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「ここNASAでは肌の色など関係ない!」_『Hidden Figures』(2016)

作品の中身よりも邦題のせいで日本では味噌がついてしまった感のある、マーゴット・リー・シェタリーのノンフィクション本を原作とした2016年の映画「ドリーム」(原題:『Hidden Figures』)より。NASAで働いていたアフリカ系アメリカ人女性の数学者たちが、アメリカの宇宙開発に大きく貢献した実話を描いている。

あらすじは以下の通り:

1960年代、アメリカではまだ人種差別が根強く残る中、冷戦の一環としてソ連との宇宙開発競争が激化していた。NASAのラングレー研究所には、「計算手」として雇われた女性たちのグループがあり、その中には特に才能を持った3人のアフリカ系アメリカ人女性がいた。

1. **キャサリン・ジョンソン**
数学の天才で、軌道計算を担当。人類初の地球周回飛行を成功させるために、宇宙船の帰還地点の計算に重要な役割を果たす。

2. **ドロシー・ヴォーン**
計算グループのリーダーであり、IBMのコンピューター導入後も生き残るためにプログラミングを独学し、チームを新時代に導く。

3. **メアリー・ジャクソン**
航空宇宙エンジニアを目指し、白人専用の学校に通うために裁判を通じて受け入れを勝ち取る。

映画は、彼女たちが人種差別や性差別という壁に立ち向かいながらも、卓越した知識と努力でNASAの宇宙開発に欠かせない存在となる姿を描いていまる。特にキャサリンの計算は、1962年のジョン・グレンの地球周回飛行「マーキュリー計画」の成功に直接寄与した。

(ライトスタッフ的に呼べば)「人間を自由世界で最初に宇宙に飛ばす」偉業を支えた裏方たちの、偉大な物語。三人の女性:キャサリン、ドロシー、メアリーは、強い意志と、数値や理で通す巧みな弁舌で、自分そして偉業の前に立ちはだかる障害を、次々とタフに乗り越えていく。その成り上がっていく様が、見ていて実に心地よい。

有人宇宙船計画の表舞台に立っていた男たちも、また、強い人間として描かれている。計画の最高責任者:アル・ハリソン(演:ケビン・コスナー)は数字にだけでなくリーダーシップについても強い力を振るう。

Here at NASA we all pee the same color.

との強い信念を胸に、「差別」の象徴だった、人種分けするトイレの標札をハンマーで打ち砕く姿は圧巻の一言。
フレンドシップ7号のパイロット:ジョン・グレン(演:グレン・パウエル)は、選ばれたからといって奢ることのない、「大衆に愛される好漢」として登場する。(その雄姿の裏に隠された葛藤は、「ライトスタッフ」を参考にされたし。)

脚色が目につきすぎる難はある。(なかでも目につくのが、IBMによる着水地点の計算が怪しいと分かり、フレンドシップ7号発射当日になってキャサリンがその検算を依頼される終盤のヤマだ。)
それを差し引いしても、「誰もが「人類は重力から抜け出せない」「差別はあってあたりまえ」常識を打破しようと強く燃えていた。」60年代初頭の熱気が伝わってくる。そこに惚れる。


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ドント・ウォーリー
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