見出し画像

宇野常寛より、新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます、宇野常寛です。
今年もよろしくお願いします。

昨2023年は単著4冊、編著一冊と結果的にものすごく働いた1年でした。もっと早く出る予定のものが遅れに遅れてしまったり、急にいただだいた企画などが重なった結果なのだけど、自分でも予想外の忙しさだったのですが、ここ数年でいちばん手応えのあった1年だったと思います。

どの仕事も、それぞれの理由で気にいっているのですが、特にはじめて中高生向けの本を書いた『ひとりあそびの教科書』と、はじめての小説の本になる『チーム・オルタナティブの冒険』は、以前から挑戦したかったことをやっと試せて、そしてどちらも予想外に手応えのあった仕事ーー小説を読んでくれた人に分かる表現にすると自分を「変身」させてくれる「想像力の必要な仕事」でした。もし、まだ読んでいない人がいたら、どちらもこれまでの僕の書いたものとはかなり違ったものに仕上がっていて、そして僕の書いたものには珍しくあまり文句を言う人のいない本です。騙されたと思って、手にとって見てください。

今年の予定ですが、まず今月から『ラーメンと瞑想』と題した「食」をテーマにしたエッセイの連載をはじめます。エッセイの中に批評や小説のエッセンスを混ぜ込んだような、楽しい連載になる予定です。とりあえず初回のサブタイトルは『ラーメン富士丸と人間の条件(前編)』です。地球環境に優しいエシカルな食とか、食の育む地域コミュニティの「絆」とか、そういったことではなく、ただただ「食べる」ことそのものについて語るエッセイです。

あと、昨年末まで『群像』で連載していた『庭の話』が、順調に行けば5月か6月に本になります(年始はこの仕事でてんてこまいです)。これは僕なりの都市論、公共空間論なのですが、『遅いインターネット』『砂漠と異人たち』と続いてきた「場所」についての三部作の完結編……というかひとまずのまとめになると思います。昨年春から僕の立ち上げた研究会「庭プロジェクト」とも連動している、なかなかユニークな一冊になると思います。連載版から構成をガラッと変えるつもりなので、連載を読んでいた人もぜひ手にとってみてください。

あと一冊くらい、年内にいだいだいている企画のどれかを仕上げて、あとは『庭の話』の次の主著になるようなものの準備をはじめようと思っています。『母性のディストピア』のアップデート版のようなアニメ論も書きたいし、『庭の話』で考えたことをもう少し発展したものも書いてみたいのだけれど、これらはもう少し先の話になると思います。

PLANETSについては、昨年秋から立ち上げたPLANETSCLUBの「PLANETSSCHOOL教養講座」にいちばん力を入れています。PLANETSCLUBは月3回のオンライン講座(僕の講座1回と、上記の教養講座2回)を中心とした私塾という形式に落ち着いてきたのだけど、僕が自分で学びたいことをメンバーと一緒に学び、精読したい本を読む、という時間が個人的にもとても充実しています。まだまだ試行錯誤の段階ですが、毎回グループディスカッションもすごく盛り上がるので、ただ知識を得るだけではなくてしっかり考えたことを言葉にするスキルがほしいな、という人にはきっと気に入ってもらえると思います。(3月以降のラインナップも、いま企画中です。)

出版社としてのPLANETSは、去年に出版するはずだったものが遅れに遅れて、たぶん上半期にどっと出ます。白井智子『脱学校論』、三宅香帆『母と娘の物語(仮)』の2冊は、出ます。そして待望の落合陽一『マタギドライブ』も、上半期に滑り込めそうです。後半は、福嶋亮大『世界文学のアーキテクチャ』がもしかしたら間に合うかもしれないです。これは、PLANETSはこの本を出すために生まれたのではないか……と感じるくらいの野心作です。お楽しみに。

そして、『モノノメ #3』がようやく今年は動き出せそうです。前号までの反省をしっかり盛り込んで、ビジネスモデルから流通経路、内容まで全面的にリニューアルする……予定です。これについて書き出すと、それだけで軽く1万字は超えてしまうので、もう少しめどが付いたらお知らせします。

最後に、1月末辺りから僕というかPLANETSと他社とのコラボレーションのようなかたちで、大きめの企画がはじまります。11月、12月はこれで忙殺されてほとんど記憶がない感じだったのですが……かなりユニークなものになりそうなので、発表をお待ち下さい。

そして、今年は(今年こそ)YouTubeとかPodcastとか、僕やPLANETSの活動に気軽に触れてもらえる発信を頑張ろうと思っています。このnoteも10月から「前の日に考えたことを翌日にまとめる」形式にしたところ、購読者が爆像して、ちょっと驚いています。これは、なんというか知的なエクササイズとして個人的によく、24年もしっかり続けていけたらと思っています。

それでは、長くなりましたが今年もよろしくお願いします。

僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。