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今はなきミニシアターと、大林宣彦監督初体験の記憶を辿って。「長岡花火物語」。
ちょうど8年前の2012年夏、今はなき富山のミニシアター「フォルツァ総曲輪」で、大林宣彦を初体験した。わりと衝撃的な出会いだった。
普段ろくに映画を観ない(ジブリ作品すらよく知らない、この再上映に機会に慌ててスクリーンに駆け込む)父に誘われるがままだった。
いま(2020年)60近くの父は、80年代角川映画の洗礼を間違いなく受けた世代だった。「時をかける少女」の原田知世にときめいたひとり。監督の名前を見て、懐かしくなって、一緒に観に行こうと声をかけたのだろう。
暗がりの中、私も、40年前の父と同じように、ときめいた。
同じ年の冬、更に当地のことを知りたくなって、長岡に途中下車したのも、今となっては懐かしく思い出す。
「この空の花 長岡花火物語」。 これは、戦争の記憶を辿る映画だ。
2004年の新潟県中越地震から復興をとげ、11年の東日本大震災発生時には被災者をいち早く受け入れた新潟・長岡市を舞台に、ひとりの女性新聞記者がさまざまな人と出会い、不思議な体験を重ねていく姿を大林宣彦監督が描く。11年夏、熊本・天草の地方紙記者の玲子が新潟・長岡を訪れる。目的は、中越地震を乗り越え復興し、東日本大震災の被災者をいち早く受け入れた同地を取材すること。そして、長年音信不通だった元恋人からの「長岡の花火を見てほしい」という便りに心ひかれたためだった。
【スタッフ】
監督 大林宣彦
脚本 長谷川孝治、大林宣彦
撮影 加藤雄大、三本木久城、星貴
美術 竹内公一
照明 山川英明
編集 大林宣彦、三本木久城
衣装 岩崎文男
主題曲 久石譲
【キャスト】
松雪泰子、高嶋政宏、原田夏希、猪股南、寺島咲、筧利夫、森田直幸、池内万作、笹野高史、石川浩司、犬塚弘、油井昌由樹、片岡鶴太郎、藤村志保、尾美としのり、草刈正雄、柄本明、富司純子
映画.com 作品情報より引用
ひとことで言えば、奇を衒っても話が壊れない、感じるための映画だ。
セーラー服の少女が一輪車にまたがり、縦列組んで走ってくる「訳のわからなさ」に、まずは驚いていると。驚く間も無く、さらに驚くべき事象が続く。過去の人間が現在に乱入してくる。
突如川べりで舞台劇が始まる。 打ち上げ花火の波に合わせて、ぺらっぺらの焼夷弾が現世に寄せてくる。 果ては、製作時取材された実在の人物が、劇中に登場し、寸分なく当時の受け答えを再現してみせる。
セミドキュメンタリーではあるが、リアリズムとは正反対を向いている。
これはサーカス、見世物だ。 戦争と花火、過去と現在が、垣根を超えて入り乱れる「祭り」の熱を長岡に塗りたくっている。
フィクションとドキュメントとをごちゃごちゃにする、下手すると下手な映画に見えそうな演出も、大林宣彦の手にかかると堂々たる映画に見える。実に、まぶしいアイドル映画だ。
※本記事のトップ画像はWikipedia Commonsから引用しました
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