マガジンのカバー画像

花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

258
わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
運営しているクリエイター

2025年1月の記事一覧

自主制作時代劇「蠢動」。10年早かったし、生真面目すぎた。

インディーズ時代劇映画「侍タイムスリッパ―」日本アカデミー賞7部門制覇の快挙。 先立つこと12年前、2001~11年までは家業である建設資材メーカー「ミカミ工業株式会社」(大阪府東大阪市)社長を務めていた三上康雄が、再び映画製作に復帰し、82年に製作した16mm作品「蠢動」をセルフリメイクした、2013年の「本格」時代劇「蠢動」の思い出を。 キャストはさりげなく豪華。目黒祐樹がミソ。 もう一度、時代劇を自分の手で撮りたい、という自己満足だけで作られたのではなかった。ゼロ年

「君たちはどう生きるか」ハードモード。原作を読んで映画をみよう。「路傍の石」。

2023年に話題となって通り過ぎた「君たちがどう生きるか」は、単に宮崎駿が言及から読まれたのではなく、何か人生的な、何か社会の指針的な、何か誠実な生きてゆく人間の姿が、文章の平明さのなかに表現されているからこそ、多くの読者に読まれたところがあるだろう。 今回紹介するのは、その著者:吉野源三郎ではなく、当初この本を執筆する予定であった吉野源三郎の盟友、今は忘れられた作家:山本有三の作品「路傍の石」だ。 山本有三の作風は「君たちはどう生きるか」と同じ。なすべきことを只管にやって

この世に自分が生きた痕跡を残そうとする、哀しい情熱。ショートフィルム「あの残像を求めて」。

日本映画は毎年数多く撮られているが、その多くが単館はおろか、映画館のスクリーンにかかることもなく、市民ホールや公民館の小さい小屋で一度きりの上映が行われて、そのまま闇へと消えていく。そして今や、配信だの映画離れだの予算主xゆく小田のに押されて、そのホール自体も、たやすく、壊されてしまう時代。 隈元博樹が2014年に監督を務めた「あの残像を求めて」もその一つ。あまりにも自己言及的な映画。不可解な経緯のまま今や取り壊されてしまった川崎市民ミュージアムの記憶と共に、その記録を残し