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自主制作時代劇「蠢動」。10年早かったし、生真面目すぎた。

インディーズ時代劇映画「侍タイムスリッパ―」日本アカデミー賞7部門制覇の快挙。

先立つこと12年前、2001~11年までは家業である建設資材メーカー「ミカミ工業株式会社」(大阪府東大阪市)社長を務めていた三上康雄が、再び映画製作に復帰し、82年に製作した16mm作品「蠢動」をセルフリメイクした、2013年の「本格」時代劇「蠢動」の思い出を。
キャストはさりげなく豪華。目黒祐樹がミソ。

平岳大 原田大八郎
若林豪 荒木源義
目黒祐樹 松宮十三
中原丈雄 舟瀬太悟
さとう珠緒 香川由紀

もう一度、時代劇を自分の手で撮りたい、という自己満足だけで作られたのではなかった。ゼロ年代以降の時代劇がエンタメや情感へと走りがちな中、先人たちが描いてきた「異議申し立て」の精神を、本作では色濃く刻み込んでいる。つまりあらすじは、遊び心もなく、以下の通り必死の内容。

享保の大飢饉から3年がたち、世の中が落ち着きを取り戻しつつあった享保20年。山陰の因幡藩に幕府から遣わされた剣術指南役の松宮十三がやってくる。しかし、松宮の動きに不審な点があるとの報告を受けた城代家老の荒木源義は、用人の舟瀬太悟に松宮の動向を探るよう命じる。

映画.comから引用

ドラマパートは「何の冗談だ!?」と思うほど低予算。こじんまりとしたセット・動かないカメラと、徹底的に削れるところは切り詰める、かなしさがある。ここは、役者の熱演にぎりぎり救われている。
一方、最後の雪中の決闘シーンに、監督の悲壮に満ちた美意識が溢れている。ここぞとばかりに振るうカメラワークで、「剣戟」を堪能させる。これに満足しないはずがない。延々とドラマパートで待っていた甲斐があるものだ。

つまりは、正攻法過ぎて、10年前ならともかく、いまだと客を呼べないであろう、という内容。
三上監督は同じような手触りで2019年「武蔵」を発表。こちらもキマジメすぎる内容だ。題材が題材だけにどうしても稲垣浩に内田吐夢、加藤泰の諸作と比較してしまうし。

ということで、本作にまつわる思い出はどちらかというと、今はもうないミニシアター、アジア圏の映画をラインナップの軸としていた「シネマート六本木」が中心となる。本作が、そこで初めて鑑賞した、そして最後に鑑賞した映画となった。

話は脱線したが、結論。「侍タイムスリッパ―」ほどはじけてはいないので、いまとなっては身構えることなく「時代劇専門チャンネル」で時折放送される2時間ドラマの感覚で観るのが良いだろう。


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ドント・ウォーリー
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