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どこを見てるの?ジョニー・デップ。ポランスキー監督「ナインスゲート」。

いまや絶賛お騒がせ男優と化したジョニー・デップが文句なくカッコよかった、日本人の憧れだったころの映画、1999年に公開されたロマン・ポランスキー監督『The Ninth Gate』(邦題: ナインス・ゲート)より。

古書収集家であるディーン・コルソ(演: ジョニー・デップ)は、、特に悪魔主義に焦点を当てた古書に興味を持っている。ある富豪から依頼を受け、彼はアリストデス・デ・スパノスの著書「The Nine Gates of the Kingdom of Shadows」の真贋を調査することになる。この書物には悪魔の力を解き放つ秘密の儀式が描かれており、三冊の本が揃うことでその儀式が完了すると言われている。

ディーンは欧州を旅しながら、この古書の真贋を確かめる冒険に巻き込まれる。調査の中で、奇怪で不気味な出来事が、次第に彼に襲いかかる。何者かがディーンの調査を妨害し、彼が追い求める真実が危険なものであることが明らかになっていく…。
アート・ブックと悪魔儀式を絡めたサスペンス・スリラー作品、これを「ローズマリーの赤ちゃん」のポランスキー監督が撮るとなれば傑作間違いなし!…のはずが、ふやけた出来栄えに。

結局は、燃えさかる石の砦を背景に、エマニュエル・セニエ演じる悪魔と会合する、ラスト一歩手前の絶頂に尽きる本作。
メガネと口髭で地味な探偵に扮しようとも、どこか人間離れした色気を隠せないジョニー・デップだったら、悪魔とヤッちゃおうが「さもありなん」の一言。 その肉欲な悪魔に犯される時、ジョニー・デップはマジな目付きになっている。
しかし焦点を合わせているのは女ではない、どこか遠い一点を見つめているかのようだ。
エマニュエル・セリエも心なしか、「私を見てよ!」と半ばキレつつデップーに激しく迫っているようだ。

悪魔書の調査の過程でデップは、時折、どこか遠いところを見つめるときがあった。 机とにらめっこの姿勢から、ふと顔を上げたとき。 煙草を燻らる時。 食後のナプキンをとった時。 流し目というのだろうか、妙に色っぽい目つきをしている。
誰も答えを教えてくれないままに粛々と事件が進行するのを、どうすることもできず、かといってもうまく呑み込むこともできない、戸惑った表情を浮かべている。 一見温和な顔立ちに、孤独感が潜んでいる。 あたかも、親に置いてかれ途方にくれる子どものように。
彼はどこを見つめているのか。少なくとも目の前に次から次と現れる、劇的な事実ではない。ここにポランスキーならではのなぞかけがあったりして…。

手に汗握らない段取りみたいな殺陣に基本お使いゲームな謎解き。話の運び方はお世辞にも面白いとは言えない。
ただ、ジョニー・デップの魅力を、ポランスキー監督は、ティム・バートンとはまた違った自分なりのやり方で引き出した。そこだけは、評価したい。


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ドント・ウォーリー
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