるも、彼女は聞く耳持たず。

彼は現世に生きる望みを失い、自棄になる。しかし不思議と冷静な気持ちなのだ。だから彼なりに冷静な判断を下して、少女に、葉に、いや世界の理不尽に対し、実力を行使してみせる。
すなわち、村木は少女を呼び出し「凄いものを見せてやる」と言って、彼女の目の前で人を刺し殺すのだ。

村木が刑務所に入って2年、少女が薬物中毒で死んだことを知らされる。こつこつと真っ暗な廊下を歩く、孤独な村木の背中を残して、映画は終わる。

 
やっと見つけた優しい花、手にとって握り潰せばバラバラになってしまう花。
それを大切に懐に入れていたのに、奪われて、簡単に壊されてしまった中年男子の惨めさ、哀しさ。
醜悪でも、邪悪でもない、「不毛」という言葉が似合う、邦画の秀作だ。

※本記事の画像はCriterion公式サイトから引用しました

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ドント・ウォーリー
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